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フロイト的手法でプレイヤーを多角的に本格心理テストゲーム『ALTER EGO』レビュー。自己を知り人生を豊かにするゲーミング

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大学時代、心理学の講義で聞いた言葉が今でも忘れられない。
「心理学は、自分を知り豊かな人生を送るための授業です。普通の人は自分を知りたいと思いません。
心理学の講義を選択した皆さんは、少し変わっています」

“自分を知りたい”欲求を持つ人間が少数派ということが驚きだった。

しかし今、そんな少数派の人間に向けた強烈なゲームが App Store と Google Play の両方で1位を獲得し、ヒットを飛ばしている。
ゲームを通じてプレイヤーを分析して結果を出し、自省を促す“自分探しタップゲーム”『ALTER EGO』である。

ゲームを始めて驚いたのは、その精神分析手法のガチさにあった。
本作ではゲーム内で思索にふける女性“エス”と出会い、彼女とプレイヤーの会話、受け答えによって精神分析がなされる仕組みとなっている。
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「はいはい、質問を重ねて心理テストをするのね」
と、ゲームにすれた気持ちで臨むと、その本格的な内容に面食らう。『ALTER EGO』では簡単なエゴグラムなどではなく、フロイトの心理学に基づいた複合的な心理テストが体験できるのだ。
単なる質問もあれば、イラストから連想されるものを答える連想テストもある。
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漠然と単語を選び続けるテストもあれば、悩みを自由記述する(どうやってアプリ上で解析しているのかとても気になる)テストまである。
ゲームのおまけどころか、それ単体で成り立つほどに作りこまれている。
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これらのテストが終わるたびにプレイヤーの思考タイプが区分けされ、解説される。
「分裂型」など、わりと容赦のない言葉で結果が表示されるが、詳細を読み込んでみると当たっている気もする。
少なくとも、一定の説得力を感じてしまい、もっと分析結果を見たくなってしまう。
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▲広告を見ることでテストのやり直しは可能。とはいえ、ゲームの性質を考えるとやり直す必要もないかな…。

そんな心理テストを受けるには、“EGO”というポイントが必要になる。
とはいえ、獲得方法は簡単。画面に表示されるメッセージ”をタッチするだけでEGOはたまる。
システムは誰でも遊べるシンプルなものだ。
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さて、どんなメッセージがくるのかと身構えていると、「私ってなに?」、「他人を信じても裏切られる」など、ネガティブに迷走している言葉しかない。
完全に内向的。大丈夫か、このゲームは。
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EGOをより多く獲得するためのシステムも強烈だ。
ゲーム内には多くの書籍が用意されており、EGOを消費して書籍を読むと現実時間の経過とともに自動でEGOが貯まるようになる。
これ自体は普通のインフレ系タップゲームにありがちな仕組みだが……。
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ゲーム内で手に入る書籍は太宰治の『人間失格』やフランツ・カフカの『変身』など、一癖ある書籍ばかり。
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▲「この小説を脱稿した一か月後、太宰は玉川上水に入水自殺した」その情報、いる?

新しい書籍を得るたび、「恥の多い生涯を送ってきました」、「世間というのは君じゃないのか」など、書籍から抜粋した言葉がメッセージにも加わり、内向きの世界観が強化されていく。

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ところが、この「メッセージをタップする」時間がとてもゲーム内では有効に働いていて、まさしく“自分探しタップゲーム”を体感させてくれる。
精神分析の結果を見てから、これらの内向きなメッセージをタップしていると、「自分にはこんなところがあるのかも」と、2つを照らし合わせて自らを振り返る時間を持てるのだ。
終盤になると夜寝る前にエスと話し、朝まで放置して(アプリは切ってもいい)EGOを貯めるような間も必要になるが、それも自己を振り返る時間として機能している。

また、精神分析を行うエスの立ち位置も見事で、プレイヤーの受け答えに応じてその様子が少しずつ変化していく。それを見ることで、プレイヤーは「何がエスに影響したのか、自分の言葉が悪かった/良かったのではないか」などと類推せざるを得ない、意味ありげなセリフをちりばめてくる。
見事に、プレイヤーのガイド役をこなしている。
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▲エスの会話パターンの豊富さも魅力。

そうしてテスト結果を続けていくと、結果が鏡のかけらとして台座にはめ込まれていく。この鏡が埋まったときにプレイヤーの精神分析は完了し、ゲームも終わりを迎える。
そんなゲームである。
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▲なんか、性格最悪にしか見えない分析結果

で、冒頭の話に戻るのだが、大学時代に心理学の講義を受け、「心理学は、自分を知り豊かな人生を送るための授業です」と語ったとき、私はぐーたらな学生だったのでテストに必要な内容しか覚えず、その実感はなかった。
が、『ALTER EGO』を遊ぶことで自己を振り返った結果、少し自分の行動原理について考え、よりよく生きようと考える時間が持てて、その「人生を豊かにする」考え方を実感している(教授、ごめんなさい)。
とても分かりやすく心理学の恩恵を感じられるゲームになっているので、「自分のことが知りたい」という方はぜひ遊んでみて欲しい。

概要:
フロイトの心理学に基づいた複合的なテストから自己を分析し、シナリオ・メッセージを通じて思索にふけるゲーム

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
静かな音楽と自省の時間が得られる
手の込んだ心理テストを受けられる
作りこまれたエスの会話と分岐

気になるポイント
1周目は終盤の待ち時間が長すぎる気はする

アプリDL:
ALTER EGO (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:Caramel Column(日本)
HP:http://alterego.caracolu.com/
レビュー時バージョン:1.6.0
課金:広告削除(360円)、獲得EGO増加(各360円)

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: