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『フォートナイト』がGoogleとAppleの規約に違反しストアから削除される。Epic GamesはAppleと真っ向から対峙する構え。

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Epic Games が提供する人気バトルロワイヤルゲーム『フォートナイト』が、App Store、Google Play 両ストアから削除された。

AppleのApp Store、GoogleのGoogle Playからアプリが削除された理由は明白で、『フォートナイト』側の規約違反となる。
App StoreやGoogle Playでは、同じ品物を他のプラットフォームで安売りし、他のプラットフォームへ誘導することが禁止されている。
彼らは、それぞれのプラットフォーム内の決済額の30%を収益として得ているので、他社の決済を利用されるとプラットフォームをタダ乗りを許してしまうからだ。
(※Appleは物販なら外部決済OK、Google Playはそれよりは緩いなど、規約に差はある)
『フォートナイト』は、これに明確に違反している。
『フォートナイト』で8月13日から始まった割引キャンペーンは、前述の規約に明らかに違反をしていた。

『フォートナイト』アプリ内から有料アイテム“V-Bucks”を買うとき、各プラットフォームからの決済と、Epic直接決済、2つの購入方式が示される。
Epic直接決済を選択するとプラットフォーム手数料がかからない分、“V-Bucks”が安くなる。
つまり、「Epicに直接支払えば$9.99のところ、$7.99になります。だからAppleとGoogleの決済をやめて、Epic決済を使おう」と、自社決済へ露骨に誘導していたのだ。
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▲こういった誘導はその昔Amebaプラットフォーム誘導で見られたが、ここまで露骨なものはなかったと記憶している。

これを受けてAppleは2020年8月13日にApp Storeから、Googleは2020年8月14日にGoogle Playから、それぞれ『フォートナイト』を削除した。
ところが、話はそれで終わらなかった。
Epic Gamesは、即座にAppleを相手取った訴状を公開し、自らの正当性をアピールする動画を公開したのだ。
動画の内容は、Apple自身がPC市場を独占していたIBMに対抗し、マッキントッシュを発売したときに公開したCM“1984”のパロディだった。


通常、アプリストアから削除された後、すぐにこういった訴状や動画を用意することはできない。
つまり、Epic Games は規約違反で削除されることを織り込んで喧嘩を始めたわけだ。。
そして、「Epic Games は、成長しすぎたApple独占を打倒する正義である」とアピールしている。
実際、Epic Games の訴状の書き出しは、それをイメージしたものとなっている。
1984年、新進気鋭のApple社は、初の一般向け家庭用PCであるマッキントッシュを発売した。この製品は、ジョージ・オーウェルの『1984年』を彷彿とさせる息を呑むような広告とともに発表され、Apple社はIBM社によるPC市場独占を打ち破る革命家であり、有望な力を持っているものとして表現された。Apple社の創業者スティーブ・ジョブズ氏は、1984年の広告の最初の上映で「IBMはすべてを望んでいるように見える。Apple社は、金の亡者となったIBM社を止める唯一の希望であると認識されている」と説明している。
ビッグブルー(※IBMの過去の異名)はコンピュータ業界全体を支配したのだろうか?
情報化時代全体も支配したのだろうか?
ジョージ・オーウェルの1984は正しかったのか?

さて、2020年になってみると、AppleはかつてのIBMように、市場を支配し、競争を妨げ、技術革新を阻害しようとする巨大企業になってしまった。
Appleは往年の独占企業よりも大きく、より強力で、より定着しており、より悪質だ。
本事件は、
(i)スマートフォンやタブレットなどのモバイルコンピューティングデバイスのユーザーへのソフトウェアアプリケーションの配布、
(ii)iOSアプリ内で使用されるデジタルコンテンツに対する消費者の支払いの処理のための市場におけるAppleの一連の反競争的規制と独占的慣行の使用
に関するものである。
Apple社は、両市場を完全に独占するために不合理かつ違法な制限を課し、アプリ開発者が唯一のストアであるAppleのApp Storeを経由しない限り、同社のモバイル機器(iPhoneやiPadなど)の10億人を超えるユーザーにリーチできないようにしている。
なぜ Epic Games は、Apple や Google に喧嘩を売り、自らの正当性をアピールしているのか。
それは、最近の Epic Games の主張を見ていれば納得がいく。
ゲームやアプリにおいては、プラットフォームの手数料が30%かかることが慣例となっているが、Epic Games はこれが過去の慣例であり、独占的プラットフォームが高額の手数料を維持することでソフトウェアの発展を妨げている、と主張しているのだ。

Epic Games は、30%という料率はサーバー機器・インフラ利用料金が高価だった頃から続いており、これらが安くなった現代においては不当な数値であるとしている。
実際、Epic Games はPCにおいては開発者への還元率が高い Epic Game Store が設立し、激しい競争を始めている。
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▲Epic Gamesによるストアの収益分配図。Steamよりも、開発に還元されることが宣伝されている。

つまり Epic Games は、自らを不当に搾取されているゲーム開発者を解放する者、として正当性を主張し続けているわけだ。

だが、オープンなPCプラットフォームはともかく、OSとストアが密接に結びついているスマホ市場では同じアプローチがとれなかった。
まず、Epic Games は Android 向けに独自にストアを開設し、『フォートナイト』を中心としたストアを作ったが、Google の牙城は崩せず、プラットフォーム手数料を支払って Google Play に参入することになる。
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Android上ではGoogle Playではないサードパーティー製のアプリなどのインストールに警告が出るなど、競合に不利になる仕組みがある……というのがEpic Gamesの主張だ。

Apple の iOS 端末はもっと手に負えなかった。 iOS では独自ストアが展開できないからだ。
それが理由かどうかわからないが、最終的に App Store と Google Play に対して『フォートナイト』のアプリ版を配信される。
そうして、スマホにおいては是正の動きが収まったかと思った矢先に、今回の行動ですべてを白紙に戻して(AndroidはEpic Gamesなどからアプリをインストール可能)、Epic Games は訴訟を通じて正統性を主張することになったわけだ。

この勝負に勝ち目があるかどうかなのだが……私個人としては「Appleが譲歩することもありえる」と見ている。
黎明期を超えたスマートフォンはすでに生活に必須のインフラとなっており、その上で提供されるサービスを独占的に左右できる企業の存在は、サービスの発展を阻害し、我々の生活にマイナスの影響を与える可能性がある。

実際、欧州・米国では Apple の独占の害を調べる報道が多く聞かれる。
欧州委員会、アップルの「App Store」「Apple Pay」を独禁法違反疑いで調査開始 - ケータイ Watch
アップル、グーグル、アマゾン、FacebookのCEOが米議会で証言へ--独禁法関連で - CNET Japan

また、ゲームだけを見ても規約によってさまざまな商売形態が阻まれている。

いずれにせよ、現在は見ていることしかできないだろう。

ただ、最後に1つだけ言っておきたいことがある。
30%が高いという主張には一定の理解ができるし、私自身は多少の不便や問題が発生してもそれは正しい点があると思って過去に Epic Games を応援してきた。
が、その正当性をアピールするためにわざと各プラットフォームの規約に違反し、現在遊んでいるプレイヤーに不便を強いる(Androidなら独自ストアからDLできるが、iOSではもはやDLする手段がない)のは自社の顧客……つまり、ゲームプレイヤーを軽んじる行為で、許せないと感じている。
たとえば、iPhoneで友達と『フォートナイト』を遊んでいる子供は、何かの手違いでアプリを消してしまったら明日からもう友達と同じゲームで遊べなくなる。
そういった、人質を取った革命行為は感心できない。
この一件で、私のなかの Epic Games 株はかなり下がった。