『ロマンシング サガ・リ ユニバース(ロマサガRS)』が発表されたとき、「これはロマサガではないと言わず、遊んでから判断したい」と記事で書いた。
そして十分にプレイした今、頑固な『ロマサガ』老害として声を大にして言いたい。
『ロマサガRS』は『ロマンシング・サガ』の新作とは認めない。これは大人の都合がにじみ出る、シリーズの根本を捨てたガチャゲーだ。
しかし同時に、これはロマサガという原作なしに成立しない作品で、あふれるロマサガへの愛も感じられる。『インペリアル・サガ』のようにシリーズ外伝としてなら、もろ手を挙げて歓迎していたはずだ。
最初に「なぜロマサガではないのか」を書こう。
そもそも『ロマンシング・サガ』の最大の特徴は、複数の主人公を使って立場を変えつつ、プレイヤーの行動によって体験するイベントが変わる自由な世界と、世界観の断片に触れて物語を感じる作りにあった。
ところが、そもそも本作は一本道であり、そういった要素を継いでいない。
▲会話シーンも原作をリスペクトしたいのか、今風にしたいのか分からない。
さらに、大した説明もなく過去作のキャラクターが次々と登場し、現代のキャラの影は非常に薄い。
舞台設定は『ロマンシング・サガ3』の300年後だが、違和感だらけ。
「過去作のキャラと音楽使わないと売上が出ないから」というソシャゲの本音が透けて見え、思い出を金に換える装置という側面をまったく隠さない作りだ。
キャラクターイラストも気になる。
小林智美さんのイラストだけでは数が間に合わないのは分かるが、新規イラストに関して女性と男性でテイストが露骨に違う。全体にもっと大人びていたはずなのだが……。
▲新規絵、男性と女子(キャットは目立つ方だが)のイラストの差よ……。
邪推で申し訳ないが、「女性キャラは思い出より今風に、新規客をとれるように!」というメッセージしか感じない。
また、ロマサガ2の「ヴァンパイア(女)」など、萌え系イラストで取り込めるものは雑魚モンスターでも貪欲に使っていく。
モンスターが仲間になるなら、そこまでのストーリーも描かなければ片手落ちだ。売れそうなキャラを入れたい……そんな姿勢がありありと見られる。
▲誰、コイツ。他にもモブモンスターのキャラ枠はいる。
ロマサガの魅力の柱は、世界観とフリーシナリオ、バトルだと思っている。そのうちフリーシナリオは切り捨てられ、世界感もごちゃ混ぜ。
タイトル画面でシリーズ共通のオープニングタイトル曲を使用していないのは、制作側でも「大人の事情で正統続編を名乗る違和感」を感じていたからではないか……などと思ってしまうほどきつい。
▲なぜかシリーズ新作と歌いつつタイトル曲は新規。
ところが、残るバトルと育成を見ると、この感想が変わってくる。
驚くほどロマサガのエッセンスを汲みとり、基本無料のスマホオンラインRPGとして昇華しているのだ。この部分には、深いロマサガ愛を感じる。
ここでいう『ロマサガ』のゲーム展開とエッセンスとは、バトルを中心としたプレイだ。
ロマサガのバトルには極端な相性が存在し、ものすごく強いボスでも、弱点を突けば恐ろしいほどあっさりと倒せたり、状態異常を使えば完封できる。
この性質を利用して、耐性装備を集めて後半に登場するボスをあっさり倒し、強力な装備を得てすらすらゲームを進められる。
慣れたロマサガプレイヤーは耐性を利用した緻密な戦術で敵を倒し、大胆にゲームを進める。これぞロマサガのゲーム進行。
▲ボスの大技は耐性がなければ全滅。それがロマサガ!
そんな複雑な耐性バトルの仕組みが、本作では見事にゲームに融合している。
まず、ダメージは斬打突熱冷雷陽陰の8属性に分けられており、各キャラクターにはそれぞれに対する耐性値が設定されている。
▲見ての通り、耐性にはSSとAで大きな差がある。
本作のバトルでは、レア度の高いキャラクターの方が圧倒的に強いが、敵の攻撃と耐性が組み合っていないときはSSキャラですらSランクのキャラより使いづらい立ち位置になる。
弱点属性の攻撃をくらうと大技ですぐ死んでしまうからだ。
では、敵の攻撃に強いキャラクターだけを揃えればいいのかと言うと、また話は変わってくる。
敵にも耐性があり、弱点属性をついた方がはるかに効率よく倒せる。ところが、耐性が高いキャラクターが敵ボスの弱点属性をつく攻撃を持っているとは限らない。
各キャラクターは攻撃技が決められており、使用できる武器タイプが限られているからだ。
パーティーをステージ属性にあう構成にすることは難しい。だから、弱点を織り込んで、それをカバーする戦術が必要になる。
たとえば、打撃を得意とし、斬撃を弱点とするスービエに対抗するとする。
セオリー通りに打撃に強いキャラクターで固めて倒してもいいのだが、そういった耐性を持たないキャラクターが多いときだってある。
また、斬撃を得意とする大剣スタイルのキャラーは打撃に弱いので、弱点を突くのも一苦労だ。
そんなときは、陣形を組んで打撃に強いキャラ(防御技パリィがあれば完璧)が狙われやすい場所に陣取り、弱点をカバーしつつスービエを倒すなんてこともできる。
本ゲームでは雑魚も強く、ボスにたどり着く前にその対処も重要になる。
雑魚の多くはマヒなどの行動不能系の耐性を持っていないので、搦め手を使ってゲームを進めることもできる。
▲全滅手前!しかし、敵をマヒさせることで一方的に殴って最後の1人だけで生き延びられた。
工夫してバトルを勝ち抜くと新しいステージが開放されてより良い装備がドロップするようになったり(装備もかなり重要な要素だ)、新機能が追加されたりしてどんどんゲームが有利になっていく。
▲訓練や探索などの機能が追加され、先に進むほど育成が加速していく。
メインクエスト、イベントクエスト、それぞれのクエストで使える戦術が違うから、手持ちのキャラクターで使える戦術でどんどんゲームを進める「作戦を立てただけ育成が早くなる」というサイクルはロマサガのゲームサイクルと合致する。
ソシャゲ的な育成と、さまざまなキャラクターを使わせるソーシャルゲーム的なシステムをロマサガに当てはめた手腕は見事としか言えない。
さらに言うなら、ロマサガを題材にしなければゲームの面白さは実現不可能だっただろうとも言える。
普通のソーシャルゲームで8属性が攻撃と防御に別れ、状態異常10種を考えて戦うバトルなんて複雑すぎて実現は難しい。
しかし、ロマサガという題材を使ったがゆえにスムーズに理解でき、バトルゲームとして面白みを確保しつつ大勢が楽しむことができるのだ。
▲8属性に加えて、10個の状態異常耐性。
『ロマサガRS』のバトルからは、あふれるほどの「ロマサガ愛」を感じる。
一方、キャラクターや物語の扱いからは、「大人の都合」がにじみ出る。
古くからのロマサガプレイヤーほど、このジレンマに襲われることだろう。
サガシリーズにはゲームシステムが異なる『魔界塔士SAGA』などもあるわけで、品質で言えば別シリーズのサガとして立ち上げられるから、そうしてくれれば良かったのに……。
だが、確かなことが1つだけあって、『ロマサガRS』はいわゆる日本的なガチャゲーとしてはとても面白いし、大当たりを引かなくても遊べるようにはできている。
だから、このゲームを遊んでみるといい……と、記事を書いている最中に、プレイヤーに不利な方へゲームをこっそり修正したことが判明してしまった。
かなり面白いし、育成の目標が尽きないソシャゲの良作なのに、運営の Akatsuki とスクウェアエニックスが信用できない。もう、どうすればいいんだ。
概要:
ロマサガのキャラクターを使ったバトル&育成のゲーム。世界感は大事にしていないが、バトルシステムは大事にしている。
評価:7(要チェック)
おすすめポイント
過去シリーズの音楽がそのまま使われている
ロマサガテイストを残したバトル
新規ドット絵が良い
育成感が途切れない演出で、ひたすら遊ぶソシャゲRPGとしての質も良い
気になるポイント
運営が信用できない(ただ、事後処理中なのでそれ次第でここはかわるかも)
ロマサガの世界感に配慮しているが、課金の都合がにじみ出る
序盤はガチャでかなり難易度が変わる(SSが5体以上、複数欲しい)
ストーリーが面白くない
メンヘラの恋人のように「私を忘れないで」ってぐらいスタミナが回復する。このままだと飽きる
アプリDL:
ロマンシング サガ リ・ユニバース (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発:Akatuki(日本)
販売:スクウェア・エニックス
HP:https://www.jp.square-enix.com/saga_reuniverse/
レビュー時バージョン:1.1.0
課金:ガチャ、時短、キャラ育成(どこにでも課金要素があるが、その分石もたくさん手に入る)
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: