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『あめのふるほし』レビュー - 今遊べ、明日は違うゲームになっているから。人生を集約する混沌の実験作

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ひとりぼっち惑星』で一躍有名になったところにょりさんから、恐ろしいほど実験的でワクワクするゲームがリリースされた。
天気連動型ゲームの『あめのふるほし』である。本作は現実の天気と連動しており、雨の日でなければ遊べないという点が注目されたが……遊んでみると、それ以上にカオスな実験的なゲームだった。
本作は時間とともに変化する。今の『あめのふるほし』と、1カ月の『あめのふるほし』は恐らく別物になる。だから、その変化を楽しむために今から遊ぶべきだ。
まったく一般受けしないと思うが、しかし、とても興味深い1作である。

最初に書いた通り、『あめのふるほし』は現実の転機に連動したアプリである。
晴れている日に起動してもゲーム内は“すもっぐ”に包まれていて、何も操作できない。
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▲このスクリーンショットは、位置情報をOFFにして意図的にすもっぐを発生させたもの。雨が降っていても位置情報がOFFだと遊べないので注意。

雨の日にゲームを起動すると、切ない音と共に機械が歩いている様子が表示される。
このとき、プレイヤーの操作はゼロ。環境アプリのように起動しておくのも良い。
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そして、しばらく歩くと他の機械の“ざんがい”と出くわす。
アプリを起動していなくても通知が出るので、単に待つこともできる。ただ、最初の“ざんがい”に出会うまではアプリをつけて世界観を堪能するのがおすすめだ。
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この“ざんがい”は、プレイヤーと同じくあめのふるほしを旅して倒れた機械であり、プレイヤーはその機械が残した“遺言”を吸い出して見ることができる。
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機械たちの遺言はなぜか人間的である。
けんかをして謝ることのないままに別れたことを悔やむ遺言もあれば、単に機械として生きることを考えた哲学の遺言もある。
なかには、他の機械の記録をのぞき見た感想の遺言だってある。
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そして、プレイヤーは機械のもつ遺言のうち、1つだけを記録して持って行ける。
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記録を手に入れたらまた歩き、ざんがいを見つけては遺言を見る。この繰り返しの中でストーリーがうっすらと語られていく。
そのストーリーはいつも通り印象深く、プレイヤーの心打つだろう。
が、これまでの作品と決定的に異なる点がある。
本作のストーリーは過去の作品と比べて短く、明確な終わりを持たずにに続く。そして、続きはプレイヤーに託されるのだ。
遺言を集めているうちに、プレイヤーの機械もだんだんと動きがぎこちなくなり、最後には停止してしまう。
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このときが『あめのふるほし』真のスタート地点だ。
機械が止まったら、プレイヤーは自由に文章を書いて遺言を残せる。
そして、それはゲームの一部となり、これまでプレイヤーが拾い集めた遺言と共に記録されてゲームに登場する“ざんがい”になるのだ。
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これは『ひとりぼっち惑星』の配信システムと似ているが、明確に異なる意図とテーマを持つ。
本作の特徴は、機械の誕生から停止までのサイクルを通じてプレイヤーに人間の営みを体験させ、アウトプットを促すことにある。
人間は生まれてから死ぬまで多くの人生に触れ、何かしらの人生観を抱き、他人に託して死んでいく。親から子でも良いし、先輩から後輩でもいい。そうやって生きていく。
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プレイヤーたちはそれぞれに遺言を拾い、見るべき情報を選択し、最後に自分の遺言を残して“ざんがい”になる。これは、まさに人生の縮図だ。
たくさんのプレイヤーの“ざんがい”に接し、彼らが選び取った遺言と、その結果得た人生観を残す作業を繰り返す。
『あめのふるほし』で機械の人生を覗き見たプレイヤーは全員、『あめのふるほし』のストーリーをつくる語り部になるのだ。そうなるように、『あめのふるほし』のストーリーは最小限のテーマだけを短くプレイヤーに伝えている。
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晴れの日は思考し、雨の日はそれをアウトプットし、超高速で人生のアウトプットを繰り返した結果何が残るのか。
その結果は、まだわからない。今は「ラーメンがおいしかった」とか「掃除が面倒」とか、そういった何ともない感想が多いように感じる。
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順調に雨が降れば、1カ月したころに『あめのふるほし』の遺言はまったく異なる方向に進化し、プレイの感触すら変わるかもしれない。
それが楽しみで、今はプレイを続けている。
本来、このゲームは長く見ていかなければ評価できない。そう言った性質のものである。
ただし、長く見て楽しむためには今から遊ばなければならない。そのため、イレギュラーではあるが、現時点での紹介している。

ゲーム内は刻一刻と変化している。リリース日は定型文しか見なかったが、2回目の雨を経験した今は他のプレイヤーの遺言を多く見るようになった。
この文を見て興味を持った方、もしくは「あとでプレイしよう」などと思っている方は早いうちに体験し、変化を楽しんで欲しいと思う。

ただ、起動前に3つ心しておいて欲しいことがある。
1つ目は、これまでの作品はストーリー単品でも楽しめたが、今回は続きを作らなければあまり楽しめない。人を選ぶ真の実験作になっている。
2つ目に本作では起動したとき最初に広告が出る。かなりプレイの意欲を奪う仕組みだが、そこはちょっと我慢して欲しい。最初の数回は広告が出ないとか、遺言を見た後に出るとか、もう少しソフトな方法を模索して欲しかったように思うが、この点は今後のアップデートに期待したい。
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▲課金で広告は消せるが、第一印象はかなり悪い。

最後に、今回のアプリには起伏がなく“ざんがい”と出会うだけになっているのが個人的に残念である。
実験場として現時点でも面白いのだが、雨の日に散歩して印象的なイベントが発生したり、特殊な地形がいくつか見られるなどの仕組みがあれば多くのプレイヤーに起動を促し、より多くの人生が入り交じるカオスが生まれたように思う。

『あめのふるほし』は、あまりにもストイックで実験作に徹している。
とても興味深いが、さまざまな点で粗いし人を選ぶ。それが残念だ。

評価:6(面白い…というか、興味深い)

おすすめポイント
美しい音楽
興味深い遺言システム

気になるポイント
ゲームが単調すぎ、メッセージを残すことに疲れる
雨が降らないと本当に何もできない
自分の遺言記録が残らない

課金
広告削除(240円~960円、どれを選んでも効果は同じ)

(バージョン1.0.1、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
あめのふるほし (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)