錬金術を教える学園の生徒になり、素材を採取してさまざまな依頼をこなして成長する錬金RPG『アトリエシリーズ』。
そのシリーズのソシャゲ版が『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』だ。
正直、ゲーム開始時点では完全に「微妙ゲー」だと思っていたのだが……いざ腰を据えて遊んでみると、これまでのシリーズ作品に並べられるぐらい1人用RPGとして遊べる驚きの作品だった。
ソシャゲ的な適当なオールスター物語に逃げず、新規キャラクターを軸に据えた1作の『アトリエ』作品として世界観も物語も作り込まれている。
つまり、おすすめできるゲームだ。
このゲームを始めたときの印象は、かなり悪かった。最初に主人公の性別を選べるのだが、理想の姿が下の図のように表示されるのに対して……。
ゲームを始めて目にする現実は、このダサい姿。今どきのゲームでこれか!
どうみても「無課金アバター」です。ありがとうございました。
確かに、開発元の NHN が運営していたハンゲームの初期アバターはダサかった。でも、こんな形のコラボしなくても……。
▲ハンゲームの実際の無課金アバターは白のタンクトップなのでまだマシだけど。
で、チュートリアルを終えるとガチャが引けるわけだが、さすが主人公がほぼ女性の『アトリエ』シリーズ。
ガチャから出る服が女性向けばかり(※服以外はほぼ共用)。
女性キャラなら事前登録特典の“ロロナの衣装”が着られるが、男性主人公を選ぶと女性用の衣服を装備できないため無課金アバターが続いてしまう。
▲事前登録特典のロロナ。この服が女性だと最初から着られる。
なんて女尊男卑ッ!
プレイの上ではレベル5になったところで性別・外見を変更する機能が解放されるので、能力的には困らない。しかし、オンラインゲームはやっぱり自分と同じ性別でやりたい。
この後、めちゃくちゃリセマラした(男性用衣装を手に入れるため)。
▲リセマラで手にした姿。ただ、少し進むと錬金でカッコいい服を作れるようになるので、実際にリセマラはいらなかったかな……。
そして、リセマラしている間に「ガチャ産キャラは4体(なお、特定キャラが出る確率は2%、特定キャラが出る確率は0.5%ぐらい)手に入れないと弱い」なんて噂が入ってきて、なんか面倒になってこのゲームを遊ぶのをやめてしまった。他にゲームはたくさんあるし、後回しにしておこう、と。
そして1週間後。積みゲーを多少消化して『アトリエオンライン』を始めたら、意外なことに止まらなくなってしまった。
アイテム課金式になった家庭用ゲームは、本シリーズとかけ離れたものになる。しかし、本作は「アトリエ外伝」としてシリーズ年表に入っても問題ないほどの感触があった。
1人用RPGとして、きっちりアトリエしていたのだ(なお、マルチはバグが多いし、フレンドとやらないと機能しづらいおまけで)。
ゲームを始めたらミッションを引き受けて、プレイヤーは錬金学園の仲間と共にパーティーを組んでフィールドに踏み出せる。
このとき、採取の制限はほぼなし。マップに入り直せば同じ物が何度でも採取できるし、スタミナを消費することもない。
天気や時間の変化で出てくる特別な素材、ちょっと注意して見ないと見つからない隠し(というほどではないが)素材もあり、このあたりの感触も原作と変わらなかった。
素材採取は家庭用ゲーム機より楽に進むぐらいの入手ペースで、物語を進めるのに困らないほどスムーズ。
▲素材を集めたら、合成でいろいろなモノを作れる。便利アイテム、★3装備ぐらいまでは誰でもイケる。
素材採取中に敵とぶつかるとバトルが始まり、ここは半オートで、スキルとアイテムの使用タイミングを指示するだけのシステムになっている。
倍速にすればテンポ良く進み、スマホゲーとしてストレスなし。そもそも、元のアトリエシリーズのバトルも複雑なシステムは使用していないので、これぐらいでちょうど良い。
さらに良かったのは、素材から調合できるアイテムの効果が高かったこと。
強敵には回復薬を作って使いまくって、ときに攻撃アイテムに頼ることもある。調合したアイテムを使えてこそ、アトリエ。それが守られていて安心した。
世界観もまたアトリエだ。
今作の舞台ブレセイル島は新たな舞台で、メインストーリーに関わる登場人物は全て新規キャラクター。
無理なく、自然に物語が進む。
tanuさんのイラストが可憐でアトリエの世界観が保たれているだけでなく、演出も完全にアトリエ。
イベントの重要な場面ではカットが入るし、物語のテイストも学園の中でドタバタ劇を繰り広げるあのノリが混じっている。
基本的にはミッションを引き受けて、さまざまな場所で素材を採取して納品する
重要なミッションを見ていくと、「○○納品」などの定番があるのはもちろんだが、「学園を辞めて鍛冶屋になる友達に、錬金で丈夫な金づちを贈ろう」とか、「狼さんを治療するために傷薬を!」とか、あの暖かいアトリエの世界が広がっている。
そして、何気なくタイトル画面を見ると、そこには……!?
「ゲーキャスのアトリエ」。自分のアトリエだ!
▲違和感なさ過ぎてしばらく気づかなかった。
これに気づいてよくよく見てみれば、物語は主人公の性別関係なくテキストが成り立つように作られていて、性別を気にせずちゃんと遊べる。
そう、『アトリエオンライン』は、プレイヤー自身がアトリエ世界の主人公になれるRPGとして作られていたのだ。
いま、私自身が男主人公としてアトリエ世界の中に溶け込んでいる。そんな感覚を得られる貴重なRPGとなっていた。
ちなみに、最初に懸念していた「ガチャが渋すぎる系」の懸念はどうだったかというと、完全に杞憂であった。むしろ、「ガチャがあるから面白いゲームが誤解される」系のガチャ。
キャラクターは4回ガチャから出さなければ最高レア度まで育たない。しかし、ストーリーで仲間になるキャラクターはガチャ限定キャラと同じぐらいの強さで、ゲームの進行で最高レア度まで育つからプレイに支障はなかった。
むしろ、下手にガチャキャラを仲間に入れていると限界突破できずに途中で詰まる。
▲オールスター系のソシャゲとは一線を画す登場の仕方で、能力的に特別ではないし、ストーリーに関わらない。ゲーム的にも有利ではない。ただ、昔のキャラと旅したい人向けの重課金要素。
装備に関しても、ガチャを引かなくても錬金で強化した装備で敵に対抗できた。
最終的にはガチャ産アイテムを直接使用するより、ガチャ装備を素材にしてから錬金で作った方が強いものができるから、最初にむやみにガチャで引かず、まず全16章のストーリーを終えることを考えた方が良い。
▲初期装備を10連で引いたら、持ち物所持欄を圧迫するのであとはガチャを引かない方が良い。ガチャはクリア後のお楽しみだ!
ストーリーを進めれば最強のキャラクターたちが揃うし、装備も錬金して質の良い装備をコツコツ調えた方が楽しい。つまり、ガチャがない状態でほぼ適正バランス。
マルチを無視すれば、無料で買い切りバランスの1人用のRPGとして成立しているのだ。
本作は、アトリエシリーズファンのための外伝的作品としても、スマホゲーマーがアトリエに触れる入門としても、よくできている。
ガチャがあるせいでプレイヤーが混乱し、面白さが掴みづらくなっていることが欠点と言えるほどだ。
ガチャは、ストーリーを完全に終えてからキャラを限界まで鍛えたいとき、初めて引いた方が良い設計になっている。
ただ、ゲームを最後まで遊んで『アトリエシリーズ』が気に入ったなら、ガチャを引く前にPS4やSteamで配信している本編を買うことを検討していただきたい。
それで足りなければ、初めて本作に課金するのが良いだろう。
概要:
プレイヤーを主人公としたオリジナル物語の『アトリエ』シリーズ。1人用RPGとして遊べる作り。
評価:7(要チェック)
おすすめポイント
プレイヤーが主人公の独立したアトリエ作品
1人用ゲームとして楽しめる
イラストがかわいい
気になるポイント
マルチが遊びづらい
ガチャを序盤に引きすぎると損(そして分かりづらい)
アトリエ的な大味バランス
アプリDL:
アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~ (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
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開発:NHN PlayArt 株式会社(日本)
HP:https://atelier-online.jp/
レビュー時バージョン:1.0.8
課金:ガチャや便利アイテム
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: