ゲームブック『ソーサリー』卓上ゲーム風に蘇る!『Sorcery!』レビュー
1980年代、一世を風靡した「ゲームブック」。今風に言うなら「アドベンチャーゲーム」の一種で、本を読み進めると選択肢が示され、選んだ選択に読むページが変わる(展開が変わる)小説だ。
その中でも人気の高い『ソーサリー』シリーズがスマホアプリとしてリメイクされ、海外では絶賛されているのだが……なんと全編英語。
文章量が多いので今まで手を出せなかったが……今回、英語を克服する裏技を発見したので、ようやく手を出してみた。
アプリを立ち上げると、プレイヤーのコマを選ぶところから始まる。
男女どちらでも選べるようだ。この、テーブルゲームっぽい演出、いい。スタートから、オールドファンの心をわかっているやり口だ。
さて、ゲームが始まる前に英語のアプリを遊ぶ裏技を紹介しよう。その秘策とは……日本語版ソーサリーこと『魔法使いの丘』の本を準備すること。
アプリを進めつつ、本のページをめくると不思議!英語の意味が分かるぞ!
▲押し入れから引っ張り出してきた。
このシーンだって!
本を読めば、日本語でばっちり……ん?アプリ版に……原作にない選択肢がある……?
公式ページによると、本作のテキストはプレイヤー視点(第3者が見ているのではなく、プレイヤーが見ている視点)に書き直され、大筋を変えないままで細かい分岐を増やしたハイパーリメイク版になっているらしい。
1,000項目以上に及ぶパラグラフが用意された、完全版になっているとか。
仕方ないので、辞書を片手にまる1日間かけてクリアしてみた(英語が分かれば、1時間で遊びきれると思う)ところ、「あ、これは良い移植」という結論になった。
文章は昔のママがいいのではないかと思っていたが、遊んでみれば主観視点に直された文章もまた良い。また、昔の攻略が通じるのに少しだけ異なる点が新鮮で、内容を覚えている人間としては楽しく遊べた。
なにより、アプリの演出が良かった。
ビジュアル的にも良いが、演出の仕上がりも上々。
イベントに合わせて最低限の環境音が入る演出、手書きの地図から移動場所を選ぶ演出など、原作のイメージを壊さないように配慮して作られているのが分かる。
▲移動した後が赤く残り、旅の軌跡が見えるのも良い。
ソーサリーと言えば魔法。原作にはアルファベット3文字で示される魔法が存在し、その効果と名前を暗記し、場面に応じて使い分け、魔法使いとして困難に立ち向かうゲームだった。もちろん、アプリ版でもそれは変わらないが、この演出が神秘的ですごく良い。
魔法を使う場面になると、意識が上空に飛んで空に文字が浮かぶ。その中から1文字ずつ選んでいくと意識が収束し……。
魔法が完成する!
▲なお、アプリ版では呪文書を見るといつでも魔法の内容を確認できる。
原作のバトルは、サイコロを使って戦う仕組みだったが、アプリ版は体力を削りあう「読みあい」に変化した。
プレイヤーと敵、双方に毎ターン「体力」が一定数補充され、この体力を消費点数がそのまま攻撃の強さになる。で、「いっせーのせ!」で双方の消費体力を出し、強い攻撃を行った側が一方的に相手にダメージを与えるシステムになっている。
例えば、「敵が剣を構え、大きく力を貯めている」という文章が示されたら敵は全力でくるから、消費体力を0に設定する。
逆に、敵が「引き気味に構えている」などと示されたら、敵は体力を使わないで防御しているから耐力消費を1ぐらいにしてちまちまダメージを与える。
文章から相手の行動を読み解く、「読解バトル」と言い換えてもいいだろう。
プレイヤーの知識が試される面白さだけでなく、ノーダメージでは切り抜けられない仕組みが「無謀な行動をするといつか死ぬ」ようになっていてちょうど良いバランス。
このリメイクは、とても完成度が高い。海外で評価されているのも納得するしかない。
日本語対応していないが、「原作を覚えていて、英語が少しは読めるなら、辞書片手に結構いける」だろう。
もし、あなたがゲームブックファンで英語が達者なら、もしくは原作を暗記するぐらいやり込んでいたなら。
ぜひ、1度試してみて欲しい。
評価:7(要チェック)
課金:
なし
おすすめポイント
原作を生かした演出
リライトされたテキストで新鮮に遊べる
気になるポイント
日本語対応していない
(バージョン1.5.1、ゲームキャストトシ)
アプリリンク:
Sorcery! (itunes 600円 iPhone/iPad対応)
Sorcery! 2 (itunes 600円 iPhone/iPad対応)
Sorcery! 3 (itunes 600円 iPhone/iPad対応)