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終わりを迎えた世界に命を創り、再生する王道SF物語ゲーム『World for Two』レビュー。人類が消え、美しく静かな世界であなたは何を思うのか

World for Two (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
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世界が滅び、残った人類はその責任をつぐなうため、新たに生命を作ろうとする……。
手塚治虫の漫画『火の鳥』に限らず、そういったSFの世界を好むなら、『World for Two』をやるべきだ。
大災害により動物が完全に消えた世界で、最後に残った老博士は新たな世界に生きる動物を、科学的に生み出すことを決意する。
彼は老いた体を補うために作業用のアンドロイドを製作し、生命を作り出すことを命じる。もちろん、そのアンドロイドこそがプレイヤーだ。

「なぜ、私は命を作るのか」
アンドロイドは、疑問を覚えつつも博士の命令に従って研究所から旅立つ。
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研究所の外に広がるのは動物も何もいない静かな世界。
文明の名残と思われる建築物もあるが、多くは朽ち果てている。
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▲文明の名残を調べると「誰が何のために設置したのか?」などとアンドロイドが考察をする。自由な思考ができるアンドロイドのようだ。

一説に「人間の消えた世界は美しいものになる」と言われているが、まさにその通りの光景が広がる。
朝、昼、夜と時間の流れに合わせて風景は変化するが、そこに動くものはアンドロイドだけ。美しくとも、文明が消えた黄昏の世界でしかない。
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そんなフィールド上には“生命の火”と呼ばれるエネルギーがあり、これを収集して研究所に戻ると、科学の力で動物を作る作業が始まる。
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生命の火からは、補助的なアイテムやDNA、原始的なアメーバを製作できる。
そして、作り出した生命に、また生命の火から作りだした因子を組み合わせ、だんだんと複雑な生き物を作っていくというのがゲームの流れになる。
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この遺伝子の組み合わせが一種のパズルになっており、原始の地球生命を思い出して「“アメーバの遺伝子”と“魚のDNA”を組み合わせたら何かできるのでは?」などと組み合わせて正解を探るものとなっている。
正しい組み合わせを見つけられないとDNAも遺伝子も消えてしまう。
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そして、作り出した動物はフィールドに登場し、ここから遺伝子を摂取し、さらに複雑な動物を作り出し……ひたすら、これを繰り返すのみ。
博士は「生命を復活させて欲しい」とだけ伝え、その意図は伝えない。だから、プレイヤーは目的もなく無心に生命を作り続けることになる。
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普通のゲームであれば「目標が乏しい」ことはマイナスになるのだが、本作ではそれをうまく演出に組み込んでいる。
少しずつ動物を作りだし、それが世界にあふれていく様子は神秘的であり、同時に生命を作り出す禁忌に触れている背徳感がある。
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なんせ、地球を再生するどころか、かつての地球に居なかったものすら出現し始めるのだ。
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さらに、しばらく進めていくと過去、博士のほかに人がいたような形跡も見て取れる。
なぜ、人は消えてしまったのだろうか、などとプレイしながら想像せずにいられない。
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さまざまな情報を得て、ぼんやりと世界の終わり、そして新たな世界を作る目的などを想像しつつ遊ぶ「プレイヤーが物語を想像するゲーム」として作られている。
環境音がないのが少し残念だが、BGMがその分世界観を主張しており(おそらく、環境音がない前提で作られたと思われる)、これもまた想像を刺激する。
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▲魚類はこの世界では空を飛ぶ。作られた生命は何かが違う。

黄昏の世界を感じるゲームを遊びたければ、『World for Two』はもってこいだ。
物語をただ終えても楽しめるし、その気になれば「カエルばかり作って、世界をカエルでうめる」など想像力で遊びが増やせる。
しかも、本作は広告なしの完全無料で、課金要素は寄付のみ。
効果音や一部操作に関して少しだけ不満はあるが、ここまで作られたらそれも小さなこと。
100MB程度とアプリサイズも小さいので、まずは試してみて欲しい。

概要:
動物が滅びた世界に、再び動物を作り出すポストアポカリプス物語。パズルは簡易

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
美しくも黄昏た世界
動物たちのドット絵
あいまいに語られ、想像力を刺激する物語

気になるポイント
生物作成に失敗しすぎるとイラつく
大きなマイナスではないが一部の効果音がないこと、パズルの操作は微妙

アプリリンク:
World for Two (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:Seventh Rank(日本)
HP:https://seventhrank.booth.pm/
レビュー時バージョン:1.0.2
課金:寄付(480円~960円)

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: