『君と霧のラビリンス』など、近年女性向けゲームに力を入れ始めたスクウェア・エニックスから送られた3本目の刺客。
それが、宇宙からやってきた喰核生命体(しょっかくせいめいたい)“イーター”によって滅びつつある人類を、強化手術を受けた少年たちが守る変身ヒーローRPG『ワールドエンドヒーローズ』である。
今回もヤバいゲーム……かと思いきや、開発は『アイドリッシュセブン』でヒットの実績を持つ G2 Studios。
実際、プレイ序盤は疑問符が付く部分が多いものの、スクエニの女性向けゲームでは最も心に刺さる作品になっている。いや、ネタ的な意味ではなく、本当に物語は結構良いから。
ゲーム内の世界では、イーターの出現と同時に、特殊な血を持つ少年たちが生まれ、彼らが学校生活を営みつつ「ヒーロー活動」をして世界を守っている。
プレイヤーは新たに立ち上がったヒーロー活動校の監督となり、新たにヒーローになった主人公(改造手術でエアコンのリモコンを操る能力を得る)を中心としたヒーロー活動を監督していくことととなる。
細かいことは置いといて、とにかくオープニングでヒーロー活動が説明されて、即座にイーターが登場する。
そして、ヒーローたちは走って現場に急行。ヒーローものといえば、現場に急行。このセンス、嫌いじゃないぜ。
悪くない動きだし、キャラクターも結構かっこいい。
で、目の前に瘴気が発生して雑魚が登場し……いよいよ戦闘か!?
と思ったら、ビンタ一発で倒して走り続けるヒーローたち。そして走って……。
え、まだ走るの!?
とにかくいろんなカメラワークで、20秒ぐらい走る姿を見続ける驚き。20秒の虚無だよ、これ。
▲なお、早送りしないと35秒ぐらいかかる。
また、たまに“スペシャルシーン”が発生し、ヒーローが猫と戯れたりする。
ヒーローの意外な一面が見られる定番のあれだが、君たちはイーターを倒すために急行しているのでは……?
このゲーム、突っ込まずにプレイすることはできない。
で、20秒の虚無を終えて現場にたどり着くと、“データダウンロード”開始。13MBか……ちょっと、Wi-Fiがあるところでやりたいな……。キャンセルっと。
すると、確認の警告ウィンドウが登場する。
「ゲームのプレイにはデータのダウンロードが必要です。ダウンロードせずタイトル画面に戻りますか?」
そして、突きつけられる「タイトル画面へ」or「ダウンロード」の2択。ははは、まさかゲームの途中からタイトル画面に戻るなんて……こやつ、冗談をいいおる。
冗談じゃなかった。
走る姿を見させられたあげく、タイトル画面に戻って呆然。ここしばらくで一番驚いた。
これがゲーム内のあらゆるところ(ガチャ、ストーリーなど)で発生するので、本作を遊ぶときはあらかじめゲームデータを一括DLしておくことをお勧めする。
たいして容量食うわけでもないし、これだけで格段に快適になる。というか、ガチャ画面からタイトルに戻されるのはびっくりしたぜ。
さて、気を取り直して再度プレイすると、ついに“イーター”を倒すために変身が始まる。
私服から着替えてポーズをとる(ガチャから出たカードにポーズも付属するぞ!)ヒーローたち。
ジャンプしてシーンが切り替わる演出もあるし、特撮感があっていいじゃないの!
さんざんバカにしたように書いているが、「お約束を踏まえよう」という意思が強いゲームで、そこはすごく好き。
そのまま、攻撃するヒーローを選択する画面へ……行くと、今度はどのヒーローがどの属性かわからないし、カッコいいが、攻撃力もわからない選択画面で困る(わりとガチで困惑する)。
バトルシステムとしては「2回攻撃して、攻撃力が敵のHPを上回っていれば勝ち」的なポチポチライクなもの。
でも、ヒーローの攻撃演出はカッコいいし、カメラ切り替えも特撮を意識した感じで良し。
とどめの一撃を出すとき、致命的ダメージを受けて仲間をかばうときなどにヒーロー同士の掛け合いが発生するのも嬉しい。
猫ではなく、こういう熱い掛け合いをね、キャラゲー的に求めていた!
▲ポチポチゲーをキャラゲーとして構成した女性向けゲーム、という感じ。
バトルに勝つと、推しキャラが華麗なとどめ技でイーターを成敗。このあたりの演出は結構良し(早送りできたらもっといい)。
ミッションをクリアすると経験値が手に入って、ヒーローの信頼度が上がって(MAXになって覚醒すると個別ストーリーが解放される)。
さらに、“ハイライト”ボタンでバトルの名シーンをスクショで見られ……。
うーん、ハイライト機能のこの使えなさ。
バトル時の様子をランダムに切り取っているようで、実用的な写真がまず取れない。
ともあれ、チュートリアルが終わってプレイを始めるとようやく物語が動き始める。
主人公が所属する学校の物語では、きつい顔つきのヒーロー“浅桐”による新人いびりが展開される。
「おい新人……石崖区をパトロールするときのルールを忘れたかァ?」(完全に悪役)
▲Gガンダム第1話でやられた雑魚、ミケロっぽさを感じる。
そして、本当に始まる校歌斉唱。
浅桐、さらに後輩に中濃ソースを持たせてパトロールを開始する極悪さを発揮。中濃ソース持って戦ったら、絶対に吹きこぼれるだろォ!(口調が移り始める)
「中濃ソースを侮るなよォ……こいつぁ、今日のハッピーエンドに絶対必要なのさ。」
謎の中濃ソース推し。乙女ゲーといえば物語とキャラが絶対重要。
にもかかわらず、開始すぐにストーリーに黄色信号が灯る事案発生である。
そして、ストーリーの続きを見るためにミッション開始。ほんと、ひたすら走る。
田舎道を走り、市街地を走り……意外にも背景が豊富で、スクショする手が止まらない。20秒の虚無だけど、地形が変わると最初の1回は楽しめる。
▲背景セット、かなり凝ってる。
工事現場ではヒーローが壁の上を走って高低差が生まれていたり、市街地では細い道があったりと小技もきいている。
あと、どこにでも出現する猫。
走るシーンは連打で早送りできるが、完全スキップは不可。
変身シーンやバトルシーンはスキップできるので、バトルと変身がおまけで、走るシーンがミッションのメインということか。
メインならFGOの宝具演出と同じで飛ばせないのは仕方ない。
そんな感じで、スタミナを消費して(文字通り)走って戦闘力を競うポチポチゲーなシステムを感じつつ、物語は先ほど書いた通り微妙で半ばあきらめを持ってゲームをしていた。
それでもストーリーが短く区切られていてテンポが良く、やめどきがないので続けていたら……奇跡が発生した。
校歌と中濃ソースが、ヒーローの性格を示す伏線として回収された……だと!?
▲新人いびり先輩こと浅桐さん、ネタキャラとして好きになってしまった。
さらに、メインストーリーでは強化改造の話をして、世界設定を説明して、ヒーロー同士の確執が発生して、テンポよく物語が進む。
あと、主人公の“エアコンのリモコンを操作する能力”すら活用される。短い間で伏線はすべて回収する貪欲な姿勢。やるじゃない。
▲人間同士で争っている場合ではないのに!
評価が上がったところで、スチールの拡縮比率を間違えて(たぶん、間違っている)、画面が真っ白になったり、抜け字があったりと、突っ込みどころを提供するのも忘れない。
走る20秒は確かに虚無だが、スタミナ消費が激しいのですぐ遊び終わって負担はない(スタミナ満タンから5分で日課が終わる)し、後輩いびり先輩のキャラは立っているし、物語の先は気になるし、これは意外に面白いのでは……?
▲3Dなのに全く動かず、キャラが奇異なポーズをとる合宿施設(デレステの事務所に相当)は見なかったことにしておこう。
ゲームのテーマは「ヒーローなんてかっこいいもんじゃない。」だが、このゲームこそかっこわるい。
でも、かっこわるいなかに良いところがあって、何をするかわからない子供の様子をハラハラ見ているような、母性をゲームに感じてしまう。
ほっとけない。キャラじゃなくてゲームが。
現状では対応端末が限られていて遊べる人が少ないようだが、ヒーローは偶然選ばれるもの。
もし、このゲームに選ばれた端末を持っていたら、あらゆる不具合や、お知らせ、システムに突っ込みながら遊んでみて欲しい。
▲ゲームを開始した瞬間にお知らせで表示される2月29日バグ。
物語がチーム単位(序盤、キャラ個人よりチームの連携に重点を置いていてジャンプ漫画『ワールドトリガー』をやや意識している感じがある)でキャラが薄いように見えるが、読み進めればだんだんと全体が好きになって好きなキャラクターもできてくるはずだ。
概要:
変身ヒーローものの女性向けゲーム。システムは古いポチポチだが、物語は結構力が入っている。
評価:6(面白い)
おすすめポイント
短時間でスタミナを使いきれて負荷は(序盤を終えれば)低い
ストーリーは楽しめる
突っ込み力があると楽しい
気になるポイント
バグ、意味を考えずにいられないシステム
あらゆるところに「足りない」ものを感じる。
走るミッションが虚無
アプリDL:
ワールドエンドヒーローズ (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発:G2 Studios(日本)
販売:スクウェア・エニックス(日本) HP:http://worldendheroes.jp/
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:ガチャ、体力回復など
ライター:ゲームキャスト トシ
動画:
※本記事は、Note有料マガジン会員による「ゲーキャスの女性向けゲームレビューが見たい」というリクエストを受けて執筆されました。