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人類最後の男が、終末の世界で見るものとは。『The End of the World』レビュー

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「人は、1人では生きられない」
そんな当たり前のことを訴えるゲームが、『The End of the World』だ。
本作は、終末を迎えた世界でたった1人だけ生き延びた男の孤独を描き、あなたに見せつける。
たった20分のゲームを終えてエンディングを迎えたとき、あなたは人との繋がりについて思いをはせることだろう。

朝、男は1人きりで起きる。
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画面をタッチすれば、左右に自由に動けるし、タンスを触って開ければ、服を着ることもできる。
もちろん、服を着なくても何ら問題ない。
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なぜなら、他に人がいないから。そのかわり、一緒に食事をする人もいない。
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世界に1人残された男の日常は、とても退屈で、やることと言えば散歩だけだ。
しかし、それはとても悲しい行為である。
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街には、男の思い出が眠っているからだ。
記憶の眠る場所に移動し、画面の時計をタッチすると……。
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在りし日の記憶が蘇る。ああ、ここで夕焼けの中、恋人とベンチに座ったのだ。
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バーに行けば、ちょっと気取って食事したことを思い出す。
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しかし、時計から指を離すと、そこには荒れ果てたバーがあるのみ。
今できることと言えば、酒瓶をひっつかんで、酔っ払うぐらいだ。
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毎朝起きるベッドだって……。
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本当は、恋人と朝を迎える場所だったはずなのだ。
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幸せな記憶と荒れ果てた世界の対比は残酷で、あまりにもやるせない。
男も恋人も細かく描写されないことが想像力をかき立て、寂しげな音楽はプレイヤーを鬱のどん底に突き落とす。
これ以上なく、寂しい。

しかし、プレイを終えるとプレイヤーには別の感情が目覚める。
男にはもう何もない。だが、自分たちにはまだ友達、恋人、隣人……誰かがいる。
ただ、隣に人がいることがどれだけありがたいことか。それを改めて認識し、今を大事に生きる気持ちがわいてくる。

何気なく生きている今も、振り返ってみれば素晴らしい。現代を生きる大人は、それを忘れているのではないだろうか。
『The End of the World』は、寂しい題材と裏腹に、生きる活力をくれる素晴らしいショートアドベンチャーだ。
2016年5月4日現在、無料セールをしているのでこの機会にぜひ遊んでみて欲しい。


評価:8(とても面白い)

課金について

なし

おすすめポイント
抽象的で寂しげなアート
心に訴える寂しい演出
短編フィルムを見るかのように短時間で終わる

(バージョン1.0、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
The End of the World by Sean Wenham (itunes 240円 iPhone専用 / GooglePlay)

動画: