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風に舞いながら世界を見る詩的アドベンチャー『Flower(Flowery)』レビュー。言葉もなくメッセージを伝える詩的ゲーム

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花びらとなって風に舞い、花を咲かせながら草原を駆けるアートアドベンチャー『Flower(邦題:Flowery)』がiOSにやってきた。
本作はゲームオーバーも時間制限もなく、世界の美しさを堪能できる癒やし系ゲームとして話題になり、2013年にはスミソニアン博物館が永久所蔵品にも決定した折り紙付きの芸術品である。
2時間ほどのプレイで美しい自然に触れ、言葉もなしに物語を伝えるゲームは、雰囲気ゲームが好きなら必携を言って良いほど。スマホでもこれだけの表現が許される時代になったと思うと、感慨深い。

本作はストレスの多い現実世界と、穏やかで平和な夢の内部世界との対立を抽象的に、空想世界の旅として描いたゲームだ。
この世界におけるプレイヤーの姿は花びら。ゲーム開始とともに風に吹かれて舞う花びらがプレイヤーである。
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操作としては画面をタッチで加速し、iOS端末を傾けて移動方向を変化するのみ。最初にこの説明があるだけで、その後に言語による説明はない。あとはプレイヤーの感じるままに遊べばいい。
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▲傾きセンサーを使ったゲームは操作しづらいことが多いが、『Flower』は激しい操作がないため終盤のごく一部をのぞいて問題を感じない。傾け操作が苦手な方でも安心して買える。

最初にやることは、草原にある花のつぼみに触れること。つぼみに触れると澄んだ音ともに花が咲き、1枚の花びらが合流する。
花咲く様子が視覚的に美しいだけでなく、効果音と音楽が一体化しており、えもしれぬ心地よさがある。
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そうして花びらの枚数が増えてから踊るように疾走するだけで、このゲームは魅力的だ。
現実を忘れてこの世界から離れたくなくなるほどの気持ちよさがある。
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そうして飛び回り、特定の花を咲かせるとイベントが発生してゲームが進行する。その様子もまた美しい。
例えば、下図のように枯れ草の注進にある花を咲かせると……。
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枯れていた草が命を吹き返し、青い草原が蘇る。
新たな花を咲かせるたび、生命の脈動を感じるイベントの数々を楽しめることだろう。
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適当にあちこち見て、花を咲かせて、イベントを見る。そしていつの間にか全ての花を咲かせるとゴールが出現し、その中に身を投じることで次のステージへいける。
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もちろん、ステージが進めば異なる風景とイベントが待っており、また違った感動を受ける。
テクニックはいらないし、あまり考える必要もない。ただ進んで、ただ見ることが楽しい。
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本作については制作者が「ポエムのようなゲーム」と語っており、実際に2時間ほどの抽象映画を見たかのようなプレイ感だった。
ただ、何かテーマ性を持った美しい風景が自分自身を注進に動いている満足感が常にあった。
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風車の中に立つときも、夕日が沈む草原を見るときもどこを切り取っても素晴らしい。そして、その風景の中を自由自在に動き回れる満足感。
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そうして夜になると、風景にまた感動しながらも何かの寂しさを感じ……一連の風景の移り変わりがプレイヤーの心を揺さぶる作りになっていた。
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時間制限もライフもなく、自由に遊べるという触れ込みの『Flower』だが、ゲームの風景はそこに終わりが来ることを告げるのだ。
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この世界を離れたくない。しかし、終わりはくる。そういった感情を見透かすように風景は変化し、ゲームはエンディングを迎えた。
終わったあとで気持ちよく現実に戻ることができ、非常に満足感もプレイ後感も良い。雰囲気を味わうゲームを好むプレイヤーなら、まず間違いなく満足することだろう。
「ゲームで爽快にかっ飛ばしたい」とか「長く暇を潰したい」というプレイヤーには向かないが、そうでなければおすすめ。特に忙しい大人に(2時間で終わる!)遊んで欲しい味わい深い1作である。

なお、本作に関してはスマホで遊ぶと指で風景が少し隠れてしまうため、遊ぶならApple TVかプレイステーションをおすすめしたい。もちろん、それらの環境がなければiPhoneなどでも問題ない。スマホで遊んでも十分に魅力的なので、買って間違いはない。評価はスマホを前提にしても8(かなり面白い)だ。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
テーマ性を持つ美しい世界
プレイヤーの行動とリンクした音楽

気になるポイント
終盤に操作しづらいときがある

アプリDL:
Flower (itunes 600円 iPhone/iPad対応)

開発:Annapurna Interactive/thatgamecopany(US)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: