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涙が出るほど、やるせない。無力な大人が読むSF物語『ひとりぼっち惑星』レビュー

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あ、あー。この声が、皆さんに聞こえているだろうか。
僕はいま、『ひとりぼっち惑星』というアプリをプレイして、どうにも切ない気持ちになって、この気持ちを人に伝えたくて、記事を書いている。
このゲームは、えげつないほど切なくて、やるせない。大人が読むためのゲームである。

『ひとりぼっち惑星』は、人がいない星に住む生き物が、壊れた機械の部品を集めてアンテナを作り、空からの声を受信する様子を描いたアプリだ。
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ゲームを始めると、惑星の地表でロボットたちが戦い続ける様子が見える。
彼らは、電波塔をタッチして起動するとやってきて、壊れるまで戦い続ける。なぜ戦っていて、どこから来るのか。それは一切は分からない。
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▲独特なデザインも、謎を際立たせる。

そして、最初にプレイヤーのやることは、壊れたロボットの部品を集めるだけ。基本は、時間を待って部品を集める「放置系ゲーム」だ。
こういったゲームでは「恋人を救うために○○を倒せ・集めろ」などの目的が示されるのが普通だ。
しかし、『ひとりぼっち惑星』では、部品を集める行為の意味や、世界の成り立ちについて一切の説明がない。

最初の数分、プレイヤーは意味も分からずロボットの殺し合いを見続けることになる。
悲しげなBGMの中で、その体験が、気持ち悪く、奇妙で、とても心に残る。
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そして、何も分からないまま、部品が一定数集まったら「あんてな」を建て、「じゅしん」する。
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すると、この星に向けられた様々なメッセージを受信できる。
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この星は、かつて人々の心のよりどころだったようだ。
自分の人生を振り返るもの、この星の様子を気遣うものなど、メッセージには悲しみも、寂しさも、喜びも、全てに強い想いが込められている。
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意地の悪いことにすべてのメッセージは完結した1つの物語になっており、悲しいメッセージにも、幸せなメッセージにも、何もかもに暗い側面を持っている。
しかも、数百光年以上も離れた場所から届くメッセージは、受信した時点で数百年前のもの。
だから、プレイヤーはそれを聞いても何もできない。メッセージを見て、現在の惑星の様子を見て、過去に起きたこととに想いをはせるしかないやるせなさ。
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▲地表で戦うロボットは、なぜ生まれたのか。

ロボット同士の殺し合いを見続けて荒んだプレイヤーの心に、これが強烈に効く。
やるせなくて、切なくて、この気持ちを伝えたくて仕方なくなる。実際、今その衝動に突き動かされるままに、この記事を書いている。
ゲームだから許される「間」を使ってプレイヤーの心にぽっかりと穴を開け、直後に暗いメッセージをたたき込んで感情を揺さぶる。
口で言うのは簡単だが、それはこの作品のアートセンスとテキストのセンスがあって初めてできること。こういった作品があるから、スマホゲームはやめられない。

なお、すべてのメッセージを見終わっても、ゲームは終わらない。
送信アンテナを建て、他のプレイヤーの「ひとりぼっち惑星」に向けて、プレイヤー自身がオリジナルメッセージを送ったり、他のプレイヤーが作ったオリジナルメッセージを受信できるのだ。
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心の闇を思うままに出すもよし、他のプレイヤーの声をひたすら聞くもよし。
物語が楽しめるように、できるだけネタバレは避けたつもりだ。だから、この記事を見て興味を持ったら、ぜひこれを遊んでみて欲しい。

評価:8(かなり面白い)

課金: 
広告削除240円、部品補充120円(なくてもプレイできるが、1回買うと全てのストーリーが見られる)

おすすめポイント
独特のアートによる世界観
切なくやるせないBGMとストーリー

(バージョン1.0、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
ひとりぼっち惑星 (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)