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コロプラ、『最果てのバベル』における課金ブースト調査報告書を発表。バベルプロデューサーは辞任、他2名懲戒。他タイトルで不正は発見できず

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コロプラの新作『最果てのバベル』において、自社から他社に依頼して課金を行い、不当にセールスランキングを上昇させた事件について、8月13日に“特別調査委員会の調査報告書公表などに関するお知らせ”が公開された。また、今回の件に関わる影響・処分として、取締役CCO 森先一哲氏が辞任、また本件に関与した従業員A氏、B氏の2名が懲戒処分。
さらに、代表取締役社長兼CEO兼COO馬場功淳氏、取締役CSO マーケティング本部管掌長谷部潤氏が3カ月間10%報酬減となることも発表された。

報告書の中では、事件の背景、作業までの経緯、調査内容、他タイトルへの影響などが42ページにわたって掲載されており、非常に興味深いのだが長いので軽くまとめておく。

実作業者としては、報告書にあるマーケティング本部長A氏、プロモーショングループのグループマネージャーであるB氏が行い、さらに取締役であり『最果てのバベル』プロデューサーである森崎氏が報告を受け、事前に知っていた可能性があるとされる。
社内において、他に作業について知るものはいなかったと思われるという。

事件の背景としては、『白猫プロジェクト』や『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』など主力タイトルの売り上げが下降し、新作が期待通りに売上を出せない中、新たな主軸タイトルが待ち望まれる状況にあったとしている。
そんな中、A氏は海外ゲーム会社のタイトルにおいて、課金することでセールスランキングを上昇させる施策(以下、課金ブースト)が恒常的に行われているといううわさを聞き、機会があれば実施してみたいと考えていた。しかし、セールスランキングを監視するようなコアユーザーが注目するような、課金ブーストの費用対効果が見合う新作がなかったため、それを検討してこなかった。

しかし、『最果てのバベル』に関してはリリース直後のセールスランキング順位が注目されやすく、メディアの注目を浴びてリリース直後にセールスを意識してDLするようなプレイヤーにも訴求できると考え、今回の課金ブーストの依頼をWebマーケティングなどを行うD社に発注したという。
作業項目としては、攻略サイト立ち上げなどをスムーズに行うための課金支援、“攻略支援”であれば違反に当たらないと考えていたとのこと。
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▲資料に示された関係図

ただし、A氏はこれ口外できない内容であることは認識しており、実施は秘密裏に行われた。そして、コロプラ社内にはそれを可能にする抜け道があった。
通常、稟議において1,000万円~5,000万未満の場合は取締役の承認が必要だが、広告宣伝業務の外部発注については例外とされており、期ごとに承認された予算の枠内であれば1,000万円以上でも上長1名からの承認で発注できた。
そして、税込み1,080万円で本来は取締役の稟議が必要であったが、前出の理由によりB氏が上長であるA氏の承認をとることで実行されてしまった。

作業者はD社において役職者であるE氏とH氏、さらに機密をもらさない8名の合計10名により作業。
本来は700台~1000台を用意したかったが、端末レンタル業者よりそれが困難であるといわれ200台をレンタルすることと変更。
さらに、レンタル端末は65台がApple ID登録済で使用できず、結局レンタルしたものと私物合わせて149台が使用されたとされている。
合計で847万8000円がApp Storeで課金された。作業は13日14時ごろから始まり、同日中に課金終了した。

法律的な評価に関しては、景表法の優良誤認にあたる可能性はあるが、実施後のセールスランキングの順位などを見ると“著しく優良”というには「相当の躊躇い」がある状況とのこと。
ただし、App Store規約を鑑みれば、直接抵触しているかどうかはともかく本件によって実際よりも好評なものと誤認させることになった可能性は否定できないとした。またApp Storeの規約上のチャートブーストなどを禁じる規約を考えれば、直接的に抵触しているかはともかく、不適切な行為と指摘している。

さらに、報告書はコロプラのほかのタイトルで同様のことが確認できたかの調査報告に移る。
 『プロ野球バーサス』、『PaniPani-パラレルニクスパンドラナイト-』、『ディズニーツムツムランド』、『アリス・ギア・アイギス』、『DREAM!ing』、『バクレツモンスター』の6タイトルで、同様に課金ブーストを行うユーザーとにた行動をとるアカウントがないか照合したが、そういった課金データは確認されなかったとのこと。
さらに、ヒアリング・匿名ホットラインなどを含む調査で過去に同じような行為が行われていないか調査したが、追跡調査が必要な報告はなかったという。

報告書は再発防止のため、コンプライアンス教育や稟議手続きを見直し、内部監査室と担当取締役によるモニタリングの強化、ITシステムにおるモニタリングの強化などを提言し、終了している。

この件に関して、あえて感想を加えるのであれば……面白さと別に、セールスなど順位をもてはやしてしまうブログ記事などを控える必要があるのかな、とは思ってしまった。
面白さを感じれば、あとは何もいらない。そういう風に行きたい。

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