コンボも超反応も必要ないのに、熱い駆け引きが楽しめる格闘ゲームが『にゃんこ大戦争』のポノスから登場した。
「平日は毎日1万円、土日は5万円の賞金付き大会が開催される」という“ワンチャンある系”対戦ゲーム『ファイトクラブ』である。
正直、最初は「ああ、課金者で賞金を争うゲームが出るのだなぁ……」とあきらめきった目で見ていたがいざリリースされてみると大会はプレイヤースキルが全てで順位が決まるし、ゲームもファミコンの『アーバンチャンピオン』を現代風にうまくアレンジした内容で、思った以上によくできていたのだ。
さて、まずは本作の説明をしていこう。
日本で主流のゲームと一線を画したデザインのキャラクターたちが、1対1で戦う対戦格闘ゲームである。
最初はデザインのクセに違和感を感じるが、慣れると良くなってくるから不思議だ。
▲日本より海外に強く、世界で売ることを前提に作るポノスならではのデザインと言えよう。
ゲームを通じて様々な衣服や武器などの装備を獲得すると、このキャラクターの着せ替えも可能だ。
装備にはレベルやレアリティが存在し、プレイにかなり影響を及ぼす。
しかしながら、それは本命の賞金付き大会には影響を及ぼさない。
毎日の賞金付き大会では全プレイヤー同じ能力の“レンタル装備”を利用して遊ぶので、完全に公平なのだ。極稀なイベントならいざしらず、毎日のイベントで対戦が公平な点は非常に評価できる。
最近ではスマホ版の『フォートナイト』や『Vainglory』のように競技が楽しいゲームでは課金額が対戦成績の差に影響しないゲームも増えている。
日本の法律をクリアする方策とも言えるが、『ファイトクラブ』もその過渡期にあるゲームと捉えることもできる。
▲毎日のイベントで皆レンタル装備使用。一応、課金がものを言うSP大会という毎日イベントも有るが。
また、賞金付き大会をデイリーで開催する試みや、商品付きの大会をプレイヤーが開催できる仕組み、スポンサー付きで開会を開催できる試みなど、大会の仕組みが整っているのもまた面白い。
▲自分だけの大会がセッティング可能。ルール設定や時間設定などができないのでアプデに期待。
で、肝心の対戦システムはというと、ゆっくりとした攻撃を繰り返して相手を画面端に追い詰める格闘ゲーム(現代風にアレンジした『アーバンチャンピオン』で通じるならそれで終わりだ)になっており、これまた面白い。
本作は敵のライフをゼロにするか(電流ゾーンまでぶつけなければダメージはない)、時間切れ時に敵をより壁に近い場所まで押し込まんでいると勝利となる対戦ゲームとなっている。
▲攻撃は吹き飛ばしのみで、電流ゾーンに敵を吹き飛ばさなければダメージゼロ。
移動操作には十字キーなど使用せず、画面に触れなければキャラクターは敵に向かってゆっくり前進する。後ろスワイプでバックステップ、画面左右同時押しで前ステップ(無敵時間あり)があるだけ。
攻撃に関しては吹き飛ばし威力の強い上段攻撃と、出が早い下段攻撃、ガード不能だが出が遅いチャージ攻撃の3種類。
上段と下段の攻撃は画面左上と左下、ガード操作は画面の右上と右下のシンプル操作である。
▲ボタンはでかいが、操作性は改善の余地あり。
必殺技はないが、バトルを通じて貯まる“バーストゲージ”を消費し、敵をふっとばしつつ自キャラクターを強化する“バースト”が利用できる。
これは壁際に追い込まれたときに逆転の一手となる緊急脱出技だ。
基本はこれだけで、操作もシンプルなのに、プレイしてみると全くカジュアル系対戦ゲームではない。むしろ、カジュアルの皮を被ったマニアゲーである。
本作のゲームスピードは遅めで、敵の攻撃を見てから反応が余裕で間に合う。しかし、操作してから行動に移るまでに時間がかかる上に隙が大きく、選択をミスすると取り返しがつかない事が多い。
例えば、「敵が上段攻撃するのが見えているのに、少し前に下段ガードをしてしまった隙でガードが間に合わず攻撃が見えているのにふっとばされる」ような展開が頻繁に発生する。
スローなのに、精神的プレッシャーから余計な行動をして攻撃を受ける(もしくは当てる)体験は新鮮だ。
また、武器のリーチ差をカバーするための上級テクニックも用意されており、吹っ飛ばされた瞬間にガードを入力するとノーダメージで壁に着地する“壁蹴り”、ガードの直前に攻撃するとカウンター発生、ステップの無敵時間で敵の攻撃を抜けるなどの上級テクニックもでてきて、これを知ると単純な中に駆け引きが生まれて面白さが出てくる。
ファイトクラブ、前進の無敵長いのですり抜けは結構容易です。長い武器はタイミング見切りやすいので餌食。
— ゲームキャスト (@gamecast_blog) 2018年4月10日
数回やればなれますよ。動画でどうぞ。
なお、この後LL武器のリーチ差を生かして勝ちました(台無しの一言 pic.twitter.com/OgdWVB209p
が、このシステムと作り込みは分かりづらさも生んでいる。
行動のスローさと隙の大きさは、「動作の反応が遅い」とか「操作しているのに反応しなくて勝てない」ようなプレイ感を生む(ステップ時に他の操作が暴発する事があるのも良くない)。
さらに、上級テクニックを知らないとシンプルすぎて、対戦要素が「じゃんけんゲームのような単調な駆け引き」にも見えてしまう。
これが操作は簡単なのに序盤を続ける敷居は高い、残念な状況を生み出している。
▲長い武器は遠距離でも当たる。テクニックがないうちはリーチが最強の武器。バランス系はまだ調整の余地アリに見える。
実際、上級テクニックを身に着ける前から対人戦に駆り出されるため、初期は私も長い武器を装備して殴るだけの試合を繰り返し「リーチと偶然の読み合いに負けた」感をあじわっていた。
しかしながら、「レビューするからには隅々まで見よう」と試行錯誤しているうちに上級テクニックの存在に気づき、ゲームが面白くなってきた。
本作はシンプルだが、決して手抜きではない。
ただ、その面白さはマニア向けで、ゲーム内に適切なガイドもないので「カジュアルな見た目と操作性、説明不足の上でマニアックな駆け引きを要求される」ちぐはぐなものになっている。
私は好きだが、このままで流行ることはまずないだろう(ゲームエンジンを他者にライセンスする仕組みを持っているので、どこかが魔改造すればワンチャンあるかもしれないが)。
しかし、この記事を読んだ皆さんはすでに上級テクニックの存在を知っている。だから、本作を楽しむこともできるはずだ。
現状はバランスに難があるし、スローな展開に好みも激しく分かれると思うが、スローな格闘ゲーム-オンライン対戦を備えた現代風『アーバンチャンピオン』と言い換えてもいい-の可能性を本作は見せており、大会に関する新しい挑戦も買える。
駆け引きとテクニックで決まる対戦アクションゲームを探しているなら、試す価値はあるだろう。
評価:6(面白い)
おすすめポイント
シンプルながら奥深いプレイの片鱗
重要な大会は全員公平に競える(しかも毎日)
大会機能やリプレイ機能が充実
気になるポイント
ステップの操作が暴発しがち
かなり慣れないと長い武器を振り回すゲーになる
練習機能やガイドは不十分
テンポが遅すぎて合わない人は多そう
接近武器にリスクに見合うリターンがない
アプリリンク:FIGHT CLUB (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発:ポノス(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:宝箱開封、装備購入など。賞金付き大会に影響なし
公式ページ:https://www.fightclub.fun/
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: