2019年に発見された新型コロナウィルスこと COVID-19 は、あっという間に世界に広がった。
そして、さまざまな産業に打撃を与え、人々の生活スタイルを完全に変えてしまった。
もう大勢で集まって騒ぐことはできないし、この影響を受けた産業はいまもダメージを受け続けている。
『Living in 2020 : Choose your Story(2020年を生きる)』は、そんな現代に生きる若者の姿を描くことで COVID-19 予防の啓蒙を行うゲームだ。
『Living in 2020 : Choose your Story』はインドネシアゲーム協会と、インドネシアの観光クリエイティブエコノミー省のサポートで開発された啓蒙ゲームで、イラスト主体で物語が進み、プレイヤーの選択で物語が分岐して5通りの結末を迎える。
日本語に対応していないが、文字を読まずとも理解できる作りなので、安心してプレイできるはずだ。
物語は、COVID-19 の影響で会社の業績が低迷し、主人公の青年が職を失うところからスタートする。
青年には家族がいて、母は病気で療養中だ。
病院に通うためには金も必要だが、手元の財布は心もとない。
そうして物語に入り込んだプレイヤーに、ゲームはいくつかの選択を行わせる。
そこで、青年は当座の金を稼ぐために食料品の配達業に登録し、働き始める。
「会社が倒産して、すぐに金が必要だから Uber Eats などの配送業に登録して日銭を稼ぎつつ就職活動」なんて、日本でもありそうな話だ。
そういった日本にも共通する“生々しいリアルさ”は、プレイヤーを物語に引き込むのに充分。
さらに、本作は COVID-19 予防の啓蒙はするが、その表示が物語体験を損ねないような工夫もされている。
たとえば、手洗いの方法。
これは職を失ってぼんやりと SNS を眺めているときにこれが表示されるので、「辛いときに SNS を見ても、やはりどこもかしこも COVID-19 か」という閉塞感を同時に感じる作り。
選択に関しても「Aするか、Bするか」という選択に対して、SNS を模した画面で「RTするか、いいねするか」というような表示をすることもあり、「あなたは主人公と同じ体験をしている」という形を崩さないように気をつけている。
そうして物語に入り込んだプレイヤーに、ゲームはいくつかの選択を行わせる。
そこには単に「ソーシャルディスタンスを保った位置に座ろう」という“いかにも”な内容もあるが……。
なかでも驚いたのは、注意深く遊んでいないと存在することすら気づかない選択肢があることだった。
初回プレイでは見事にひっかかり、不注意から悲惨な結果を招いた。
「あなたの不注意がこんな結果を招きます」なんて言われても「はいはい、わかっているよ」と思ってしまうものだが、物語に入り込んでいる状況で悲惨な結果を招いてしまうと心に入ってくる度合いが違う。
『Living in 2020 : Choose your Story』はよい子の啓蒙アプリで終わらず、COVID-19 が当たり前になった社会の辛さにも焦点を当て、今プレイするからこそ身に染みるゲームとして成立している。
決して、よい子ちゃん啓蒙ゲームだけで終わらないので、1プレイの価値ありだ。
なお、アプリは Google Play 版のみだが、iOS / PC でもブラウザから遊べるので、是非試して欲しい。
プレイ動画:
概要:
コロナ社会に生きる若者の姿描き、予防の啓蒙を行うゲーム。評価:7(要チェック)
おすすめポイント
COVID-19 予防の啓蒙と物語が一体化
気になるポイント
特になし
アプリリンク:
Living in 2020 : Choose your Story (GooglePlay 無料 / PC 無料)
開発:Wisageni Studio(インドネシア)
HP:http://wisageni.com/レビュー時バージョン:1.0.2
課金:なし
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中。