人類が滅亡しそうな世界で、主人公が一機で戦うシューティング節。そこにスケッチ風の情感たっぷりんなビジュアルをぶち込み、日本のインディー博覧会 BitSummit の最優秀賞も受賞した期待作。
タイのデザインスタジオ Pixel Perfex が制作した『Earth Atlantis』は、そんな夢あふれるゲームなのだが……同時に、いわくつきのゲームでもある。
いわくとは、『Earth Atlantis』 iOS版の9カ月前に発売された Nintendo Switch版の日本のレビュー評価がやや低かったこと(海外はそこそこ)。
だが、それも9カ月前の話。
本作はバランス修正アップデートを取り込み、海外専売のPS4版などをベースにスマホ向け調整した完全版がiOSに登場した。つまり、今こそプレイして、他機種版プレイヤーに面白さを見せつけるとき。
本作はバランス修正アップデートを取り込み、海外専売のPS4版などをベースにスマホ向け調整した完全版がiOSに登場した。つまり、今こそプレイして、他機種版プレイヤーに面白さを見せつけるとき。
ということで、1画面で終わるストーリーを気にせず、ウルトラポジティブな気持ちで紹介していきたい。
『Earth Atlantis』は、海底を自由に動けるオープンワールド型の2D横画面シューティングで、画面左上のミニマップを見てボスの位置を把握し、全25体を討伐する“クエストモード”がメインの遊びとなる。ライフ制を採用しており、1回ライフがゼロになるとパワーダウンしてセーブ地点からやり直しとなる。道中でパワーアップアイテムを拾ったり、サブウェポンを拾ったりできるが、永続的なパワーアップはない。
やはり、本作最大の魅力はグラフィックにある。
セピア色のスケッチ画風の筆致で、背景は4重スクロールで奥行きを強調。デザインスタジオ Pixel Perfex の面目躍如で、この点は本当に素晴らしい。
背後に自由の女神が沈んでいたかと思えば、別のエリアではギリシャ風の神殿が沈んでいたりと世界観はバラバラだが、奥に後半のボスが泳いでいたり、特別な物体が配置されていたりして、場面場面の見栄えは最高。
そんな海の中を動く操作は、スライド操作での移動と画面右側をタッチしての潜水艦反転(前面の方がショットが強い)操作だけで快適。ショットはオートだが、連打でOKな構成なので問題なし。
難易度は EASY / NORMAL / HARD の3段階があり、NORMAL難易度で遊んでみるとスラスラ進んで、海を堪能できる。
ときおり登場するボスとは、アグレッシブに遊ぶと楽しい。
ボスには2種類いて、1つはほぼ完全に攻撃を避けられる“持久戦パターン”。このパターンでは、集中力に頼って敵を削り切ることとなる。
▲固定画面の敵はだいたい持久戦パターン。
もう1つは、避けづらい弾幕を張るボス。
これに対してはプレイヤー側も弱点を狙って効率を良く戦い、潜水艦のライフがゼロになる前に火力で削り切る“肉を切らせて骨を断つ”戦いが求められる。
日本では「弾幕を避け切って撃つ」シューティングゲームが主流だが、海外シューティングには避けきれない弾幕をライフで切り抜ける思想のつくり方も多く、この前提に立つと結構楽しいのだ。
プレイヤーの潜水艦に左右の向きがあるように、ボスにも向きがある。ボスは通常、プレイヤーを正面に捕えているのだが、弾幕を張っているときなどは旋回できない。そこを見切ってボスの裏に潜り込んで弱点を撃ちまくるギリギリのプレイはやりごたえ十分。
ボスの攻撃にはいくつかの種類があり、その中から攻撃力の弱いものを選んで喰らう(なお、体当たりは大抵致命傷なので注意)パターン構築も楽しめる。
ただ、残念なのは素晴らしいビジュアルの海底探索ゲームと、ボス戦が楽しいシューティングの短所が合わさり、長所をつぶしている点にある。
『Earth Atlantis』を海底探索ゲームとして見ると完全に落第の評価しか与えられない。海中にイベントがなくて、地図にはメリハリがない。それだけならまだしも、マップのつくりがひどい。
ボスのいる位置が左上のレーダーに表示されるが、海中地図は表示されないのでレーダーを見てまっすぐ向かうとほぼ行き止まり。ゲーム作りの初心者が「まっすぐ移動してボスに行けるとつまらないから、一番遠回りの道を正解にしよう!」とか考えて作ってしまったようなクソマップで、これだけは許されない。
▲すぐ上にボスがいるのに、入り口は常にはるか遠い。
しかも、ボスに負けるとチェックポイントに戻され、パワーアップもサブウェポンも取り直す時間が必要になる。サブウェポンは限られたボスでしか有効ではない(メインショットが最も強い)のでいいとしても、ボス戦で倒れるたびに3分ぐらいパワーアップに費やすのは面倒だった。
海底探索のオープンワールドと、普通のシューティングゲームのような作りが融合せず、完全に分離してしまって短所を強調している。
Pixel Perfexが志したものは何となくわかる。『ダライアス』に影響を受けたから、独自の海外的な解釈でやりごたえあるボス戦を提供し、ボスを求めて素晴らしいビジュアルの海を探索する楽しさも一緒に提供しよう……という内容だろう。
しかし、ボス戦は楽しくても海の探索にメリハリがなくて面白くない。しかも、体力の削りあいをするSTGは近年の日本ではマイナーに属するので評価されづらい。
日本のトレンドに合わない内容(海外ではそこそこ程度の評価)で、日本のインディーゲームイベント BitSummit の最優秀賞をとってしまい、期待が膨れ上がったことが本作の不幸と言えるだろう。
とはいえ、ボス戦を評価しても本作はそこそこの域を脱しておらず、「メトロイドのように作りこまれた海底探索要素」、さもなくば「FF13のように一本道で印象的な風景を見つつ、ひたすらボス戦」のどちらかが足りない。
幸い、iOS版は各機種の中でもストレス度は低いので、EASYでサッとクリアしてボスをどんどん倒すハンターモードを解禁し、HARD難易度で遊んでボスを倒すプレイはそこそこ楽しいし、ビジュアルも含めて価格分の価値はある。
ただ、日本で広くお勧めするにはあと一歩、作りこみが足りない。現時点では「STGマニアがコレクションするゲーム」と言える。
評価:5(楽しめる)
ゲーム概要
鉛筆画風の海底世界で潜水艦を操って戦うシューティング
おすすめポイント
スケッチ風タッチのグラフィック
体力の削り合いボス戦は結構楽しい
注意点
海底探索が単調すぎる
悪意を感じる遠回りマップ
倒れるとパワーアップやり直し
アプリリンク:
Earth Atlantis (itunes 600円 iPhone/iPad対応)
開発:Pixel Perfex(タイ)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし
公式ページ:http://pixel-perfex.com/earth-atlantis
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: