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狂気のこだわりが作る新しい体験『Song of Bloom』レビュー。僕らはこのゲームに何度も気づかされ、何度も驚く

Song of Bloom (App Store 320円 / GooglePlay 360円)
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『Song of Bloom』というゲームは、2019年12月末に登場した怪物であり“新しくも奇妙な体験”だ。
ゲームを多く遊んでいると新鮮味が薄れ、「あ、この系統のゲームは前に見たな」と思うことも多いだろう。
しかし、このゲームはスマホのために作られた新しい体験で、多くのプレイヤーにとって未知との遭遇になりえると思う。

実際、私はこのゲームが理解できず「これはゲームなのか?」と頭をひねった。
そして、内容を理解するほどに何度も発見を楽しみ、狂気の作りこみに驚き、最後には感動してしまった。
『Song of Bloom』というゲームは、2019年に登場したスマホゲームの中でも逸脱した作品で、試すべき作品だと断言できる。

ゲームを起動して最初にプレイヤーが見るものは、抽象的アートとポエムだけ。
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画面をなぞると血が滴るような線がひかれ、ホラー作品のようにも思えるが、結局は何も起きない。
そして、最後までポエムを再生すると、また最初に戻ってしまう。
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▲画面の左上を押すと初期状態に戻ってゲームがループする。これだけ覚えていればゲームは遊べる。

多くのプレイヤーはここで1回立ち止まって悩む。App Storeにもここでアプリを投げ出して「意味不明だった」と★1をつけるレビューも見られる。
実際にその様子を動画でお見せしよう。


多くの場合、初見のプレイでは映像の意味を理解できないかもしれない。
しかし、ビジュアルとサウンドが素晴らしいことは一見してわかるはずだ。

そして、それを見続けた先に素晴らしいものがあると断言できるが、内容を知ると感動が目減りするとも思っている。だから、これ以上は説明しない。
動画を見て直感的に良いと思えたプレイヤー、「体験が素晴らしいゲーム」を探し求めているプレイヤーの方にはこの先を読まずに本作を試してほしいと思っている。

また、このゲームはアート寄りで、万人向けかと言うとそうではないと思う(ゲームキャストの点数はライターの「楽しかった度」なので私は10点満点をつけている)。100人がプレイしたら50人ぐらいは「すごい!」と感動し、30人ぐらいが「楽しめた」となり、20人は「意味不明」となるかもしれない。それでも、たった320円。
半分ぐらいの確率で「すごい!」と思えるならお得な賭け。
気になったら、以下のリンクから試してほしい。

アプリリンク:
Song of Bloom (App Store 320円 / GooglePlay 320円)


さて、恥ずかしながら、この記事は私の敗北の結果だ。
内容を深く説明せず、誰もが興味を持ってくれる文章を書きたかった。しかし、昨年12月から「これは」と思える記事が完成せず、結果としてゲームキャストに新しいゲーム紹介記事が出せない事態に陥ってしまった。
もうこうなると、ネタバレしても書くしかないという白旗だ。この先にはかなり内容に踏み込んだ紹介がある。それを見るのもいいだろう。



よいだろうか。



この先は完全にネタバレを気にせず書いていく。『Song of Bloom』は素晴らしい謎解きゲームだった。
それも、こだわりに満ちており「特別に素晴らしい」と断言できる作品だった。

何よりも驚くのは文章……いや、ポエムへの狂ったこだわりだ。
ゲーム起動後に表示されるポエムは、何周かループして見ると「繰り返しアートを鑑賞して“*”マークを探すゲームですよ」と読めることに気づく。
つまり「ポエムそのものがチュートリアルの役目をはたしている」ことに気付く謎解きになっているわけだ。
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この時点では、「退屈なチュートリアルを謎解きにして、うまくやったな」と思っていた。
が、ゲームを進めるほどにポエムに隠された謎が判明し、絶句するしかなかった。
ゲームを進めるたび、ポエムが別の謎解きのヒントになり、物語になり、同じ文面のまま意味だけが変わっていく。
最初にチュートリアルを担ったポエムが、プレイ中ずっと意味を持ってゲームの中心に存在し続ける。
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そして、最後にはプレイヤーの思考と一体化し、壮大なエンディングを導く。
『Song of Bloom』の文字には、ほとんど無駄がない。
ひと続きのポエムに、チュートリアル、ヒント、ストーリー、これだけの意味を持たせられるのかと驚くしかなかった。

もちろん、『Song of Bloom』の良さはポエムの構造だけではない。
ヒントを見つけて先に進めば、毎回まったく異なる風景が展開し、プレイヤーの眼を楽しませてくれる。
新鮮な謎があり、謎を解くとご褒美が得られる王道パズルの仕組みがある。もちろん、新しい風景もまた意味不明で、謎の一部で、プレイヤーに驚きをもたらす何かだ。
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細部を見ても、信じられないこだわりの産物となっている。たとえば、本作には端末のデザインに合わせて画面が変化する場所がある。固有の機能ではなく、文字通りスピーカーの位置だとか、電源スイッチの位置だとか、“端末のデザイン”に依存した場所があるのだ。
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▲iPhone11、iPhone X、iPadにiPad Pro……ある場所では、どの端末で遊んでも画面のデザインは変化する。

現在『Song of Bloom』はiOSのみのリリースで、Android向けは「検討中」という段階だ。
それは、膨大に機種があるAndroidでは納得いく調整が難しいからだと、容易に想像できる。
本体デザインすら取り込んだ、恐ろしいまでの作りこみの集合体。
それが、『Song of Bloom』だった。

そして、そういった仕掛けやこだわりに驚き、進めると最後にもう1つ驚かされる。
人によっては、『Song of Bloom』のなかに、スマホだからこそ映える、スマホのための物語を見つけ出すことができるだろう。

「スマホだから成り立つ謎解きゲーム」は、iPhoneが登場してからいくつも登場した。
だが、スマホだから成立する謎解きに、スマホでしか成立しないストーリーをかぶせたゲームはこれだけではなかろうか。

『Song of Bloom』を遊べる端末を持っていることは、幸せだ。ここまで紹介してしまうと結構なネタバレではあるのだが、ここまで説明した内容を確認するために『Song of Bloom』を遊ぶ、というのも楽しい遊び方の1つだと思う。iOS端末を持っているなら、試して損はない。

概要:
スマホだから成り立つ謎と物語のアプリ。言葉、演出、すべてに狂ったようなこだわりが見られる

評価:10(名作)

おすすめポイント
インパクトある映像
素晴らしい音楽と音
何重にも意味を持つテキスト
スマホだから成り立つ物語と謎

気になるポイント
アート寄りでプレイヤーを突き放している
一部の謎は難しい(末尾に攻略動画を乗せたので、どうしてもとけなければどうぞ)

アプリリンク:
Song of Bloom (App Store 320円 / GooglePlay 360円)

開発:Philipp Stollenmayer(ドイツ)

HP:http://www.kamibox.de/songofbloom
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中
動画: