パラメキア帝国が世界制覇をとげようとするなか、プレイヤーは滅ぼされた国の人々が集う反乱軍に身を投じ、それにあらがう……。
1988年にファミリーコンピューター向けに発売された『ファイナルファンタジーII(以下、FF2)』が2021年、『ファイナルファンタジー II ピクセルリマスター(以下、FF2PR)』と名前を変え、装いも新たに登場した。
“ピクセルリマスター”とは、究極の2Dリマスターを掲げるスクウェア・エニックスのシリーズ作。
原作に近い内容で、バランス、見た目、音楽共に現代に通じる形で再生するプロジェクトだ。
しかし、私にとって『FF2』は当時としてもゲームバランスが粗く、同時にその粗さが味であり魅力というクセのある1作。
見た目はともかく、粗い面白さも含めてゲーム内容を現代風になおせるものだろうか?
今回は『FF2PR』を、『FF2』のファミコン版をリアルタイムで遊んだ私の目線で紹介していこうと思う。
今回のリマスターについては、プレイ前から大きな不安があった。
スマホはタッチパネルで移動するから、コントローラーと違って上下左右4方向に厳密に動かすのは難しく、上下左右にしか動けない仕組みだとストレスがたまる。
実際、過去のスマホ版『FF2』移植はゲーム機版そのままで操作性に難があったし、大幅に作り直すリメイクではなく、大筋同じにすることが多いリマスターであれば同様に操作性が悪いものと考えられたからだ。
が、結論から言えば心配は杞憂だった。
『FF2PR』は斜め移動を取り入れており、バーチャルスティックで指をスライドさせるとその方向に動いてくれる。
指の動きに合わせて移動する本作の移動は快適だった。
▲バーチャルスティックで斜め移動できる!
さらに、行きたい場所を指定して動く移動先指定方式にも対応しており、入り組んだ場所でもタッチ一発で目的地までいくこともできる。
バーチャルスティックと移動先指定方式はボタン一つで気軽に切り替えでき、場面に応じて好きに使い分けられる。
▲タッチ移動。長押しで移動ラインも見える。右下のボタンを押すとバーチャルスティック・タッチ移動は切り替えられる
バトル操作も快適だ。
敵を連続タッチすれば通常攻撃を行い、演出を高速化して前のターンの行動を繰り返すオートバトルも可能(コンフィングで演出倍速ボタンのようにも使用できる)。
通常セーブに加えてオートセーブも完備で、電話がかかってきたり、いきなりアプリが落ちても問題なく再開可能。
最初からスマホ専用で作られていたかのような快適さ。
コントローラーにも対応していればもっと良かったが、Steam版やゲーム機版を選ばずとも、同等に楽しめるはずだ。
▲ただし、オートセーブはロード画面を上にスクロールしていくと出てくるので、通常気づかない。私はアプリが落ちたとき間違って以前セーブしたデータからプレイし直してしまった……。
そのうえで、肝心の内容についても私はかなり満足できた。
ただ、『FF2』の楽しみ方は幅が広いから、私がかつて感じた『FF2』の面白さの説明から入りたい。
スマホはタッチパネルで移動するから、コントローラーと違って上下左右4方向に厳密に動かすのは難しく、上下左右にしか動けない仕組みだとストレスがたまる。
実際、過去のスマホ版『FF2』移植はゲーム機版そのままで操作性に難があったし、大幅に作り直すリメイクではなく、大筋同じにすることが多いリマスターであれば同様に操作性が悪いものと考えられたからだ。
が、結論から言えば心配は杞憂だった。
『FF2PR』は斜め移動を取り入れており、バーチャルスティックで指をスライドさせるとその方向に動いてくれる。
指の動きに合わせて移動する本作の移動は快適だった。
▲バーチャルスティックで斜め移動できる!
さらに、行きたい場所を指定して動く移動先指定方式にも対応しており、入り組んだ場所でもタッチ一発で目的地までいくこともできる。
バーチャルスティックと移動先指定方式はボタン一つで気軽に切り替えでき、場面に応じて好きに使い分けられる。
▲タッチ移動。長押しで移動ラインも見える。右下のボタンを押すとバーチャルスティック・タッチ移動は切り替えられる
バトル操作も快適だ。
敵を連続タッチすれば通常攻撃を行い、演出を高速化して前のターンの行動を繰り返すオートバトルも可能(コンフィングで演出倍速ボタンのようにも使用できる)。
通常セーブに加えてオートセーブも完備で、電話がかかってきたり、いきなりアプリが落ちても問題なく再開可能。
最初からスマホ専用で作られていたかのような快適さ。
コントローラーにも対応していればもっと良かったが、Steam版やゲーム機版を選ばずとも、同等に楽しめるはずだ。
▲ただし、オートセーブはロード画面を上にスクロールしていくと出てくるので、通常気づかない。私はアプリが落ちたとき間違って以前セーブしたデータからプレイし直してしまった……。
そのうえで、肝心の内容についても私はかなり満足できた。
ただ、『FF2』の楽しみ方は幅が広いから、私がかつて感じた『FF2』の面白さの説明から入りたい。
私にとって『FF2』は、ストーリーに力を入れていて、野心的なシステムを搭載し、悪意を感じる破滅的なゲームバランスを持ち、さらにゲームの穴をついてプレイヤーが工夫を楽しめる独特なゲームだった。
コンピューターゲーム黎明期にありがちな、“挑戦しすぎてしまったRPG”と言い換えてもいい。
まず、ストーリーに関しては各キャラクターにはきっちり背景設定がなされており、会話を通じてそれが透けて見えることがとても良かった。
それぞれに人間関係があって、死ねば悲しむ人もいるし、和解できない人たちもいる。
単に戦うストーリーが進むだけでなく、周辺の人間関係がそれを深いものとしていた。
また、会話で登場する重要な単語を“おぼえる”で記憶し、おぼえた単語を別の人物に“たずねる”と新しい情報を引き出せるアドベンチャーゲームのようなシステムを持っており、その点でも当時としてはかなり凝っていた。
こういった物語の演出、世界で会話している感覚は、当時としてかなり印象的だった。
▲単語を使ってたずねると、ゲーム進行と直接関係なくてもキャラクターが背景に関わる情報を漏らすこともあり、それが世界観に深みを加えていたと思う。
次に、独特の成長システムが目につく。
『FF2』は、戦闘して経験値を得てレベルアップする『ドラゴンクエスト』のような仕組みではなく、戦闘中に使用した能力値、武器や魔法が成長していくシステムを導入していた。
戦闘中に剣で戦えば剣を使用したときのみ攻撃回数が増え、特定の魔法を使い込めばその魔法だけ得意になっていく。
大ダメージを受ければ体力とHPが上がるし、魔法を使えば魔力やMPが上がる仕組みだ。
とくに魔法はレベルが上がると演出も変わるため、ワクワクしながら上げていたものだ。
まあ、威力がムチャクチャに弱くて、育てても後半はまず使わないのでがっくりするのだが、逆に「弱い物を活用するぞ」と燃えるタイプだったので、このアンバランスさも好きだった。
そして、そんな成長システムが関わるバトルは……先に書いた通りバランスがムチャクチャだった。
特殊攻撃が凶悪で、運悪く魔法で眠ったら起きられずに殴られて全滅(魔法の眠りはダメージを受けると起きるなんてぬるい眠りじゃない!)、マヒしたら全滅、石化で全滅と、特殊攻撃を持った敵に遭遇しないことを祈りながらプレイする運ゲーに近いところがあった。
それでいて、ゲームでセーブできるのは地上のみ。
ダンジョンで全滅したら地上のセーブ地点からやり直しだから、たちが悪い。
ダンジョン構造も凶悪。
例として、『FF II』名物の“ヒントも何もなく、多数の扉から正解を選ぶ”仕組みを紹介しよう。
下の4つの扉がある画像を見て欲しい。
この扉のうち、1つだけしか正解の部屋はなく、外れの扉にはいると何も存在しない部屋に移動して、2回に1回ぐらいは敵と遭遇する。
イラつくことこの上ない。
▲親の顔より見た虚無部屋
ダンジョン内に意味のない行き止まりがあったり、宝箱を見つけても役に立たないアイテムが入っていたりと厳しい作りだが、それでいて重要装備もあるから探索しないわけにもいかない。
「プレイ時間を引き伸ばそう」という意図を感じる昔のダンジョン構造。
戦闘がツライ、ダンジョンがキツい。そんなゲームだったのだ。
が、そのバランスとダンジョンのおかげで、輝く部分もあった(当時は不便なゲームが多かったので「ちょっと不便」ぐらいですんだのもある)。
極悪なバトル、そしてバトル回数が多いダンジョンを攻略するため、知恵を絞りまくるのがとても楽しかったのだ。
最初に皆がたどり着くのは、パーティー内で同士討ちして能力を上げる方法。
『FF2』では仲間に攻撃することも可能で、これを利用して仲間のHPを減らして序盤からHPや武器などの熟練度を最大まで上げられるのだ。
本作を知る人は「仲間を殴るRPG」と表現することもあるほど、この技は一般化していた。
続いて、強い装備を落とす敵を探して倒すトレジャーハント。
本作はオープンワールドを採用しており、いきなり終盤の街へ移動したり、強力な敵と戦ったりできる。
それを利用して、強い装備を落とす敵を地域を見つけては1戦闘に全力を注いで倒し、装備を強化するのである。これで、普通に遊んでいたら手には入らない強い装備を持ってダンジョンに挑める。
▲敵のアイテムドロップ率が高く設定されていることもあり、有効かつ楽しい戦術だ。
そうして金を貯めたら、終盤に出てくるミシディアの街へ移動する裏技もある。
ミシディア付近は近づくことも難しいほど敵が強い。
が、フィールド上ではいつでもセーブできるため、数歩歩いてはセーブして、敵が出たらロードすることでミシディアに安全にたどり着ける。
そこで装備を買って帰れば、終盤近くなるまでは敵の攻撃で受けるダメージは極小。かなり安全(状態異常は防げないので死ぬ)というわけだ。
とはいえ、そこまでして攻略を進めても『FF2』の攻略は終わらない。
しばらくすると、仲間の同士討ちを誘う混乱攻撃を持った敵が登場する。
モンスターの攻撃に対しては無敵でも、同じミシディアで買い付けた武器で殴られたらさすがに死ぬ。
もちろん、魔法による混乱はダメージを受けた程度で治るぬるいもので(以下略)。
▲ラミアで何度死んだだろうか。
そのあたりになると状態異常解消アイテムの重要性を知り、買い集めて対策するが、最後にはパーティー全体を麻痺させるか、即死させるか、という恐ろしい雑魚敵も出てくる。
また、HP割合に応じてダメージを与える敵が出てきて、序盤に同士討ちでHPをあげすぎるとこのダメージが大きすぎて対処できなくなることもある(なんて壮大な罠だ)。
そんな感じで、プレイヤーの創意工夫で進み、それを上回る悪意が出てくるRPGが『FF2』だった。
とにかく最終ダンジョンでは手の打ちようがなく、とにかく敵から逃げて、逃げて、ラスボスとだけ戦ったものだ。
▲全体(実質)即死攻撃を使う上、先制攻撃までしてくる。実は見えないパラメータとして装備の「重さ」があり、最後は弱く軽い装備で先制攻撃を防いで逃げ続けるテクニックが使えた。
表示上のプレイ時間は30時間ほどでクリアできたように思うが、実際には全滅を繰り返して時間を浪費し、表示の2~3倍はプレイした。
そんなRPGだから、これを同じバランスで現代に蘇らせられないと思う。
しかし、簡単にしすぎるとプレイヤーが工夫する必要もなく、私の好きだった面白さは蘇らない。
リメイク・リマスターするにしても、とにかく扱いが調理が難しい印象のゲームが、私の好きな『FF2』だった。
ピクセルリマスター版は、そこをうまく調理してくれていたわけだ。
まず、グラフィックはファミコンのデザインをベースに高解像度化されており、古くささと、それなりに見られるものを両立。
コンフィングからアナログモードにするとブラウン管テレビのように滲んだ映像になり、これまたいい味を出してくれる。
▲あまりに好きだったので若い人たちに見せまくったら全員に「気持ち悪い」と言われて衝撃的だったが、ファミコン・ブラウン管テレビ時代のプレイヤーの懐かしさをいい感じにかき立ててくれるように思う。
バトルでは魔法の効果や戦闘システムは整理され、バランス面はかなり手が加えられた。
敵は全体的にファミコン版より弱く、近代的な RPG と比べると十分強い程度に抑えられた。
少し寂しいが、これで遊びやすくなったのは間違いない。
一方で、凶悪な状態異常は健在で、私自身エンディングを迎えるまでに30回は全滅を経験した。
やっぱり、これが『FF2』だ(と思う)。
ただ、全滅したらダンジョンの入り口からやり直し、1時間分のプレイ時間が余裕で消し飛ぶファミコン版の再現はしていない。
『FF2PR』では、マップが切り替わるたび(ダンジョンで言えば階段を昇降するたび)にオートセーブされ、全滅時はそこから復活できるので全滅してもストレス度は低い。
『FF2PR』では、マップが切り替わるたび(ダンジョンで言えば階段を昇降するたび)にオートセーブされ、全滅時はそこから復活できるので全滅してもストレス度は低い。
熟練度に関しては大幅に制限がかかり、弱い敵相手に戦っても熟練度の上昇が大きく制限されているように感じた。
おそらく、序盤から熟練度最高にするテクニックは使えないだろう。
ただ、熟練度を短期間で上げやすくもなったので、突然に強い武器を手に入ても、ほどほどの時間で熟練度を上げ、武器を持ち替えられる良い面もある。
昔は新しい武器を手に入れたら20分ぐらい素振り(※)していたものよ……。
※実際に攻撃しなくても攻撃してキャンセルすると熟練度が上がる裏ワザがあり、素振りと呼ばれていた。なお、素振りや魔法の本装備などの裏ワザはリマスター版で確認できていない。
戦闘中に回復魔法を使うときキャラクターのHPが見えない(原作でも見えないけど、さすがに不便)とか、武器の特殊効果で状態異常が発生したときの表示が抜けているとか、細かく気になる点があるが、システムまわり、ゲームバランスまわりはかなり満足している。
私の感想としては、リマスターと名乗っているが、『FF2PR』はリメイクに近いように感じている。
私の感想としては、リマスターと名乗っているが、『FF2PR』はリメイクに近いように感じている。
他機種版に存在していた追加要素はないが、バグ技はきっちりつぶされているし、バランスもグラフィックもだいぶ違う。
しかし、それでも単に手間となる部分は排除されて、バトルの冗長な演出は短縮され、『FF2』独自の「魔法が弱い」とか、「エスナとバスナが不便」とか「状態異常が強い」など、記憶を刺激する要所は不便なまま残し、サクサク遊べる懐かしい『FF2』と言えるだろう。
▲アルテマは露骨に強化されて育てれば通常攻撃ぐらいには使えた。頑張れば最強魔法として運用できるかも?フレアやホーリーは弱いまま。
ひとつだけ不満があるとすれば音楽面だろうか。
原作はメロディが分かりやすく印象に残るだけでなく、フィールドのもの悲しい音楽、バトルのこれでもかと悲壮感を強調する死の音楽など、さまざまな曲が印象に残っていたし、ストーリーを際立たせていた記憶がある。
が、ピクセルリマスター版はオーケストラアレンジになって音楽が悪い意味で黒子に徹した BGM になり、単体で聞く分には良いのだが、ゲームをプレイしているとどこか物足りない。
ここはリメイク版『聖剣伝説』のように旧作の音楽を選べるオプションが欲しかったところだ。
ただ、それを入れてもファミコン版のファンが今遊ぶ『FF2』として十分良くできているし、未経験者が昔の RPG の理不尽をストレスを感じられるものになっている。
実際に私がプレイした際の動画も張っておくので、これを見て納得できれば買って損はしないと思う。
しかし、それでも単に手間となる部分は排除されて、バトルの冗長な演出は短縮され、『FF2』独自の「魔法が弱い」とか、「エスナとバスナが不便」とか「状態異常が強い」など、記憶を刺激する要所は不便なまま残し、サクサク遊べる懐かしい『FF2』と言えるだろう。
▲アルテマは露骨に強化されて育てれば通常攻撃ぐらいには使えた。頑張れば最強魔法として運用できるかも?フレアやホーリーは弱いまま。
ひとつだけ不満があるとすれば音楽面だろうか。
原作はメロディが分かりやすく印象に残るだけでなく、フィールドのもの悲しい音楽、バトルのこれでもかと悲壮感を強調する死の音楽など、さまざまな曲が印象に残っていたし、ストーリーを際立たせていた記憶がある。
が、ピクセルリマスター版はオーケストラアレンジになって音楽が悪い意味で黒子に徹した BGM になり、単体で聞く分には良いのだが、ゲームをプレイしているとどこか物足りない。
ここはリメイク版『聖剣伝説』のように旧作の音楽を選べるオプションが欲しかったところだ。
ただ、それを入れてもファミコン版のファンが今遊ぶ『FF2』として十分良くできているし、未経験者が昔の RPG の理不尽をストレスを感じられるものになっている。
実際に私がプレイした際の動画も張っておくので、これを見て納得できれば買って損はしないと思う。
攻略サイト豊富な今ならダンジョンが複雑でも調べれば迷わないですむ(見ないのももちろん自由)だし、私自身は13時間程度プレイして、30回程度の全滅でエンディングまで到達できた。
気軽に遊べる『FF2』として過去一番の出来だとは思う。
気軽に遊べる『FF2』として過去一番の出来だとは思う。
プレイ動画:
概要:
ファミコン版のFF2を、尖った部分を丸めつつも現代に蘇らせたリマスターとリメイクの中間ゲーム。原作ファンなら納得度はあるはず。評価:7(要チェック)
おすすめポイント
懐かしさを感じられるグラフィック
原作の理不尽さも含めて懐かしい箇所を残しつつ、サクサク遊べるようにした
スマホ最適化はよくできている
気になるポイント
スマホ最適化はよくできている
初体験だとかなりストレスフルなRPG
音楽は旧版も選びたかった
細かい表示に不満が残る
欲を言えば魔法の本も装備したかった
アプリリンク:
欲を言えば魔法の本も装備したかった
アプリリンク:
開発:スクウェア・エニックス(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中。