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まだ、終わりたくない。やさしい余韻の絵本系ゲーム『ジラフとアンニカ』レビュー

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幼いころ、絵本を読み終えるのときに感じる寂しさが好きだった。
もう少しだけ絵本の世界を見ていたい。
だけど、絵本の世界でおきた事件は解決したし、そこに出てきた人たちは私が絵本を読み終えてもきっと幸せに暮らしている。
世界を愛して、それと別れる寂しさが好きだったのかもしれない。

『ジラフとアンニカ』は、大人になった私にそんな気持ちを思い出させた。
いつもスマホゲームを紹介しているが、今回はPCで遊んだゲームが好みだったので紹介してしまう。好きな何でも紹介してOK、それが個人ブログ。

『ジラフとアンニカ』は、は、この世のどこともわからない不思議な島スピカを舞台に、記憶を失った少女アンニカの冒険を描く“ハートフルアドベンチャー+リズムゲーム”とされている。
が、遊んでみた私の感想を言うなら、最初の印象は"アンニカが可愛いゲー”だった。

とにかくアンニカの快活さ、素朴な魅力の表現が最高。
感情あふれる表情だったり、性格の演出だったり、そう言ったモノがいちいちツボにはまるゲームだった。
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『ジラフとアンニカ』では、多くの場面でコミック形式でストーリーが描写される。このときの表情や体の動きが、すっとぼけていて、かわいい。
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▲コミックには3Dでは出しづらい味があって、コミックを見たあとで3Dのアンニカを見るとそのイメージが投影され、さらにアンニカが可愛く見える仕掛け。

フィールドを調べたときのセリフもまた凝っていて、「この子、かわいいんですよォ!」という作者のプッシュが伝わってくる。
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とくに好きだったのは食べ物を食べるたびにセリフが変化するところで。
あまりにいい食べっぷり「おー、もっと食べな」と、子供に食べ物を上げるおじさんになってしまった。
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子供と一緒に遊んでいると、遊んでいる側の大人までつられて子供のテンションになってしまうことがある。
それと同じように、アンニカを見ているとだんだんと童心が呼び起こされていく。

ゲームの序盤、30分ぐらいで森の魔女リリィに出会うのだが、その頃にはゲーム……というより、アンニカに引き込まれていて、幻想的な森を前に「うわー!ドキドキする!」と、アンニカと同じような感想を抱きながら遊んでいた。
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基本はスティックで歩くシンプルな3Dフィールドアドベンチャー(ゲーム進行とともにジャンプやダッシュなどアクションが増えていく)だが、アンニカと自由にあちこち動き回るのは楽しかった。
まさに、"アンニカが可愛いゲー”。
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気持ちがアンニカに重なると、島に用意されているなんてことない仕掛けを見つけては楽しみ、アンニカの反応に一喜一憂し、エンディングまでの6時間はあっという間に過ぎ去った。
私が好きだったのは、やり込み要素の「ネコの画集め」。
フィールドに隠されたネコの画を集めるだけだが、妙に個性のある絵が多い。
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あと、島の各所にある顔出しパネル。観光名所などにあるアレ。
普通のゲームではこんなモノがあってもなんともないのだが、アンニカのテンションに引っ張られていると楽しいものになってしまう。
童心を思い出す、という点では魔法のようなゲームだった。
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といった感じで、アンニカの魅力にやられてクラクラしつつ、猫の絵を集めたり、観光地のパネルで写真を撮ったりしてると、ゲームは瞬く間に進んでいく。
そして、ゲームの終わりが見えた頃にはプレイヤーはこの世界の住人になっていて……最後の最後で「もう少しだけこの世界を見ていたい」と、後ろ髪を引かれるような気持ちで終わる。

これは素晴らしい体験だった。
本当に、スタジオジブリのアニメだか、良質な絵本だか、そう言ったものが終わってしまうようなさみしい気持ち。
私は「ああ、またゲームが終わった」と機械的に受け止めるタイプなのだが、このゲームに関してはアンニカにつられて心が無防備になってしまい、完全にエンディングにやられてしまった。
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おっと、いっきに好きな場所だけ語ったらまったくゲームの基本ルールを紹介してなかった。
本作ではスピカ島の人々と会話し、お使いクエストなどをこなしつつアンニカや島の謎に迫るアドベンチャーがメイン要素となっている。
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アドベンチャーパートは「○○を探して」とか「××に話して」とかのお使い系イベントが多いが、ハートフルアドベンチャーと公式がなのるだけあってちょっと不思議かわいいエピソードが多く、普通に楽しめる。
ゲーム内に昼夜の時間の流れがあるため、それを利用したものもあって少しだけ頭をひねることもある。
私の好みで言うなら、カメラで島中を撮影して、芸術家にコメントをもらうイベントはとくに好きだった。
ゲーム内のさまざまなものを適当に撮ると、芸術家はいちいち異なるコメントをつけてくれる。
おかげで「これはどうかな?」と、芸術家に依頼されていない写真をたくさん撮ってしまった(でも保存できる写真枚数が少ないのが辛かった)。

そうして、アドベンチャーパートでイベントをこなしていくと、物語のカギを握る5つのダンジョンが姿を現す。
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ダンジョンでもアドベンチャーパートと同じ操作だが、ダンジョンには敵がいて、トラップがあって、アンニカの行く手を阻む。
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ダンジョンのラストには「ご褒美」が用意されていて、ライバルの魔女リリィとのリズムアクションバトルが始まる。
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これはリリィの発射した弾が画面手前に来たときにボタンで打ち返すシンプルなリズムゲーム。
難易度は低めで、曲に合わせて左右に移動しつつボタンで操作も簡単。
難しいことは考えず、リズムを楽しみつつ、リリィとのやり取りや動きを楽しめて、この世界の「かわいい」を表現している。
というか、ダンジョンで「冒険ゲーム」に偏った心を「平和なゲーム」に戻す役割を担っているように感じた。
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▲リリィは毎回舞台に合わせたコスプレで登場する。あと、リズムゲームパートはEASY~HARDまで3段階の難易度が選択できるので、リズム感がなくても遊べる。

で、「アンニカの様子を見る→世界観を楽しむ→ダンジョンを冒険→リズムゲームで落ち着く」を繰り返すようにゲームは進んでいく。
正直に言えば、ゲームの体験としてはパーフェクトではないと思う。
たとえば、キャラクターの動きはふわふわしているし、ダンジョントラップの一部はつらくて童心を忘れて「このトラップ、クソか!」と口の悪いゲーマーに戻ってしまったときもあったし、イベントを見失って10分ぐらいさまよって冷めていた瞬間もあった(ナビがもう少し親切だったら……)。
だが、粗がある以上に世界観とキャラの演出、そしてその魅力を活かした展開が好きすぎて「買って良かった」と思えた。

後日、あまりに好みだったので気になって開発者の経歴を調べてみると、DSのリズムゲーム『押忍!闘え!応援団』開発スタッフである斉藤敦士さん(任天堂公式サイトのインタビューにも登場している)が独立して開発したゲームとある。

『押忍!闘え!応援団』と言えば、暑苦しく応援することでいろいろな人がやる気を出し、最終的に世界すら救ってしまうバカな世界観がたまらなく良いお気に入りゲームの1つ。
斎藤さんは『押忍!闘え!応援団』でもアートやおバカ演出担当だったそうで、方向性が違っても世界観を作るのが上手い方なんだろうな、と。
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▲応援団もコミック形式でストーリーが展開していた。ギャグと可愛い、方向性は違えど根底には共通しているモノがある。

好きなゲームの好きな部分を作ったスタッフのゲームはやはり好みに合う。
『押忍!闘え!応援団』のノリが好きだった方にも、このゲームは合うかもしれない。

『ジラフとアンニカ』は現在Steamで販売されているので、すぐさま遊びたい方はSteam版をどうぞ。
2020年8月27日にNintendo SwitchとPS4(サントラなど特典付き!)で発売されるので、ゲーム機で遊びたい方は少し待つことになるが、こちらは特典付きなのでソフト実物やおまけ系が好きならゲーム機でどうぞ。

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