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『世界は心に満ちている。』レビュー。底辺オッサンと心を失った少女の物語

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風景から心を感じる少女にスマートフォンのカメラで撮った写真を送り、心を取り戻す変わったノベルが登場した。
『世界は心に満ちている』だ。
少女は写真から心を読み取る力を持っており、プレイヤーが送った写真を見て心を取り戻し、物語が進行していく。
つまり、写真を送ると進行するノベルゲームなのだが……いざ最後までプレイしてみると、少しずつ印象が代わり最後には写真を送らないと成立しないゲームであることがわかった。
本作は、プレイヤーの生活とゲーム進行が1つになって初めて完成する作品である。

プレイヤーの生活とゲーム進行が1つになって初めて完成する……その意味は、実際にプレイ風景をレポートして見てもらうのが最も理解できると思う。
少し前、私はやさぐれていて何か癒やしが欲しかった。
そんなときに出会ったのがこの『世界は心に満ちている。』で、有料ゲームランキングに一風変わったゲームがあったので、アイコン買いした。
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ゲームを起動するとそこには少女がいて、ちょっとした会話をすることができた。
少女は誰もいない城に1人で住んでおり、あまりに長い時間1人でいるから心を忘れてしまったという。
ならば私が心を取り戻してやろうじゃないか!
ミステリアス可愛いキャラクターが私のストライクゾーンなので、やさぐれていたくせに結構やる気になったのを覚えている。
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彼女には写真から感情を読み取ることができ、写真を送ることで再び感情を取り戻せる。
私は毎日5回というルールで写真を送り、少女の感情をよみがえらせることにした。
インターネットで手に入れた画像などは読み込めないため、まずは目の前にあるドリンクバーを送ってみた。彼女の世界にドリンクバーはないので、珍しいはずだ。
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すると、彼女が話すセリフが変わった。無感情気味だったが、少し願望みたいなものが芽生えたようだ。
こういう細かく成長がわかるテキスト演出、とても良い。
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ついでにコーヒーも、パチリ。まったくインスタ映えしなさそうな一品。
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だが、これを送ると今度は書庫に新しい本が出現して、短編小説を読めるようになった。
ほんの2分で読み終わる分量だが、寂しい音楽とともに語られるので結構切ない。
内容としても心をモチーフにした寓話が多く、考えさせられることもある。もしや、これは結構良いアプリなのでは…!?
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▲イラストも素敵。

そんな感じで楽しく始まった少女との生活だったが、すぐに倦怠期がやってきた。
なぜか"恐”と"望”しか成長を見せず、少女が感情を取り戻さない。もしかして、オタクの送る写真だから情操教育に悪いのか。
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焦って説明書を読むと、倦怠期の原因は私にあることがわかった。
少女は写真の色を元に感情を育てていく。ところが、私の送った写真には決まった色しかない。
なんせ、最初に書いたとおり「やさぐれていた」時期だったので、昼起きれなくて、深夜に起きてファミレスで『ゼルダの伝説BoW』をプレイするだけの生活を送っていたのだ……。
一応、ジョナサンにするか、サイゼリアにするかのバリエーションはあったが、全部茶色。
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たまに夜景も撮って送っていたが、暗い写真は感情を育てない。
つまり、社会不適合者はアプリ上でも人間を育てることができない!この事実に、私は愕然としてしまった。
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▲この風景からは感情が育たないようだ。

少女の心を育てるのは私の責任だ。つまり、生活パターンを変えなければならない。
タイトル画面にあるとおり、世界は心に満ちている。光のある世界に行く必要がある。
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ということで、深夜のコンビニで色を補給した。
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サークルKサンクスは赤い“怒”の感情を、ファミマは青で“驚”と“悲”の感情を。
そして鳥貴族の黄色で少女は喜びの感情を取り戻した。
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どうしても赤紫が補充できなかったので、そこはパスポートで解決した。いや、ほんとこんなもんで感情を取り戻してもらって申し訳ない。
一応『Vainglory』のゲストとしてUSに行ったときのパスポートなので、その思い出を感情として読んだと思いたい。
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夜の町にもまれて感情を取り戻す少女。
そして始まる物語。心に関する寓話は、夜のコンビニを撮る私にはまぶしくて少し堪えた。
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App Storeの説明文を見ると、美しい風景で心を取り戻し、少女とともに繊細な世界を楽しんで欲しいという作者の意図が感じられる。
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少女を底辺なオッサンの生活に付き合わせて、申し訳ない。いや、ほんと申し訳ない。
が、こんな生活でもこのゲームは楽しめた。

少女のメインストーリー、短編物語やサイドストーリーを読んだ後の少女の反応、すべてが一貫して心をテーマにした優しい話は心にきっちり刺さった。
コンビニの写真を送ったときの状況、夜のファミレスを送ったときの心持ち、それら全てが物語に重なっていき、普段以上に物語に感情移入してしまった。そして、終わったときは少し切なかった。
本作は、少し疲れている方、悩みのある方などに特に刺さるのではないだろうか。いや、自分に刺さったから行っているだけだが。
ともかくも、そんな作品なのである。

なお、本作はPCの前で画像検索して、それを写真に撮りまくればすぐ終わってしまう。
そんなプレイだけはしてはいけない。
『世界は心に満ちている。』は、日々の生活で写真を撮り、そのときの感情をベースに物語を読むことで完成する。少女に写真を送るとき、プレイヤーもまた写真から感じる感情について必然的に考える。
心に関する寓話は、その感情を元に深く解釈される。だから、自分が心動かされる風景を写真に撮ってプレイして欲しい。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
心をテーマにした物語
静かな音楽とミステリアスな少女との生活

気になるポイント 
システマチックに遊んではいけない

アプリDL:
世界は心に満ちている。 (itunes 120円 )

開発:Yuki Wada(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ