ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

「荒唐無稽な低予算アクション映画の台本を書く」「台本ままの演技をする」両方やらなくっちゃならない一人二役パズル『It's A Wrap!』。プレイする「覚悟」はできてるか?/BitSummitX


国内最大級のインディーゲームイベント「BitSummit X-Roads」が8月6日(土)、7日(日)に開催された。
無数の作品が出展されたが、その中で筆者が最も面白いと感じたゲーム『It's a Wrap!』を紹介したい。

(記者:ポル之助@pornski_eros


『It's a Wrap!』は80年代の映画撮影をテーマにしたパズルアクションゲームだ。
プレイヤーは低予算映画の映画監督と主演俳優の2役を演じることになる。

ちなみに、「It's a Wrap!」とは映画の完成を意味する映画業界用語だそうだ。
うまくパズルを解いて難所を乗り越え、監督と俳優のふたつの視点から映画を完成させよう。
image1

ゲームの画面構成は他にあまり似たゲームが思いつかない、独特なものになっている。
上部が映画セットを模したステージで、この中を主演俳優は走り回ってアクションする。
そして下部は、ステージに設置されたさまざまな仕掛けのスイッチになっている。
あえて似ているものを挙げるとすると、動画編集ソフトだろう。
動画制作をやっている方は、このゲームと似たようなUIで動画を編集しているのではないだろうか。

「ACTION!」というボタンを押すとシークバーが流れていき、各種青いバーに到達したらその仕掛けが起動する。
上記のスクリーンショットであれば主人公が渡ろうとしているつり橋が落ちてしまう。
まったくいじっていない状態では、主人公がつり橋を渡りきる前に仕掛けが起動し、ワニのいる川底へ落ちてしまう。
バーを移動させて仕掛けが作動するタイミングを変更するのが、このゲームの要となるシステムだ。
image3

なかなか歯ごたえがありそうだと感じた方は正解だ。
このゲームはアクションパズル。
いくらパズルが解けてもアクションに失敗すればクリアはできない。

アクション部分もパズルに負けず劣らず歯ごたえがある。
壁ジャンプを駆使し、恐ろしいワナを突破しなければならない。
ステージギミックを用いたプラットフォームアクションやステルス風のアクションもあり、自分で設定したワナに自分で引っかかってしまった時は変な笑いがにじみ出てしまう。
自分で仕掛けをいじることができるからこそ、失敗したときの悔しさはひとしおだ。

それだけに、ステージをクリアしたときはうれしい。
今回はビットサミットで試遊できたので、クリアしたときは作者の方々が拍手をしてくれてとても気持ちよかった。
image2

80年代映画をテーマにしているだけあり、さまざまな映画のパロディーが登場するのも楽しい。
上記の溶岩ステージでは溶岩の海を足場に乗って進み、坂道では巨大な岩に追いかけられる。
明らかに「インディ・ジョーンズ」シリーズを意識している。
そして溶岩に落ちると主人公は高らかに左手を挙げ、親指を立てる。

映画では「アスタラビスタ」(地獄で会おうぜ)だが、これは映画撮影なので安全な溶岩を使用している……はずだ。

ここまででお気づきの方もいるだろうが、このゲームはいわゆる「死にゲー」と呼べるほど何度も失敗するが、死亡シーンはコミカルで個性豊かなのがうれしい。
岩につぶされればペラペラになるし、雪崩に巻き込まれれば見るも哀れな雪だるま状態に。
明らかに危険そうな電気でビリビリされたり、炎で丸焦げになったり、本当に安全な現場なのか心配になるほどの死にっぷりだ。
image4

本作は今回のイベントで出会うまでまったく知らないゲームだったのだが、試遊したおかげでこのゲームのファンになってしまった。
ゲーム自体の難度は高めだが、やりがいのあるアクションパズルと先が見たくなるコミカルな映画セットのおかげで夢中でプレイできた。
さらにやりこむと、今度は「より映画っぽく」見える絵作りまで考えてしまう。
どのタイミングで仕掛けを起動し、どのようなアクションで乗り越えればかっこよく見えるか。
最高のアクション映画を作るのは、パズルとアクションの腕にかかっている。

このゲームプレイの独創性、見た目との親和性も高く評価されたようで、「EXCELLENCE IN GAME DESIGN AWARD」と「IGN JAPANメディア賞」をダブル受賞した。

なお、本イベントで公開されたものと同じ体験版がSteamにて公開されている。8月8日までの限定公開のため、気になったらすぐに試してほしい。
そして気に入ったのならぜひウィッシュリストに登録し、ゲームの続報をまってほしい。

関連リンク:
It's a Wrap! :公式ページSteam