※このレビューは古いバージョンのもので、現在バグはかなり改善されている模様。
タイトル:Wizardry 囚われし魂の迷宮
ジャンル:RPG
価格:無料(製品版にするにはアプリ内購入1200円)
日本語対応:あり
Retina 対応:あり
販売元:アクワイア | Version:1.0 | GameCenter:実績・ランキング対応 | 対応機種:iPhone / iPod touch
総合評価:2.0(良くはない)
+ゲーム内容は普通に楽しめる
-処理落ちがひどい
-頻繁に壁が白くなる(テクスチャが欠ける)
-メニュー画面の操作性がいまいち
-ヘルプが足りず説明不足
Wizardry 囚われし魂の迷宮の詳細はこちら(itunes)
タイトルにある「Wizardry」 (以下、ウィザードリィ) とは Sir-tech という海外の会社が1981年に発売したRPGで、3Dグラフィックのダンジョン RPG の元祖として世界的に有名なゲーム。
なかでも日本で開発されたファミコン版は Sir-tech が「今まででた中で一番できがいい」というほどの質で大ヒットを飛ばし、多くのファンを作った。
今でも日本には根強いファンがおり、開発元の Sir-tech が倒産して正当なシリーズ作品が発売されなくなってからも日本ではさまざまな派生作品が発売されている。
なんと、移植などを含めれば2008年以外は毎年 Wizardry 作品が何らかの形で発売されている( 4gamer ) から驚きだ。
特に近年は Sir-tech の倒産でばらばらになった版権を一手にまとめ、新しい ウィザードリィ の世界観・ブランドの構築を行う「ウィザードリィ ルネサンス」( 公式HP )という企画のもと、移植ではない新規開発の ウィザードリィ
が年に2本のペースで発売されている。
背景の説明が長くなったが、その「ウィザードリィ ルネサンス」の第1弾として2009年に プレイステーション3 で発売されたのが「Wizardry 囚われし魂の迷宮」だ。
ゲームはキャラクター作成から始まり、主人公となるキャラクターの種族と性別を選択すると、性格・職業選択画面へ。
職業ボタンをタップすると能力値の割り振り画面になり、画面左上に表示される BONUS の数値をそれぞれの能力値に自由に割り振り、その値によってなれる職業が変わる。
BONUS の数値はキャラクター作成ごとにランダムで、なんどもやり直していい値になるまで粘ることも可能。
初めての方は戸惑うかもしれないが、性格・能力値ごとになれる職業や攻略についてこちら (攻略wiki) が詳しいので、見ながらプレイするのもありだ。
最大6人でパーティを組めるが、主人公以外のキャラクターは街の「ギルド」で自由につくることもできる。
ゲームの基本は街と迷宮を行き来するだけ。
ひたすらに迷宮で戦ってパワーアップし、街の「ギルド」でクエストを受けてはまた迷宮に戻る。
ストーリーは薄めで、戦闘と迷宮の探索を楽しむのがメイン。
迷宮は立体的な3Dの1人称視点で表示されるが、明かりの魔法や松明を使わないと、2歩先も見えないし、トラップも多く最近のゲームにはまずありえない不親切さ。
ただ、迷宮に合わせた「◯◯の地図」というアイテムを入手すると二次元的なマップで自分の位置を確認することができるので、それがあればなんとかなる。
移動はバーチャルパッドだが、直感的に操作できるのが嬉しい。
戦闘は非常に難度が高い。
序盤は敵のちょっとした攻撃で死ぬし、魔法はすぐ切れる。
中盤以降も HP に関係なく即死させてくる敵や、凶悪な罠が出てきて油断すれば簡単に全滅してしまう。
死んだキャラクターは絶対に復活できるわけではなく、復活に失敗することもある。
しかも、「死亡」の状態から1回復活に失敗すると「灰」になり、そこでさらに復活に失敗すると「ロスト」して永久に復活できなくなってしまう。
好きなときにセーブして再開できるので、全滅した瞬間にセーブ地点まで戻ったりすることができるが、この仕組みでなければ心が折れるプレイヤーも多いのではないだろうか。
だが、強力な敵を力でねじ伏せたり、偶然手に入れた強力なアイテムを使うだけで一気に戦闘が楽になったりと敵を倒してパワーアップする原始的な楽しさがあり、ここにはまると意外に抜け出せずに最後までプレイしてしまうだけの力がある。
そんな原始的な「ハック&スラッシュゲーム」が好きならプレイしてみる価値はある。
ただし、残念ながら難点がかなり多い。
まずは処理落ちの多さ。
iPod touch 4GとiPhone 4のみが対応機種なのだが( iPhone 3GS は対応していないので注意! )、 iPod touch 4G では歩いても処理落ち、戦闘中のエフェクトでも処理落ち、至る所で処理落ちする。
特にアイテムの詳細は見るだけで3秒間画面から戻れないこともあり、ゲームとして楽しめるギリギリのレベルの処理落ち具合。
ゲーム部分が楽しめなかったら即座にやめていただろう(というか、地下4Fぐらいから面白くなってきたので頑張ってやる気がなかったら体験版の時点で投げていた)。
iPad でプレイすると緩和されるが、ユニバーサルアプリではないので画像が荒くなってしまう。
セーブの仕様。
リジュームに対応していない代わりにオートセーブがあるのだが、そのオートセーブデータから始める方法が分かりづらい。
実際は「前回の続きから始めますか?」で「はい」を選択して、前回使用していた主人公を選択するだけだが、これがくせ者。
「オートセーブされていると思ったらされていない」という状況が非常に多いのだ。
iPod touch 4G で、他のアプリを切って ウィザードリィ のみを起動している状態で、他のアプリを立ち上げてから ウィザードリィ を再起動するだけで大抵の場合はオートセーブデータが消えてしまう。
いろいろ試してみたが、
文字だけのメールを見る:オートセーブOK
大きな画像付きメールを見る:オートセーブ消える
他のゲームを起動:たいていオートセーブ消える
複数タブを立ち上げてブラウザを見る:オートセーブ消える
となった。
iPhone 4 を持っていないので私自身は試していないが、「電話をとったらオートセーブデータが消えた」という報告も寄せられており、公式対応機種の iPhone 4 でそれが本当なら大変な話だ。
(他人任せで申し訳ないが、情報提供求む)
頻繁にオートセーブデータが消えるので、「正しい手順でプレイしているのに中断データから始まらない」ことが多々あり、私自身も非常に戸惑った。
頻繁なテクスチャ欠け。
ダンジョンの壁が真っ白になったり、街が黒くなったりする。
ゲーム自体はそのままプレイできるが、これは痛い。
最後に、メニューの統一感のない操作系。
タップで「決定」のこともあれば、対象をタップで選択してから別のボタンをおすこともあったり、なおかつそのボタンが小さかったり。
慣れれば操作できないわけではないが、不満は残る。
感覚的に言うと「 iPhone は初めてだけどがんばりました 」ぐらいの操作性。
ゲーム的に楽しめるので購入すれば最後までできるのだが、不満は多い。
「世界樹の迷宮」など、この手の3Dダンジョン系が好きならば購入してもいいが、そうでなければ現状は見合わせたほうが良い。
さて、ここまではウィザードリィが初めての方のために書いたが、次に「ウィザードリィ」としてどうかという点から書いてみようと思う。
私自身はファミコン版の1~3、スーパーファミコンの5、外伝1~3(特に外伝3は1000LVを超えるまでプレイ)、PC版の6~7、Busin をプレイしてきているが、「ウィザードリィは1、外伝系が最高」と思っているタイプ。
その観点で行くと、これはオールドファンが望むウィザードリィそのままではない。
(版権の関係で使えないので仕方ないが)魔法の名前など様々な固有名詞はウィザードリィオリジナルのものではないし、効果も違う。
オートセーブがない、というか不安定なため、いわゆる「リセット技」の感覚も異なる。
戦闘のバランスは現代風となり、職業ごとにできることも異なるし、迷宮の複雑さも旧作より緩和されている。
ただし、「アイテムを手に入れた嬉しさ」や「即死もありえる強敵相手に頑張って戦う」という要素自体は引き継がれていて「ウィザードリィ風味のRPG」としては十分楽しめる。
携帯向けに作られた外伝の完成度とは比べるべくもないが、似ている違うゲームとして考えれば十分楽しめると感じた。
総合してみると、様々な難点に目をつぶれば現代のユーザーにも通じる「無理やりゲームを力でねじ伏せる」面白さはあるゲーム。
ただし、難点が強烈なのでまずは体験版をDLして試してみてほしい。