最高の発見を何度も体験するパズル『The Witness』レビュー。美しき孤島で見るものとは?
パズルは発見の連続だ。
そして、パズルで最も気持ちよい瞬間が発見した瞬間とするなら、『The Witness』以上にその瞬間を提供するゲームはないだろう。
『The Witness』は、3Dの美しい孤島を自由に歩きながら、島にちりばめられた“一筆書きパズル”を解き続けるパズルゲームである。
一見、美しい風景とパズルがセットになっただけの“雰囲気ゲー”に見えるが、深くプレイするほどに孤島を歩き回ることとパズルが一体化し、プレイヤーに過去にない体験と発見の経験をもたらすのだ。
パズルゲームが好きであれば、絶対にプレイすべき作品の1つである。
『The Witness』は、自由に歩ける箱庭の中に一筆書きパズルのボードをちりばめたオープンワールドパズルゲームだ。
たとえば、下の画面のようなトンネルを歩いていると目の前に正方形のボードが出てくる。
このボードに近づき、円形のポイントを起点にゴールまで一筆書きでなぞると……。
ドアが開いて先に進む道が開いた。
パズルを解くたびに何かしらのイベントが発生し、行ける場所が広がる。
そして扉を出た先に待つものは、幻想的なタッチで描かれる風景。
チュートリアルのトンネルを抜けた後は、その風景に圧倒されることは間違いない。3Dなのにどこか水彩画のようなタッチは感動的ですらある。
▲スマホ版はPC版よりグラフィック品質が落ちるが、iPhoneの小さな画面なら十分楽しめる。iPadでも見られる品質となっている。
そして、周囲を見渡すとまたパネルがあり、パズルを解くとイベントが発生する。
パズルは少しずつ難しくなり、プレイヤーもそれにあわせて成長する。
『The Witness』では島全体が11のエリアに区切られており、それぞれのエリアに一筆書きを基本として異なるルールを加えたパズルがちりばめられている。
通常、初めてのルールは特別に説明されるが、本作では最初のチュートリアルを除いてゲームルールを言葉で説明することはない。すべてプレイヤーが気づかなければならないのだ。
しかし、『The Witness』のパズルはちょっとしたひらめきで新ルールが把握できるように作られているだけでなく、言葉による説明がなくともプレイヤーの心に入ってくる。これはなかなかの神業だ。
さらに、本作では1エリアに正反対のルールを持つ2種類のパズルが配置されており、ルールに気づけないときの保険と、爽快感の演出の2段構えの役割を果たしている。
正反対のルールを持つ1方のルールに気づけば、もう1方のルールも自ずとわかる。さらに、片方をクリアした後にもう片方をクリアすると(難易度と解放の考えが似ているので)パズルを一気に解く爽快感も味わえる。絶妙の作りである。
パズルの難易度が上がっていくなかでも解法が理不尽と感じたパズルは一度もなかった。
いくつかのパズルは解法がわからずにネットを調べたことをここに白状するが、回答を見てでてきたのは「無理」のに文字ではなく、「なぜ、気づけなかったんだ!」という思いだけであった。
ややガチでパズルを楽しむ気力があるプレイヤー向けという面はあるが、素晴らしいパズルゲームと言うほかない。
だが、素晴らしいパズルを解くだけならニコリ(※最高峰の品質のパズルを提供する会社)のパズルでも良い。『The Witness』の偉大さは、それらの「最高品質パズル」上に3D空間が融合して深みを増している点にある。
私が最初に気づいた3Dフィールドの利点は、気分転換だった。パズルを解いているときに、どうしても詰まることはある。パズルを解く順番は自由なので、解けそうなパズルを求めて別エリアに移動している間に美しい風景を見ていると煮詰まった頭の疲れが取れていく。
単なるパズルだったらステージセレクトで終わる部分に、癒し効果と時間を置く理由が設定されているのだ。
そして、そういった行動を繰り返している間に3Dフィールドの決定的な意味に気づいてしまう。
3Dフィールドの移動自体が、パズルなのだ。次のパネルを探すとき、特定のパズルのルールを知るとき、単に移動したり風景を見ていたりするようで、プレイヤーは3Dフィールド上でプレイヤーが簡単なパズルを解いているのだ。
たとえば、次に行くべき場所を探すときには電源コードをたどってエネルギー源をたどる。その逆引きは基本的なゲーム構造を把握して結論を出す簡単なパズルでもある。
エリアをまたぐ扉を開くには、そのエリアの一番簡単なパズルを解ける必要がある。これの法則に気づくことも簡単なパズルといえるし、中には順路を作る本物のパズルもある。
島を歩いて観察することがそのまま閃きにつながっており、3Dフィールドでの気づきをパネルの一筆書きパズルに持ち込めるようになっている。
プレイヤーは、遊んでいるうちに島を観察してより多くの情報を引き出せるようになっていくはずだ。
『The Witness』は、最高品質のパネルパズルと、パズルの外にある3D空間の情報を融合し、頭の覚醒を促す最高品質のパズル……その上をいくゲームである。
自分自身、このゲームを遊んでいる間に何度も閃きがあり、本当に自分の頭が良くなって覚醒していくような錯覚に襲われた(実際、良くなっているのかもしれない)。
1,200円という価格は高く見えるかもしれないが、このゲームの品質を考えれば極めて安い。これより素晴らしい一筆書きパズルは、おそらくApp Storeに存在しないからだ。
情報をインプットしすぎないで遊んだほうがより楽しいので、もしここまでで「面白そう」と思ってもらえたなら買って遊んでしまって欲しい。
アプリDL:
The Witness (itunes 1,200円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam)
そして、この先はプレイヤー自身に気づいてほしいネタバレを含む。できれば、ここまでの情報で購入してほしいが……購入を迷うようであれば先まで見てほしい。
3Dの空間とパネルパズルがつながっていることに気づき、風景からより情報を引き出そうとするようになった私は、ある時にもっと別のことに気づいたのだ。
この風景の中、パネルパズルを解き続けた私には、あるものが見えていた。
画面右の光る部分……円からつながる線。これをふとなぞってみると光輝き、パネルパズルになったのだ!
ゲームを熟知するほどに3Dフィールドから得られる情報が増える……それだけでなく、3Dフィールドはパズルそのものだったのである。
そう気づいてしまうと、どんなタイミングでもパズルを探すようになり、『The Witness』はフィールドも含めてすべてがパズルになった。
単なる平面パズルから段階的に3Dフィールドでの発見を増やし、最終的にゲーム内全てがパズルであると知らしめる誘導の巧みさは見事の一言。
単なる一筆書きパズルから、一気に世界が変わるまで(そして発見しても)、このゲームは気づきの連続で、単にパズルゲームに熟達する以上の面白さがあった。
PC版を遊んでいた当時は、現実世界でも丸と線を見ると「あ、これはパズルになる」と考えてしまうほどにはまったものだ。
パズルを根気よく遊ぶ気持ちがなければこの体験は味わえないのだが、ネットで回答を見るのは控えめにしてぜひ遊んでみてほしい。
評価:9(すごく面白い)
おすすめポイント
丁寧に作られたパズル
美しいグラフィックにちりばめられたパズル
何度となく発見がある気づきの面白さ
気になるポイント
コンプリートはすごく大変
丁寧に作られているとはいえ、詰まる時は詰まる
アプリDL:
The Witness (itunes 1,200円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam)
開発:Thekla
レビュー時バージョン:1.1
課金:なし
動画(PC版)