人間の体を1つの巨大で複雑な機械として描くドイツ作家フリッツ・カーンさんのに影響を受け、人体を機械として忙しく動かすゲームが登場した。
『Homo Machina』である。
脳から指令を受けるたび、体の中にいる作業員が目、口、鼻、手、足と次々に忙しく動かし、動きも感情も機械的に表現する試みは面白いだけでなく、人体の構造を再度学ぶ機会にもなる。
同時に「なぜ、体を動かすのか」を考えるショートフィルム的なパズル・アドベンチャーとして作られており、この映像に目を引かれるなら試すべき興味深いゲームだ。
人体は無数のパーツで構成され、それぞれのパーツで小人が働き、動かしている。
その小人の中でも偉そうな人物がエレベーターで向かう先は……。
人体の司令塔、脳。
ここにはナイスミドルなオジサマ指令と秘書がいて、内線電話で体の各部位に指令を出しているのだ。
脳から連絡がいくと、眼の作業員たちが作業をはじめ、目の機能を動かし始める。
プレイヤーが目の膜を開き、レンズのピントを合わせると、脳が光を認識する。
ゲーム内の人体は機械表現で置き換えられているが、それぞれの装置は現実の人体機構の特徴をとらえており(そもそも人間の体の構造が生体部品の機械だし)、その動きを見ているだけで面白い。
なお、眼の操作はプレイヤーが装置を見て、機能を推測して動かすようになっている。なので、ジャンルとしてはパズルゲーム……になるのだろうか。
ともあれ、目の次に脳が起こしたのは鼻だ。
汚れを取り除く装置を起動し、黄色い物体だけをフィルターする機構を動かし……。
黄色い粒子は分析ラボに。
黄色い物体をプレイヤーが解析すると、機械にコーヒーが映し出される。これはコーヒーの匂い粒子だったのだ!
今、プレイヤーが必死に動かしている人物は目を開けて起きたばかり。モーニングコーヒーを飲もうとしているに違いない。
その後、完全に目覚めた人物からの指示が連続で送られてくる。
最初はもう、「食べ物がきたから口を動かして!」とか「とにかく腕を動かしてくれ!」とか、そんな指示が脳から送られ、ひたすらに体を動かし続けることになる。
▲おしっこ排泄装置、オン!
機械的な体の表現に驚き、ひたすらに動かしていると、次は脳にいる司令官のオジサマがその結果を受けて反応するのが楽しくなってくる。
音楽を聴いたら、脳にいる司令部のオジサマが天国へ行くほど気持ちよくなってしまったりもする。
ただ、この部分は主に英語で行われる(簡単ではあるが)ため、完全に楽しむならちょっとだけ英語を読む覚悟はいる。
プレイヤーは体の動かし方に習熟していき、だんだんと余裕が出てくると、今度は前後に動かしていた体の部位、体の中に入ってくる物体や映像の断片的な情報から、体の持ち主が何をしているのかわかってくる。
人間という複雑な機械を必死に動かしたその先に何があり、必死に体を動かし続けてきた先に何があるのか……動かす面白さから物語を感じる面白さに変化していく流れの切り替えが絶妙で、最後はショートフィルムを見ているように楽しむことはできた。
ゲーム体験がそのままストーリーにつながる、ゲーム的で良い物語である。
プレイ時間は2時間程度だが充実しており、あとはもうコンセプトを楽しめるかどうか。
PCがあれば公式ページで第1章だけを遊ぶことができるので、まずは試してみて欲しい。Homo Machina体験版
体験版を遊んで、人体機構表現の面白さを感じられたら、このゲームはあなたにとって遊ぶ価値のあるゲームなのは保証できる。ぜひ、最後まで遊んでみて欲しい。
評価:6(面白い)
おすすめポイント
人体機械を見て動かす面白さ
人体を動かした先の物語を妄想するのが楽しい
気になるポイント
終盤の映像パズルが解きづらい
アプリリンク:
開発:ARTE Experience(イタリア)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: