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奇妙で、理解不能で、愛しいパズル『Million Onion Hotel』レビュー

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PSのカルト作『moon』を手がけたディレクターの木村さんと、アートの倉島さんのタッグが放つ新作『Million Onion Hotel』は、珍妙なポエム味と面白いゲームが見事に融合した作品である。
正直に言えば、Onione Gamesの前作『勇者山田くん』はメインストーリーが受け付けなかった。だが、完全にパブリッシャーの手から解き放れたという今作は素晴らしかった。
私には理解不能で、奇妙で、それでいて目が離せないアート。そこにゲームとしても光るものを練り込まれている。
皆さん、ぜひこの珍味を食して欲しい。


『Million Onion Hotel』は、ビンゴゲームに似たパズルアクションだ。
プレイを開始すると、5×5のマスにランダムにオニオンが登場する。
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このオニオンをタッチして取り除くとマスが赤くなり、縦横斜めのいずれかに赤いマスを揃えると赤いマスが消えてLVが上昇し、時計アイテムが登場する。
この時計アイテムをとると残りプレイ時間が伸びる。これをとり続けて、最終ステージまで生き延びればゲームクリアとなる。
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ただし、実際には1列ずつ消して行くと時間が足りなくなるので、2列同時に消す“ダブル”以上の役を狙っていかないといけない。
と、ここまでは「クリアにはテクニックが必要になりますよ」という話なのだが……ダブル以上の役で出現する“ベル”を取得するとゲームが急にぶっ壊れ始める。
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ベルをとった瞬間に鳴き声して牛が練り歩き始め、宇宙をバックにハイテンションなBGMが鳴り響く。
フィーバー中はオニオンやボーナスアイテムが大量に出るので次々に列が揃ってタイムがぐんぐん伸びる。
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そして、役が成立する以上にプレイヤーに与える高揚感が素晴らしい。
フィーバー中にさらにベルをとると彗星が降り注ぎ、画面上では結婚式が始まったかと思うと男女が裸になり……次々と変なキャラクターが登場する。
演出の意味はわからない。そもそもこれがなくてもゲームとしては成立する。でも、この演出の中で遊ぶことが楽しい。
最終的にこの演出の中で遊ぶことがゲームを遊ぶ意味になってくるほど。
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▲この画面、意味がわからない。でも楽しい。

そうして役を作ってLVを上げていくと、10LVごとに“オニオンタイム”という寸劇が展開される。
これがまた意味不明だが、先が見たくなる。
毎回「この後、何か起こるよね!」といういい引きを見せつつ、次の瞬間にプレイヤーが予想もつかない展開を見せるので、エンディングまで必死にゲームしてしまうこと請け合いだ。
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ただし、エンディングの前には何匹かのボスが待ち構えている。一定のLVに達すると(プレイヤーが上手いともっと出る)奇妙なボスキャラクターが登場し、プレイヤーの行く手を阻むのだ。
ボスは画面上のHPゲージを0にするまでタイムに直接ダメージを与えてくる。1回攻撃されるたびに1分程度のタイムが減るので、ボス登場までにはフィーバータイムで時間を貯める攻略が必要になってくる。
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▲画面下の槍タマネギをタッチするとボスを攻撃できるが、青いバリアに包まれているとき(右図)は無敵なので注意。

ゲームサイクルはできていて、オニオンタイムが見たい→ボスが邪魔する→上達しないと→もっと強いボスがきた!という流れでプレイできて、やり応えは十分。
基本ルールはビンゴのように列をそろえるだけだが、制限時間がつくと意外なほどに大変だ。
奇妙で突拍子もない演出が次々に繰り出され、最初のエンディングまでの3時間程度ずっと夢中になって遊べる豪華パズルアクションとなっている。
クリア後は図鑑を集めるコレクション要素があるし、コレクションの獲得条件を満たすためにゲーム技術が上昇する作りにもなっており、図鑑を埋めるうちにゲームがより深く楽しく遊べるようにもなる。
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▲コレクションを獲得する条件にはテクニカルなものもあり、こなすとスコアがどんどあがって行く

ただ、本作にはハードルがあることも事実だ。
本作のルールは初心者でも成果を出せるスマホカジュアルゲームの文法にはのっとっておらず、プレイヤーが遊んで、しっかりかみ砕いて初めて面白くなる。
私自身も最初に触った感想は「ん?」という微妙な感じだった(もちろん、あとからどんどん楽しくなった)。
また、敵キャラクターの対処方法は図鑑を見ると推測できる作りになっているが、スマホゲームというよりもゲーム機向けなつくりがスマホで受け入れられるか不安はある。

あなたがゲーム機でも遊ぶプレイヤーなら一切問題ないが、何も考えずにプレイすると「いまいち」という評価に繋がりかねない点だけは心配ではある。

もう1つ、作者自身も「珍味」と言ってしまう世界観や演出だが……私は、ここに面白さの普遍性を感じている。フィーバーの演出は確かに個性的だが、このテンションの高さは意味が不明でも気持ちが高揚してくる。
ドット絵とともに期待感をあおり、見事に外すオニオンタイムは先が気になって辞められない週刊少年漫画のような引きがある。
もちろん、雰囲気として合う・合わないはあるが、どんなゲームにでもそれはある。本作は他にない味という意味では珍味だが、それは多くの人に愛される珍味であり、唯一無二の個性を放っているだけ。このゲームの間口は、かなり広い。
動画を見て演出が気になるなら、あなたはオニオンタイム見たさにこのゲームを楽しめるはずだ。
ぜひ、この奇妙で理解不能で愛しいパズルゲームを手に取ってみてほしい。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
予想を裏切り続けるオニオンタイム
連続でフィーバーするとテンションが上がる
実はスコアアタックが深い

気になるポイント 
説明不足を感じる
1プレイが長い。連続プレイ時に演出を飛ばしたくなる(予告演出も含めて)

アプリDL:
Million Onion Hotel (itunes 480円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:Onion Games(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: