徹底レビュー『地球壊滅的B級カノジョ』(前編)レベルファイブ初のスマホソーシャルゲームは壊滅的な出来だった
“世界中のオスが人間も含めて異形へ変貌して襲ってくる中、女性だけで組織された傭兵部隊で対向する”という設定で、キャッチコピーも“金貨と美女が舞い踊るスマートフォン型スロットRPG”『地球壊滅的B級カノジョ』が先日リリースされた。
低年齢層に強い家庭用ゲームメーカー、レベルファイブが“ギャンブル・女キャラ絵・ソーシャル”という欲望直球なゲームをリリースしたことに驚いたが、ゲームをプレイして2度驚かされた。
タイトル通りゲーム内容が“壊滅的“だ。
なぜ、『地球壊滅的B級カノジョ』はダメなのか、2回に分けて徹底的にレビューしたい。
まず、このゲームの説明からしていこう。
このゲームはいわゆる“パズドラ系”のゲームで、5つの属性のキャラクター4人とフレンドのキャラクター1人でパーティーを組み、ミッションに出現する敵をスロットで倒していくバトルでミッションをこなしていく。
このゲームのHPはコイン。
HPであるコインをいれてスロットを回し、スロットで出た絵柄と同じ属性のキャラクターが攻撃する仕組みだ。
スロットを回すたびに使用するコインの量を選び、コインの量に応じて有効なマス目が増える。
図柄が揃うとコインが増え、敵の攻撃を受けるとコインが減る、という寸法(攻撃は揃わなくても出た図柄に応じて行われる)。
基本的にはMAXまでコインを賭けないメリットがないのでMAXベットするだけで、敵が複数いても攻撃は左端から順番に行われるだけで、プレイヤーはそこに介入できないため、プレイ感覚としてはポチポチゲーに近い。
唯一プレイヤーが介入できるのはカードの固有スキルの使用タイミング。
パズドラと同じく一定ターンが経過するたびにカードがスキル使用可能になり、プレイヤーは任意のタイミングでそれを使用できる。
777(スリーセブン)が揃うとキャラクターのカットインが入り、ボーナスタイム。
一定ターン数リールが5つになり、キャラクターの攻撃力が大幅アップ。
さらに、その間は敵が攻撃してこないボーナスタイムに突入する。
これらのシステムを駆使(というほどできることはないが)してコインが無くなる前にステージのボスを倒せば、ステージクリアとなる。
ポチポチに近いパズドラ系としてみると問題が無さそうなシステムにも見えるが、このゲームが壊滅的なポイントはプレイすればすぐ分かる。
まずその演出とユーザー層の乖離…つまりマーケティングだ。
スロット層を狙ってスロットソーシャル。
これだけはいい。
スロットマネーはたしかにすごい。
AppStoreの売上上位は基本無料ゲームかスロットが多数を占める。
ということは、基本無料+スロットは普通のゲーマーを狙うより稼げる可能性があるということだからだ。
しかし、そのターゲット年齢層は明らかに間違えている。
このゲームはキャラクターはちょっと濃口で、雑誌で言うならヤング◯◯より更に上、ビジネス◯◯、つまり30代〜40代以上を意識していると思われる。
▲キャラクターは現代から見ると濃口。
敵キャラクターや設定は1970年代特撮的ノリ…やはり40歳以上を狙っているように思える。
20代〜50代のパチスロマネーを狙う企画のはずなのに、わざわざその中のニッチを狙うわけのわからないチョイス。
加えて言えば、スマホの普及率は若年層の方が圧倒的に高いという矛盾も抱えている。
▲古い特撮のような敵のデザイン。これはこれでいいけど…。
実際、このゲームをプレイしているのはターゲットより若い層が一番多いと推測される。
その推定の根拠は、初期キャラクターのチョイス。
最初にプレイヤーがレアキャラを1人もらえるのだが、選択肢は濃口美女(左)、生活感のある若妻(真ん中)、巫女(右)の3人から。
ミッション時にランダムに3人のプレイヤーのリーダーキャラクターが見られるのだが、7割ぐらいのユーザーが初期キャラに巫女を選んでいるようなのだ。
ラノベやコミックの文法でギリギリ許せるイラストはそれぐらいしかない。
つまり、アプリをDLしているメインの年齢層と、用意されたイラストのテイストが剥離していることが推測される。
▲ガチャ演出は、美女を狙い撃ち…古い…。
誰がこれにGOサインを出したのか。
Level5の低年齢層への訴求力・カノジョ(=美少女キャラ)が持つイメージを求めて来た若年層を切り捨て、ほぼいない40代ユーザーに訴求しようとする壊滅的なチョイスだ。
そして、ゲーム部分ももちろん壊滅している。
「バトル部分がパズルで、プレイヤーの実力次第で結果が変わる」というのはパズドラ系の大きなポイントだが、先に述べたようにパズドラ的な実力が反映される面白さはない。
属性の強弱やスロット運による攻撃の揺らぎがあるのに、攻撃する順番は選べない。
スロットの目押し(回転するリールを見きって止める)もなく、プレイヤーは窮屈感だけを味わうことになる。
▲攻撃する敵ぐらい選ばせて…。
では、スロットゲーとしてはどうなのだろうか。
こちらもダメだ。
スロットの面白さの根源とは、くじびきの面白さである。
「あたれ、あたれ…当たった!」という喜び。
スロットは勝てば金が手に入る。
しかし、このゲームは別に揃った所でそんなにせいぜいミッションに勝ち、運が良ければボーナス報酬(コインを一定以上残して勝つとボーナスカードが手に入る)るだけ。
だから、スロット以上に期待感を煽る報酬・演出の仕掛けが必要なのだが、これがスロットと比較してありえないほどショボイ。
“くじ引きの面白さ”を作ることにも失敗しており、面白くない。
で、ポチポチゲーとしてみるとスロット演出が入ったせいで手間が増えて面倒なだけ。
スロットが回っている時間を待ったり、図柄が揃いかけるとリーチ予告が入って操作が増えたり、演出の待ち時間が入ってさらに面倒だ。
パズドラ系としても、スロットゲーとしても、ポチポチとしても壊滅的。
正直、このゲームを作ったスタッフはスロットをちゃんとプレイしたことがあるのか疑問だ。
ここまでマーケティング、ゲーム部分が壊滅的と書いてきたが、最後に、壊滅的でない部分も1つある。
アプリの動作や細かい部分については壊滅的と言うよりは、タイトル通りB級ぐらいで落ち着いている。
音声バランスが悪くて声が聞き取りづらいとか、パーティー編成時にパーティーに組み込もうとしているキャラクターのステータスを見られない、図鑑のスワイプの反応が悪いなど、多々気になるところはあるが基本はパズドラを踏襲しているので問題はあまりない。
▲その他に1件何かの通知がきているけど、その他ボタンを押してもどこかわからないこともある…。
スロット+ソーシャルという企画はありだと思うけども、その実現方法が壊滅的。
全体的に見て、家庭用で名を馳せたレベルファイブがこんなゲームを作るなんて…と信じられない思いだ。
タイトルで出てきたロゴで開発しているのは面白法人カヤックと知って納得。
カヤックというと『バウンドモンスター』で“ブロック崩し”+“パズドラ”で、企画はOKだけどブロック崩し部分が見事に面白くなくて「お前ブロック崩しやったことあるのか!」と思ったのだが、今回も企画はOKだけど「お前、スロットやったことあるのか!」という内容で同じ轍を踏んだということか。
日本家庭用のトップメーカーとも言えるレベルファイブが、スマホ向けの新ブランドUNIPLAYを発表して1ヶ月。
その先駆けとも言える『地球壊滅的B級カノジョ』は後続の出来が心配になるぐらい散々な出来だった。
しかし、実際自分はコアなスロットプレイヤーではないので、もしかしたらスロットを実際にやっている人間から見たら面白い、という可能性は残されている。
後編『地球壊滅的B級カノジョ』(後編)プロのパチスロプレイヤーにスロットRPGの感想を聞いてみたでは、実際にパチスロのプロにこのゲームをプレイしてもらい面白いのか分析してもらいつつ、面白く無いとしたらどうすればよいのか、という部分を考えていこうと思う。
アプリリンク:
地球壊滅的B級カノジョ 基本無料 iPhone/iPadの両方に対応