PCやゲーム機では『Slay the Spire』、スマホでは『満月の夜』など、毎プレイ初期状態から始まり、ランダムイベントやバトルを通じてカードを手に入れ、最適なデッキを作り上げていくローグライク+デッキビルドRPG。
『まものローグ』は、この人気ジャンルに登場した新星だ。
先に挙げたタイトルと基本システムはほぼ同じだが、バトルにリアルタイム制を採用しており、攻撃・防御に加えて“時間”の要素を持たせることで違うゲームと言えるほど変化している。
土台は同じでも、ワンアイデアでプレイ感は別もの。
このジャンルが好きなら強くおすすめできる1作だ。
2020年11月に本作がリリースされた当初、オリジナリティはあったもののカード効果も含めて先に挙げた人気作に近い状態で、バランスも極端だった。
が、2021年1月までに何度もアップデートを行い、カード効果・バランス・システム面で見直しが行われた結果、ついに広くおすすめすべき状態になった、と判断できたので本記事を書いている。前に購入してそのままにしている方も、『Slay the Spire』などのゲームが好きな方も今が遊び時だ。
『まものローグ』は、ランダムに生成されるマップから行き先を選んでイベントをこなし、マップ最奥に待ち構えているボスモンスターを倒すことが目的のゲームだ。
マップには通常モンスターと強力なエリートモンスターとのバトル、ショップ、ランダムイベント、休憩の5種類のマスがあり、好きなスタート地点から1マスずつ上に向かって移動してくことになる。
後戻りはできないので、スタート地点の段階である先々の展開を考えて道を選ぶ必要がある。
道中、バトルに勝利したりイベントに勝利したりすると新しいカードがランダムに手に入る。
プレイヤーは毎プレイ異なるカードを手に入れるから、プレイが画一化しづらく、アドリブで状況に合わせる楽しさがある……というのはこのジャンルの王道を踏襲している。
そして、ここからが差別化ポイント。
カードにはアタック、スペシャル、パッシブの3種類がある。アタックは主に敵にダメージを与えるもの。
スペシャルはさまざまな戦闘補助効果のカードがあるが、敵のダメージを軽減する“シールド”を得られるモノが多い。
パッシブは手札に持っているだけで効果を発揮するカード。
スペシャルはさまざまな戦闘補助効果のカードがあるが、敵のダメージを軽減する“シールド”を得られるモノが多い。
パッシブは手札に持っているだけで効果を発揮するカード。
カードの中には「一定時間持ち続けると強くなる」とか「何度も攻撃を受けると強くなる」とか、時間に関わる効果を持つものがあり、これが他のゲームとの差を生む。
バトルには、プレイヤーが操作しなくても時間が経過して敵が行動するリアルタイムバトル制を導入している。
バトル開始と同時にプレイヤーにはデッキから4枚のカードが配られ、時間経過でたまるマナを消費してこれを使っていく。
アタックカードなどを使用して敵のHPを0にできればバトルに勝利となり、マップをまた進める。
私は最初、「リアルタイムと言っても、カードはどこかで見たことがある効果だし、適当に遊んでもなんとかなるでしょ」と遊んだのだが……それは完全に甘い考えで、ターン制とはプレイ感がぜんぜん違った。
ターン制のゲームではプレイヤーはターンごとにマナを使い切り、カードを引き直して仕切り直しが入る。
しかし、本作ではこの仕切り直しであるカード引き直しに一定量のマナが必要で、引き直しのタイミングはプレイヤーが任意に決められる。
マナが少ないタイミングでカードを引き直せば、すぐに行動できないが敵の行動には対応しやすい。
マナを最大まで貯めてからリロードすれば、豊富なマナを利用して新しい手札で一気に行動できて攻撃面ではものすごく強い。
さらに、本作には敵の防御を崩して“ブレイク”すると最大1.5倍のダメージを与えられる仕組みがあり、ブレイクできるタイミングと攻撃に転じる瞬間をあわせられると一瞬で戦闘のけりがつく。しかし、貯め時間の間は手持ちカードで生き延びなければならないので耐えるつらさもある。
こういった攻防のバランスをリアルタイムで計算し、最適な行動を導くプレイはターン制にはないものだった。
また、このリアルタイムバトルの影響は“アーティファクト”と呼ばれる、常に効果を発揮する永続アイテムにも影響する。
ボスやエリートモンスターを倒したとき、ランダムイベントではアーティファクトが手に入ることがある。
防御力が高まるアーティファクトを得れば、時間とともに強くなるカードが一気に効果的になる。
マナの最大値が増える=より長い時間力を貯められるアーティファクト、逆に序盤のみ強いカードを強化するターン開始時のみ強化するアーティファクトなど、時間が関わる効果のカードを意識したデッキ構成は他のゲームと戦術の差を生んでいる。
昨今、ちょっと似ているゲームがあると「パクリ」と非難されがちだが、1つ違うシステムを組み込むと違うゲームになる。
ワンアイデアが大きな差になることを『まものローグ』がはっきり示している。
▲1回目に引いたときだけ強くなるカードもあり、奇襲型と耐久型どちらの戦術もあり得る
なお、このゲームの完成度はまだまだ発展途上で、頻繁にバランスが変更されている。
これは完全新規プレイヤーには厳しいが、このジャンルをプレイしたことがあるならアップデートのたびに違う戦術・デッキ構成を探せて逆に楽しめるとも言える。
また、PCから移植されたカードゲームは操作が少し辛い(『Slay the Spire』でカードが増えたときとか)傾向があるが、最初からスマホゲームとして設計された本作はそういった問題もクリアしていて操作性も快適。
この手のゲームが好きなら、ぜひ試して欲しい。
プレイ動画:(クリアまで遊んでいるのでプレイ概要を知りたいなら10分ぐらいで止めるといいかも)
概要:
『Slay the Spire』系ながら、1アイデアでゲームが別ものになっているアイデアゲーム。このジャンルが好きなら間違いなくおすすめ。評価:7(要チェック)
おすすめポイント
リアルタイムバトルで生まれるゲーム全体の変化
時間を活かしたカード群
頻繁にバランス変更・追加カードが出るのでそのたび新しいプレイスタイルが楽しめる
気になるポイント
バグがやや多い(言えば対処は早い)
頻繁にバランスが変わるので、ジャンルになれていないとクリア前にバランスが変わるかも
アプリリンク:
まものローグ (App Store 370円 / GooglePlay 370円)
開発:Clony(日本)
HP:http://clony.co.jp/index.htmlレビュー時バージョン:1.0.8
課金:なし
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中。