ウルティマシリーズ最新作オンラインRPG『Ultima Forever』、カナダ先行版インプレッション
『Ultima』はドラゴンクエストなど、日本を代表するRPGの元祖といわれるゲームシリーズ。
さらに、オンラインゲーム黎明期に発売された『Ultima Online以下(UO)』は広大なフィールドでプレイヤー同士が交流するという、今では当たり前のことを最初にやり始め、ネットゲームにも革命をもたらした。
後に続く『ラグナロクオンライン』や『リネージュ』など、人気MMORPG(大規模オンラインRPG)もUOの上に成り立っていると言っても過言ではない。
そんなゲーム界の革命児Ultimaシリーズの最新作『Ultima Forever』がiPadでリリースされた。
今回は5月14日、カナダのAppStoreで先行リリースされたバージョンのプレイレポートを、雑誌編集ライターのざりおさんにお願いして書いてもらった。
Ultimaといえばオンラインゲームを思い浮かべる人と、古典的ゲームを思い浮かべる人がいるが、今回のUltimaはUOではなく、『Ultima Forever(以下UF)」。
アバタール(聖者)として異世界“ブリテイン”に召還された主人公が、悪魔から世界の平和を守るという従来のUltimaシリーズに沿った内容になっている。
従って、キャラクターが仮想世界で自由に暮らすMMORPGのUOとは全くことなるゲームだ。
▲こちらは『Ultima Online』の画面。なんとサービスはいまだに現役!
先ほど書いたとおりUFは現在カナダのみで先行リリースされているが、現時点でも日本語でゲームを楽しむことが可能。
▲敵もちゃんと日本語でしゃべる。
Ultimaの最新作かつ、ネットゲームということUOプレイヤーなどの間でで話題になっていたUFだが、MMORPG的なネットゲームとはやや毛色の違うものになっている。
オンラインで他のユーザーと交流できるエリアと冒険するエリアが完全に隔離されているのが特徴で、大勢のプレイヤーが同時にアクセスできる非戦闘エリアで仲間の募集などを行い、冒険エリアで戦いを行うという仕組みだ。
▲非戦闘エリアと戦闘エリアを行き来する。
冒険エリアでは自分の仲間は表示されない、MO的な構造になっている。
なので、ピンチになったからといって途中で助っ人のプレイヤーを仲間に追加するなど他のネットゲームのようなやり方はできない。
しかし、他のユーザーグループと敵やアイテムを奪い合う心配もないので、自分のペースでステージを攻略できる。
では、これから実際にプレイした内容をレポートしていこう。
UFは基本無料のゲームで、プレイするにはFaceBookのアカウントが必要だ。
最初にタロットカードで性格診断が行われ、その結果によってキャラクターのステータス値やオススメの職業を紹介される。
▲ウルティマでお馴染みのタロット。
ゲームは主人公がブリタニアに召還されるシーンから始まり、雑魚敵との戦闘で基本操作を学ぶ。
キャラクターがタッチした位置に移動し、敵をタッチすればその敵を自動で攻撃し続けるオート攻撃システムのアクションRPGに近いシステムだ。
オート攻撃なので、プレイヤーの腕前よりもキャラクターの能力値が冒険の成否を左右するようになっている。
ゲームの流れは、冒険エリアで倒した敵や宝箱からアイテムを収集し、主人公を強化し、またより上級の冒険エリアに赴くハックアンドスラッシュゲームそのもの。
回復ポーションなどは存在するが、敵を倒すとその場で体力を回復できるアイテムが良く落ちるので、ゲーム難易度はさほど高くないといえる。
▲敵から回復が落ちるので、少なくとも序盤は難易度が低いように感じた。
が、キャラクターが死亡してしまうと防具が半壊または大破することもあり、ゲームに必要な緊張感も考慮あわせ持つ。
同時に理不尽に死が訪れないような配慮もあり、冒険エリアに入った直後にステージの難易度のキャラクターの強さを比べた攻略難易度が表示され、クリアが難しいという判断が出た場合はその場で安全なエリアに戻ることもできるのは最近のゲームという印象だ。
なお、武器や防具には耐久度の概念があり、キャラクターが死亡しなくても修理せずに使い続けるとどんどん性能が落ちていく。耐久度は赤いゲージでも表示されるが、少しでも傷がついた装備にはアイコンが表示されるのでわかりやすい。
Ultimaシリーズには“徳”(正義、献身などの美徳)という概念が存在し、UFでも8つの徳がレベルアップやステータスアップに必要な重要な要素になっている。
敵を倒して経験値を貯めてレベルアップするのではなく、イベントやクエストを終わらせて、その際に選んだ選択肢や行動結果によりステータスがアップするという仕組みだ。
また、徳を積むことで地域内での評判があがり、評判が一定値に上がることで他のエリアに移動が可能になる。
▲正義など8つの徳が存在する。
恋愛ゲームで会話内容により好感度が変わるシステムを思い浮かべてもらうと想像がしやすいかもしれない。
徳はイベントクリアのみでなく、NPCとの会話でも得ることができる。
その場合、会話中に選択した内容に応じてパラメーターに追加される『徳」が表示されるので、成長させたい能力に合わせて選択肢を選ぼう。
▲会話で徳が上がるときは、どの選択肢でどの徳が上昇するか表示されるので、欲しい徳の選択肢を選べる。
チュー トリアルをクリアするとブリタニア城に行き、NPCたちから依頼されるクエストを引き受けることになる。
メインストーリーに沿ったアバタール(聖者としてのストーリーの本筋)クエストをこなしつつ、その合間に村の住人や通りがかりの 旅人などから請け負ったサブクエストを攻略していくのがゲームの基本的な流れだ。
引き受けたクエスト内容、クリア後の報酬などは、メイン画面でいつでも確認できるので、途中で攻略ルートを見失うことも少ないはずだ。
Ultimaシリーズでは、ほぼ毎作登場する定番キャラクターたちが存在する。
ゲーム冒頭に登場するマリアなどのアバタール・コンパニオン(旧作で共に戦った仲間)や、お城にいる道化師チャックルスなど、おなじみのキャラクターはUFでも健在だ。
しかし、Ultimaシリーズの生みの親であるリチャード・ギャリオット氏がモチーフになった、国王ロードブリティッシュに関しては、氏はすでにUltimaシリーズの開発に関与していないことからか、本作では女王レディー・ブリティッシュに変更されているようだ。
▲初代ウルティマから、ブリタニアを統治する王といえばロードブリティッシュだった
女王への謁見が終わると城の中を歩き回れるようになる。
城の中は非戦闘エリアになっており、他のプレイヤーも表示される。主人公はまず水路に潜む魔物の討伐を依頼されるのだが、この時点で他のプレイヤーと一緒にグループを組んでいくことも、ソロで戦うことも可能な状態になる。気になる相手にグループ参加を呼びかけてみよう。筆者も見知らぬユーザーから、何気なくグループに幾度も誘われた。
UFも、他のアクションRPGなどと同様に、イベントの最後には迫力あるボス敵が待ち受けている。また、敵が大量に発生する中で指定時間耐え続けるなど、ボス戦以外にも見せ場のイベントは各所に用意されているようだ。
また、冒険エリアは敵と戦うだけでなく、レバーを引いてドアを開閉したり、障害物を押して通り道を造ったり、謎解き的な要素もある。
最後に、課金システムについてだが、UFでは鍵が仮想通貨になっている。鍵は、金・銀・銅と3種類に分かれており、銀と銅の鍵は敵を倒したりクエストの報酬で手に入るが、金の鍵は基本的に課金で手に入れることになる。
宝 箱を開けた際に、鍵のグレードによりアイテムのドロップ内容が異なるなど、GameloftやGlu Mobileの課金方式に近いシステムが採用されている。筆者がプレイしている限りでは、課金装備などをいつでも購入できることもなく、持ち歩けるアイテ ム数の拡大などに使うのみだった。
筆者がUFをプレイした時間は非常に短い。
しかし、カジュアルかつ要所要所に練り込まれた親切なシステムは非常に好印象に感じた。
とは言えど、『イルーナ戦記』などの国産MMORPG・『PocketLegend』・『マスターオブカオス』など、既存のMMOゲームと比べるとUltimaらしさはあるものの、コレと言った新しい要素が特に見当たらなかったのは誠に残念。
また、グラフィックの質はさほど綺麗ではないにも関わらず、『DarkQuest4』などといったフル3Dゲームよりもプレイ時の処理が重く、 iPhone4ではカクカクで正常に動作できないという点も気になった。UFを日本のユーザーがプレイできる日はもうしばらく先だが、これからの進化に筆者は期待して待ちたい。
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ゲームキャスト読者の皆様初めまして!
パソコン雑誌編集ライターのざりおです。
ゲーム好きですが、詳細レビューは初めてす。読者の皆様よろしくお願いします!
(ざりお)