ネオジオ末期の極まったドット絵を堪能せよ!『餓狼 MARK OF THE WOLVES』レビュー。
SNK往年の名作と言われる対戦格闘ゲーム、『餓狼 MARK OF THE WOLVES』がiOSに登場した。
SNK格闘ゲームは「バランスが良くない」という印象があったが、このゲームはバランスも比較的良く、駆け引きの奥も深い。
ネオジオ末期の極まったドット絵も美しく、マニアに愛された1作である。
MOWは『餓狼伝説』シリーズの流れを汲むゲームだが、その実まったく新しい作品であった。
登場キャラクターはほぼ一新され、シリーズ名物のライン移動も廃止。
超必殺技のコマンドもほとんど真空波動拳コマンドに統一されてわかりやすく、入門しやすい格闘ゲームだった。
▲簡単操作!
コマンドが入れやすくてキャラの動きもいいので、なんとなく遊んでも楽しい。
このゲームが出たときは、「おお、SNKは新規取り込みに来たな!」と感じたのを覚えている。
しかし、実際にやり込むとこのゲームはとてつもなく奥が深かった。
まず【ブレーキング】システムを絡めた読み合い。
ブレーキングは、ABボタン同時押しで技を止めるシステムである。
わかりやすく図で説明しよう。
例えば、下の図はジェニーが必殺技を出して膝蹴りしている。
この技は通常、膝蹴りからスカートでの攻撃に移行する。
当たればいいが、防御されると隙は大きい。
しかし、膝蹴り時にABボタンを押すとブレーキングでスカート攻撃がキャンセルされ、そのまますぐ動ける。
▲膝蹴りが決まっていれば、そのまま追い打ちもできる。
これを使えばガードされても反撃を受けづらくなるし、相手がブレーキングを予期せずもたついていればもう一度攻撃を仕掛けられる。
ブレーキングを使ったフェイントを絡め、「このまま攻めるのか、技を止めてくるのか!?」と、攻撃側と防御側の読み合いが楽しかった。
このゲームでは攻撃をガードすると【ガードゲージ】が減り、ゲージがなくなると【ガードブレイク】して大きな隙ができてしまう。
ブレーキングのフェイントにかかったプレイヤーが固まり、タコ殴りにされてガードブレイクする風景はMOWプレイヤーなら誰もが見たことあるだろう。
しかし、防御側がブレーキングにやられっぱなしかというと、そうではない。
敵の攻撃があたる直前にガードコマンドを入れると【ジャストディフェンス】が発生し、ガード側の体力が回復するのである。
つまり、見え見えの攻撃は敵の体力を回復させるだけ。
▲MOWには空中ガードはないが空中でもジャストディフェンスはできる。
それどころか、ジャストディフェンスした側は通常より早く動けるので、「敵の攻撃を読めば反撃できる」状況を作り上げた。
ラッシュをかけている側も油断ができない。それがMOWである。
最後に【T.O.Pシステム】。
試合開始前に体力ゲージの前半・中央・後半の1/3を指定し、キャラの体力がその指定した位置にある間はキャラクターが強化されるシステムだ。
効果中は攻撃力が上がり、ガードゲージをごっそり削るTOPアタックが使え、体力も自然回復してゆく。
当然、T.O.Pに入った瞬間にパワーバランスが変わり、攻防バランスの入れ替わりが発生する。
フェイントを織り交ぜたテクニカルな攻め、ジャストディフェンスを絡めた反撃の駆け引きの面白さがうまくまとまっており、ドット絵も素晴らしい。
ゲーキャス的には、SNK格闘ゲーのなかでもトップ水準のゲームと思っている。
しかし、このゲームが出た1999年に2D格闘ゲームブームは終わっていて、新規の格闘ゲームに客がつかなかったのだ。
当時ゲームセンターの店員だった私は1人で「MOW面白い」と宣伝していたが、インカムが悪くてすぐに撤去となってしまったのを覚えている。
さて、最後になってしまったが、このアプリ版MOWがおすすめかというとNOである。
必殺技が簡単に出せるボタンと、超必殺技が簡単に出せるボタン、さらにAB同時押しとAC同時押しボタンが設定できるが、レバーが精密操作に向かないので練習しても基本コンボがせいぜいだろう。
iOS用コントローラーに対応しているが、Wi-Fiオンライン対戦ではコントローラーが使えない。
しかし、MOWが好きだったなら400円の価値はある。
ゲームセンターの喧噪の中では聞き取れなかった音声を楽しんだり、起動して懐かしさを感じられるからだ。
そう言った用途で楽しみたい方にはおすすめだ。
評価:2.5(価格通りに楽しめる)
おすすめポイント
懐かしのゲームが安く遊べる
コントローラーがあれば1人用はゲーム機同様
気になるポイント
オンライン対戦でコントローラーが使えない
レバーが操作しづらい
(バージョン1.0.0、ゲームキャストトシ)
アプリリンク:
餓狼 MARK OF THE WOLVES (itunes 400円 iPhone/iPad対応)
動画: