映画のようなゲームは、面白い。兄弟の絆の物語『Brothers: A Tale of Two Sons』レビュー
「映画のようなゲームに、価値があるのか。一本道のストーリーならば、映画で良いのではないか」
これは、ゲーム好きの間でしばしば議論になるネタである。
しかし、この『Brothers: A Tale of Two Sons』を遊べば、「映画的なゲームも良い」と思うだろう
3〜4時間で終わる一本道の映画的アドベンチャーに、ゲーム的な要素を加えて一段素晴らしいものを作り上げているからだ。
このゲームは、病に倒れた父を救うため、「命の水」を求めて冒険する兄弟の物語だ。
幼い頃に母を助けられなかった弟はそのトラウマを胸に、兄はそんな弟を守るように、協力して旅する。
▲冒頭で、弟は母を助けられずに溺れさせてしまう。このトラウマで、彼は泳げない。
このゲームは、とても映画的に感じる。
まず、その美しい映像。
このゲームのディレクターを、映画監督のJosef Faresさんが担当しているからだろうか。
どのシーンを見ても良いアングルで、カメラワークがバッチリ決まっている。
美しい自然、人間ではない生き物との出会い、不思議な仕掛け。
もともとXBOX360などのゲーム機で発売されていたゲームなので、グラフィックは良い。しかし、カメラワークの良さで一段と映えて見える。
ベンチで休憩するときなど、その風景の美しさに心奪われることもあるほどだ。
▲ベンチを見かけたら、ぜひ座って欲しい。座ってみる風景は美しい。
そして、その映像で一本道のストーリーが語られる。
また、ゲームとしても詰まる要素はない難易度なので、スムーズにストーリーは進んでいく。
その部分において、とても映画的だ。
▲なお、テキストは日本語化されているが、言語は英語に似たオリジナル言語なので意味はわからない。プレイヤーは想像力を働かせて、ストーリーを追うことになる。
ゲーム的な部分は、その操作である。
このゲームでは、左右のスティックを使って兄弟を別々に動かす。
ときに別々に動かし、ときに兄弟を同時に動かす独特の操作は独特で、最初は戸惑うかもしれない。
▲スタート時、兄弟は力を合わせて1つの荷車を運ぶ。
ただ、アクションが激しい場面は少なくて、先ほど書いた通り、どんなプレイヤーでもゲームは進められる。
つまり、最初に操作しづらいだけで、それ以上の障害はあまりない。
だが、それが実に良い。
最初はぎこちなく動く兄弟だが、ゲームが進むとプレイヤーが操作に慣れてスムーズに動くようになる。
その様子が、旅を通じて兄弟の絆が深まっているように感じられ、ストーリーとシンクロしている。
▲弟は水難で母を失ったトラウマで泳げない。よって兄に捕まって水中を移動する。
ゲームの操作が兄弟の感情や一体感をプレイヤーに感じさせ、ストーリーにより深く没入させる仕組みとして働いているのだ。
映画的な一本道のストーリーを保ちつつ、プレイヤーが介入できるゲームの良さを上手く融合していると感じた。
▲兄の背について行く弟。人は左手の方がスティックを上手く操作できるので、左で操作する=頼りになる兄が操作で表現されている。
その結果、映画の良さにゲームの良さが加わって1本の素晴らしい作品となっている。
このゲームは、映画的だ。
ストーリーは一本道だし、難しくもない。せいぜい3〜4時間あればエンディングに到達する。
しかし、「3Dの人形劇で一本道のストーリーを見せるなら、映画で良いじゃないか」という批判は、このゲームには当てはまらない。
ゲームの長所を活かして、映画をゲーム的に体験させているからだ。
ボリュームは少ないが、600円で進化した映画を見ると思えば安い。
美しいグラフィックやストーリーの素晴らしさがあるだけでなく、操作を通じて兄弟の絆と成長を感じられる本作は、ストーリー重視のゲーム好きにも、普段あまりゲームをしない方でも楽しめるだろう。
誰にでもお勧めできる良作だ。
評価:3.5(かなり面白い)
おすすめポイント
美しくカメラワークの決まった映像
兄弟の絆を感じる操作とストーリー
気になるポイント
短く、1回プレイすれば十分
課金
なし
(バージョン0.1.0 ゲームキャストトシ)
アプリリンク:
Brothers: A Tale of Two Sons (itunes 600円 iPhone/iPad対応)
動画: