『in:dark - インダーク』レビュー - 青い世界の底をめざし、記憶を取り戻すハードアクション
記憶が混濁した少女が、“なにか”のために海の底まで落ちていく落下アクションが『in:dark - インダーク』だ。
青を基調とした暗い世界、イラストのみで示されるストーリーの提示と、世界観の表現は抜群。
ランダム生成のステージを落ちていくアクションには成長要素も含めて『Downwell』の影響を強く見て取れるが、無防備に落下していく少女を守るアクションを取り入れて独自性も確保している。
ハードなアクションを探しているなら、本作は間違いなく選択肢に入るだろう。
『in:dark』は、ランダム生成のステージを降りていき、底を目指す落下アクションゲームである。
水中には様々な危険が待ち受けている。敵とは適切に戦い、ときにトラップを回避して、必要があれば買い物をして進むこともできる。
しかし、本作はただの『Downwell』フォロワーではない。
主人公の魂である“ソウル”と弱点である体はクサリでつながれた状態で分離しており、プレイヤーが操作できるのはソウルだけ。
ソウルは無敵だ。ドラッグ操作で自由に移動でき、どんな障害物でもすり抜けられるし、炎に触れても、鋭い刃に触れてもダメージを受けない。
無敵なだけではない。ソウルは3つの攻撃方法で敵を破壊することもできる。
1つはスワイプで行う強烈な“タックル”。攻撃力がとても高くて硬い敵でも倒せるが、画面右のブレイズゲージを消費する。
2つめは画面をタップして行う“ブレイズ”。
ゲーム開始前に選択した魂の色(SOUL-COLOR)に応じた特殊攻撃を行い、多くは強力な範囲攻撃となっている。ただし、ブレイズゲージを多く消費する。
最後に敵にただ直接移動して重なる体当たり。威力は最弱だが、体当たりで敵を倒すと“ソウルたべ”が発生し、イブクロが満たされていく。
▲ソウルたべが発生すると、倒したあとに数値が表示される。
イブクロが完全に満たされるとランダムに提示される3つから1つを選んで、特殊能力を獲得できる。
この特殊能力次第で難易度が大きく変わるため、いかに効率よく“ソウルたべ”するかは、ゲーム全体を通じての課題ともなる。
ソウルはチート性能を利用し、敵や障害物を派手に破壊して気持ちよく立ち回れる……のだが、ゲームのクリアは簡単ではない。問題となるのはソウルにつながれている体だ。
ソウルが移動すれば体も引きずられていくが、体は障害物を抜けられない。ソウルはクサリの長さより体から離れられないので、体の位置が悪いとソウルはすぐに動けなくなる。
さらに、体が敵やトラップに触れるとダメージを受けてライフが減ってしまう。体のライフがなくなると、ソウルも消滅してゲームオーバーだ。
ソウルが自由に動いている間にも、体は物理法則に従って落下していく。だから、敵と戦っていたらいつの間にか体がトラップに引っかかってダメージを受けるなんて日常茶飯事。
ソウルは無敵だが、体は無防備。無敵のソウルを使って、いかに体を守るか。そんなディフェンス要素が入ったアクションがこのゲームの特徴である。
実際、これは上手く機能しており、ランダムに生成される地形と敵を、3種類の攻撃方法を使い分けて切り抜けていくプレイはなかなか飽きが来ない。
単に攻撃するだけでなく、タックルを高速移動のために使ったり、静止のためにブレイズ攻撃を使ったりと工夫の余地もある。ランダムに出現するアイテムの順番によって序盤が一気に進めるときもあり、ややローグライクな面白さも味わえた。
“ソウルたべ”でスキルを得てパワーアップしていくのも楽しいし、コンボ(ダメージを受けないで敵を倒し続ける)を稼いでカルマを増やし、買い物することもプレイヤーのテクニックが向上すれば戦術に組み込める。
体をうまく制御するにはかなりの慣れが必要で、ここがゲーム好きでないと乗り越えられないかもしれないが……全体として『Downwell』や『Missileman』の屋台骨にある面白さと同じ種類のものを提供しており、プレイヤーが腕と知識を磨いて遊ぶゲームが好きなら楽しめるだろう。
また、ストイックに寄りすぎない成長システムも一部のプレイヤーには嬉しいはずだ。ゲームオーバーになったとしても、カルマを集めておくとタイトル画面からソウルを成長させられる。
最終的な成長までそこまで遠くないこともあり、そこまで邪魔には感じなかった。むしろ、体とソウルが別々に存在する操作性が独特であるため、慣れるまでモチベーションを保つ仕組みとして機能していた。
加えて言うなら、成長するたびに少女が記憶を取り戻し、水の中に落ちる直前の出来事が一枚絵で示されるストーリー表現も良かった。
最初、少女は記憶が混濁しているという設定でプレイヤーに落ちている理由が一切説明されない。しかし、少しずつ増えていく絵を連続してみることで、ストーリーを類推する楽しみが得られるのだ。
トラップが一部見えづらかったり、特殊能力の効果がわかりづらかったり、そもそも説明において体当たりとタックルの差がわかりづらかったりと、気になる点ははいくつもある。
ただ、これらは致命的ではない欠点であり、今の状態でも十分すぎるほどいいゲームだ。
青暗い色使いの世界と、少女の記憶はプレイヤーの好奇心をかき立てる。
ランダム生成のステージは適度に揺らぎがあり、手応えのあるアクションもそこにある。
難しいが、ゲームが好きならおすすめの1作だ。
評価:7(要チェック)
おすすめポイント
好奇心をかき立てるストーリー演出とイラスト
ランダム性があり、何度もプレイできる仕組み
プレイヤーの上達が反映されるゲーム
気になるポイント
成長に必要なカルマがゲーム内の買い物で消費される(成長のために買い物封印プレイが必要)
一部トラップが判別しづらい(トゲ床+ブロックの重なりなど)
説明がわかりづらい
課金
なし
(バージョン1.0、ゲームキャストトシ)
ダウンロード:in:dark - インダーク (itunes 360円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発:おづみかん(日本)
動画: