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スマホ版で完成した良作RPG『モンスターハンターストーリーズ』レビュー。広く豊かな世界を探索する楽しさを君に

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ある種のゲームは、美しくなるだけでぐっと魅力が上がる。
『モンスターハンター』(以下、モンハン)シリーズのスピンオフRPG『モンスターハンターストーリーズ』は良作RPGと言われていたが、スマホに移植してグラフィックを高解像度対応にしたことで、さらに面白くなっている。
本作は2016年10月8日に3DSでリリースされた作品を移植したものだが、同じ作品なのに間違いなくスマホ版の方が面白いのだ。

本作は『モンハン』のファン層拡大を狙って低年齢層向けにつくられたRPGで、モンスターと絆を結んで一緒に戦う“ライダー”を主人公とした物語となっている。この変更には若干の不安があったが、実際にプレイしてみるとこのゲームも確かに『モンハン』で、プレイ前の心配は余計なお世話だった。
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お供のモンスター(オトモン)と戦うか、人間が戦うかの差はあれど、ゲームを始めると底に広がっていたのは間違いなくモンスターハンターの世界だったのだ。
広いマップがあって、水場ではモンスターたちが憩い、丘からはイャンクックが獲物を狙っている(実際にモンスターが衝突すると勝手に争い始める)。そんな大自然の中を探索できる。
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もちろん、モンスターの特性もゲームで再現されてる。襲ってこないモンスター、好戦的なモンスター、独特の出現方法を見せるものまで、本家の空気を再現しようと最大限に頑張っている。
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連れているオトモンの種類に応じて水面を泳いで渡ったり、岩を破壊して進んだりとモンスターの能力を活用した仕掛けもある。
特定のモンスターだけがいける場所は人間に荒らされていないので、素材アイテムがたくさん手に入るのも嬉しい。
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▲オトモンは5体まで選んで連れ歩けるので、オトモンを変えて何度も行き来してマップを探索する必要はない。

で、この探索をさらに楽しくしてくれるのが“モンスターの巣”の存在。
フィールド上にはランダムにモンスターの巣が配置され、これを見つけるとモンスターの卵を盗み出すことができる。
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▲強力なモンスターの卵は、親モンスターが守っていることが多い。見つかる前に逃げ去るドキドキ感も。

持ち帰った卵は孵化させて、以後はオトモンとして連れ歩ける。
普通にモンスターをコレクションしていくのも楽しいし、レアな亜種モンスター(突然変異の希少種。ゲーム内ではちょっと強い)をそろえて乗るのも楽しい。
また、お気に入りのモンスターが手に入ったら“伝承の儀”で他のモンスターと合成(技を教えてもらうイメージ)して、特別に強化することも可能だ。
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平原、ジャングル、火山に砂漠……さまざまな場所があり、さまざまなモンスターがいる。そこを探索して卵を集め、モンスターを育成しているだけで楽しい観光&収集RPGとなっている。
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原作に当たる3DS版は解像度が低く、この世界の魅力を表現しきれていなかったが、高解像度で描かれるスマホ版のフィールドはこの作品を圧倒的に魅力的なものにしている。
本作のメイン要素はフィールド探索と育成にあることもあり、「スマホ版が完成形である」と言えるほどの改良点になっている。
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▲スマホ版にはコラボコンテンツやAmiibo連動機能がないが、それでもこのグラフィックは魅力。

さて、このマップで敵にぶつかるとターン制のバトルに移行する。
バトルでは強力だがAIで動き制御できないオトモンを、力では劣るが自由に指示を出せる主人公が補助する形となっている。
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プレイヤーにはパワー、スピード、テクニックの3種類の攻撃が用意されており、これらにはじゃんけんのように3すくみの強弱関係がある。
相手の行動を読んで有利な攻撃をすることで“絆”を上げてオトモンとの合体攻撃を放ったり、特殊攻撃を使ってアドバンテージを取るのが基本になっている。
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▲バトルには3倍速が用意されており、テンポは良い。

これはランダム性の高いシステムだが、本作では良く機能している。ほとんどのモンスターには行動パターンがあり、プレイヤーがそれを読めれば勝率は上がる。
もちろん、多少の揺らぎはあって外れることはあるし、オトモンのAIが勝手に負けることもある。しかし、「ランダムで負けることも計算に入れて、リスクヘッジするバトル」として絶妙にバランスがとられており、本作をプレイしている間、最後まで苦戦し、ギリギリで勝つ展開が続いた。
この調整は職人芸と言うほかない。
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バトルがギリギリだからモンスターを強化するモチベーションも湧くし、強化するためにフィールドを探索するのも楽しいし、この点において『モンスターハンターストーリーズ』は素晴らしい内容になっている。
気になる点は、ナビキャラクターの“ナビルー”によって主導されるストーリーだ。本作では主人公=プレイヤーを堅く守っており、主人公は一切しゃべらない。
代わりにお調子者のアイルー、ナビルーがしゃべってストーリーを主導するのだが……彼が全てを代弁しすぎて、主人公が操り人形のようになってしまっている。ストレートで分かりやすい物語は良しとしても、これだけはどうにも気になった。
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▲せめて、重要な決断はナビルーを介さずに主人公が直接返事して欲しかった。

とは言え、本来の面白さがフィールド探索と育成にあるので、この欠点は見過ごせる。
高解像度で見やすく、美しくなったフィールドを探索するのは楽しいし、おまけのプーギー探しから特定モンスターの装備を集める作業まで、その気になれば50時間以上は遊べることだろう(クリアまではその半分だ)。
基本無料だらけのスマホで、これだけ隅々まで気を配って作られたJRPGは貴重……という言い訳は抜きにして、本作は良くできている。
まずは気になる方は体験版の『旅立ちの章』を起動してみて欲しい。開始20分あたりから、広くて美しいマップを探索する楽しさに夢中になるはずだ。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
鮮やかで変化に富んだモンスターの世界
モンスター収集と育成が楽しい
絶妙なバランスのバトル

気になるポイント
ネット対戦は相手がいない
ナビルーが出しゃばりすぎるストーリー
ときどきミッションを受けた相手を忘れる

アプリDL:
モンスターハンター ストーリーズ (itunes 1,900円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
体験版 ~旅立ちの章~ (itunes 体験無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:カプコン(日本)
レビュー時バージョン:1.0.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: