TVCMでおなじみ、『KOF98』のスマホゲームにユーザー訴訟問題発生。特商法違反など複数の違反の疑いも
あの『キングオブファイターズ』の看板を背負ったゲームが、提訴されようとしている。
そのタイトルとは、App Storeのトップセールスでも上位に入るゲーム『THE KING OF FIGHTERS '98UM OL(以下、KOF98UMOL)』だ。
このガチャに確率表記の誤解を招く表現があり、それを指摘したプレイヤーが訴訟を起こそうとしているのだ。
対する相手はOurpalm株式会社。中国ourpalmが提供していたゲームのローカライズを提供している同名のメーカーである。
話しは2016年末にさかのぼる。
この時期KOFの人気キャラクター「クーラ」が出現するガチャキャンペーンが行われており、「出現確率3%」と書かれていた。
しかし、後に訴訟を起こすことになるプレイヤーTomasさんは違和感を感じた。体感として3%もの確率があるように思えなかったのだ。そこで、Tomasさんが運営に問い合わせを送ったところ、驚くべきことが判明した。
その3%というのは、格闘家が出たときに3%の割合で手に入るということだったのだ。
KOF98UMOLのガチャは特殊で、ガチャを10回引くと1回は確定で格闘家が出るが、それ以外のタイミングで格闘家が出ることは非常に少ない(確率は非公開)。
つまり、クーラの出現率はガチャを10回引いて3.x%程度と推測され、通常ガチャ1回に対しては1%を切っていると推測される。
これを知ったTomasさんは、有利誤認を禁止する「景品表示法」違反ではないかと指摘するが、Ourpalm側の回答は「ゲーム中に記載があった」というもの。
通常、すでに終わったイベントに対してイベントページの記述を確認することは難しく、こういった言い合いになるとプレイヤーが泣き寝入りすることも多い。だが、今回は違った。Tomasさんは、事前にそういったスクリーンショットを記録しており、その報告が嘘であると気づいたのだ。
もともと、TomasさんはKOF98UMOLのファンであり、Ourpalm側が謝罪すればそれで話は終わりにしようと思っていたという。だが、この嘘の報告には怒った。
そして、内容証明を送り「一週間以内に返金に応じなければ訴訟を起こす」と伝えたのだ。
ところが、Ourpalm側の返事は「Appleに課金したけど反映されなかったって言って返金してもらえばよい」というものであった(ほんの少しだけ弁護すると返金処理はとても面倒だし、Appleが返金してもOurpalm側からお金が引かれる仕組みなのでOurpalmがお金を返す行為には近い)。
それを拒否して訴状を送ると、次は「秘密保持契約」を結び、訴訟を取り下げることを条件にダイヤ補填することを提案してきた。
だが、一連の流れでTomasさんの意識はすでに変わっていた。
「この裁判は、同じような手で騙されるユーザーの立場を守るための裁判」という位置づけになっており、前例を作ることが目的になっていたのだ。
裁判して、返金されればそれが記録に残り、他のプレイヤーにも伝わる。そのため、提案を断ったのだ。
そのようにやり取りを続ける中で、驚くべきことが判明する。
運営会社の住所に送ったはずの訴状が、あて先不明で戻ってきたのだ。
その住所とは、六本木アークヒルズの森ビル。しかし、森ビルに問い合わせるとOurpalmという会社など入居していないという回答が得られた。
▲2017年2月28日までの特定取引法の表示
さらに、その後に特商法に基づく表示の住所が変わり、代表の表記がなくなっていることも判明する。
訴状が送られてから逃げる手を打ったようにも見えるが、これは通信販売で責任者を明記する特定商取引法に違反している(そもそも、住所の詳細や電話番号なども表示しなければならない)。
あきらめて会社登記から住所を調べ、ようやく訴状は受理された。
▲変更後の住所
ゲームキャストでは、Tomasさんに連絡を取って証拠の一部を拝見させていただいたが、確かにOurpalmサイドの打った手は企業として考えられない行動に見えた。
一方でKOF98ULOMのガチャは中国では一般的な形式であり、その表記もまた他のゲームで見られたものだ。なので、日本では誤解を招くが、運営としては中国の感覚でやってしまった過失とも考えられる。
ゲームキャストでも公式サイトを確認したところ、コンプガチャに通じる仕組みがあり、仮想通貨を発行しているにもかかわらずサービス終了時に仮想通貨の払い戻しができず、前払式支払手段(第三者型)発行者登録一覧にも登録が見当たらず、資金決済法など日本の商習慣にそもそも詳しくないのではないかと思える。
そうであれば、早々に訂正して運営を正してほしいと思う。データが消えてやめてしまったが、私は過去KOF98ULOMにハマって課金して遊ぶほど楽しんだし、今でも多くのプレイヤーがいるのだから、公正な運営で楽しく遊ばせてあげてほしいと願っている。
今後も、ゲームキャストではこの訴訟の行方を追っていくつもりだが、こういった訴訟は遅延作戦を取って疲れたプレイヤーが泣き寝入りするか、反訴をチラつかされて個人の資力では背負えないリスクの前に泣き寝入りするケースが多い。
こういったケースにならず、TomasさんとOurpalmの話し合いが正しく行われて真実が明かされることを願いたい。
なお、Tomasさん側の主張は下記のサイトに詳しく書いてあるので、そちらも合わせてどうぞ → KOF98 UM OL 運営会社相手に訴訟を起こした話 | ふぁんふぁーれ!