『おじいちゃんの記憶を巡る旅(Oldman's Journey )』レビュー - あなたは、老人の人生を締めくくる旅の同行者になる

ある日、岬の家に1通の手紙が届いた。手紙を受け取った老人は急いで旅立ち、どこかへと向かった……。
『おじいちゃんの記憶を巡る旅（Oldman's Journey）』は、その老人の旅を助け、彼の人生をのぞきながら行く末を見届けるパズルゲーム……いや、どちらかと言えば単館上映系の映画に近いだろうか。
パズルはおまけで、2時間半程度の旅とともに老人の人生を眺める作品となっている。
Apple Design Awardなど数多くの賞を受賞しただけあり、映像だけでなく経験として印象的な旅を見られることだろう。

ゲーム内で老人はプレイヤーがタッチした位置まで移動するので、基本的にはこれを利用して旅を進めていく。
が、多くの場合は目的地までの道がつながっておらず、老人は立ち往生する。

▲道(黄色い線)がつながっていない!

そんなとき、プレイヤーは画面を引っ張って地形を変え、老人が歩く道を作らなければならない。
老人が歩いている道は引っ張れないので、今回はその上にある看板の当たりをグッと下に引っ張って……。
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▲変化前（左）と、変化後（右）。道がつながると交点が“●”で表示される。

この通り、老人は道が交わる場所から先に進めるわけだ。この部分だけ見れば本作のジャンルはパズルと言えるのだが、パズルはとても簡単で、面白さの核は別のところにある。

それは、老人と共に旅する経験である。
ゲームの舞台となる土地自体が印象的に描かれており、景色を見るだけでも楽しめる。老人のスローペースな歩みも、観光と思えばちょうど良い。
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滝の水を指でせき止められたり、教会の鐘を鳴らせたりと、プレイヤーが触れて楽しめる場所もある。
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そしてもう1つの魅力は、老人の思い出に触れる“記憶を巡る旅”だ。
老人は旅の先々で目にしたものから、恋人と過ごした若かりし頃を回想する。
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例えば、仲良くお祭りを見ている男女から……。
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若いころに、同じように祭りに参加した時のことを思い出す。これは、女性との出会いだろうか。
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海を見れば、恋人と共にヨットに乗ったことを思い出す。
想い出はすべて美しいイラストで描かれ、プレイヤーの想像力を刺激する。
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鮮やかな色使いで描かれる青春は、プレイヤーの心すら躍らせる魅力に満ちている。イラストの前後に何が起きたのか、想像せずにはいられない。
そして、旅を続けていると老人が何者であるのかおぼろげにわかり、旅の終着点に決着する。この流れは見事。
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▲人生は良いことだけではない。旅の中でも辛いときは、辛かったことも思い出す。

ただ、本作をプレイしている間、私の心中は複雑であった。
自分が「メールの文字数を400字以内に抑えると、返信率が上がるぜ！」と婚活サイト攻略ゲームをしているときに、この老人はこんな素晴らしい青春を送っていたなんて！
裏を返すと人生を考えてしまうぐらい魅力的に描けているわけなのだが、つらい、あまりにも辛すぎる。
「このままいくと、老いて孤独死を迎えるのかな…」とか想像したことがあるシングルの方にはおすすめできない。
物語が進むにつれて感想は変わっていったが、序盤は血を吐くような気持ちでプレイすることになったのであった。このリア充老人がッ！

と、個人的な想いはこれぐらいにしておいて（長く書いてしまったが）、2時間半程度プレイしてエンディングを見たときの満足感はあった。何と言っても1人分の人生を見たのだから。
ただ、良くも悪くも映画的なものなので、老人の人生を肯定できれば良し、そうでなければ納得しつつも満足度は下がる。
私はと言えば、老人の気持ちはわかるが人生には納得はできなかった。だから、今回は評価は6（面白い）とした。

もちろん、あなたにとって『Oldman's Journey』評価は、単に面白い以上のものになる可能性は大いにある。
合わなかった私だって、価格以上の価値は感じているのだ。360円払って映画を見ると思って（というか、安い！）、ぜひ試して見て欲しい。

評価：6（面白い）

課金について
なし

おすすめポイント