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すべてを複製する装置を使い、陰謀を秘めた巨大企業の謎を探る『The Bradwell Conspiracy』レビュー。名作『Portal』を目指し、なりきれなかった1作

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世界を変えるほどの革命的な新サービス“クリーンウォーター・イニシアチブ”。
2026年、電力会社Bradwell Electronicsは、博物館でその発表セレモニーを行うが……謎の爆発によってセレモニーは中断されてしまう。
建物の崩壊で閉じ込められたプレイヤーはBradwell社員の身分証を発見し、身分を偽って社屋に入り、そこから脱出を試みるのだが……この建物には、大きな秘密があった。

『The Bradwell Conspiracy』は、謎解きアドベンチャーと物語が融合した作品である。
パブリッシャーは『Surgeon Simulator』や『I Am Bread』のBossa Studios、開発は『Fable』や『Tomb Raider』にも携わったベテランが在籍するA Brave Plan。
ゲームからは往年の名作『Portal』を意識した演出が伝わってきており、かなりの期待度があったのだが……遊んでみると、かなり惜しいゲームになってしまっていた。

『The Bradwell Conspiracy』は主観視点のアドベンチャーで、バーチャルスティックとジャンプ、そしていくつかのアイテムを使うボタンのみ。
激しいアクションはまったくないので、タッチ操作でも問題なく遊べる。
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物語は“クリーンウォーター・イニシアチブ”の発表を控えた博物館が爆発し、プレイヤーが閉じ込められるところから始まる。
未来のハイテク博物館は電子化されすぎており、停電して非常口がガレキでふさがるともはや脱出手段がないのだ。ここでもう1人の生存者アンバーからの通信を受け取り、お互いに連絡を取りながら脱出経路を探すことになる。
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アンバーとのやり取りは、ちょっと面白い。
『The Bradwell Conspiracy』の世界では、スマートグラスデバイスが普及しており、見たものを記憶し、そのままスマホでメールを送るように他人に送信できる。
気になる場所を見て、スマートグラスで写真を撮るとアンバーが写真についてコメントし、そのヒントを元にゲームは進む。
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とくにゲーム初期は、自由に写真を撮って会話していると、「現代よりちょっと進んだ世界なんだな」という実感があって、この演出はとても良かった。
スマートグラスは身分証にもなっていて、他人のスマートグラスを使って身分を詐称するような謎解きもある。
ゲームをプレイすれば、他人のスマートグラスを利用してプライベートから研究まで、さまざまな情報をのぞける。そういった面白みもある。
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そして、少しゲームを進めるとプレイヤーにはSMPという最先端のハンディプリンターが与えられる。
これは、“サブスタンス”という自在に形を変える材料さえあれば、設計図をもとになんでも作り出せる夢の装置だ。
建物の中には、サブスタンスによって作られた物体があり、これをSMPでスキャンするといつでも、どこでも自由に同じ物体を複製できるようになる。
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SMPを起動し、ドラッグして出現位置を決めると……。
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この通り、同じ物体ができあがる。これを利用して足場を作ったり、パズルを解いたり、部品を作って装置を修理したりと、ゲームはSMPを使用したパズルを主体に進んでいく。
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最先端のスマートグラスのセキュリティホールを利用してBradwell社員になりすまし、SMPを利用してさまざまな困難を乗り越え……そういった中で、プレイヤーにはさまざまな疑問が芽生える。
SMPを実現した技術の秘密、爆発の原因、一向に姿が見えないアンバーの正体、そういったものに思いをはせながら遊ぶゲームとなっている。
博物館もまた医療施設(なぜこんなものが博物館に!?)から地下施設、オフィスまでさまざまな設備を備えており、冒険しがいがある場所だ。
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SMPの仕掛けも、スマートグラスの仕掛けも良い。舞台装置も印象的で、博物館は見た目にも楽しい。
しかし、本作は1つ致命的なミスをしている。
とにかく、ガイドが不足しているのだ。次に行くべき場所が分からなくなり、頻繁に迷う。
また、何かしらの見落としをしていても、アンバーはそれを指摘してくれない。ゲームを始めたころは、アンバーに写真を送って反応を見るのが楽しい。
しかし、しばらくするとアンバーの反応は退屈になるし、ヒントを求めて写真を撮っても「うーん、わからない」と回答するだけでいらだちが募る。
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グラフィックも良い、アイデアも良い。しかしゲーム進行の不親切さで台無しになってしまっている。
アンバーのガイドがもっと親切で、無駄な写真にもさまざまな反応を返してくれていたら……それだけで楽しくなっただろうと思うと、かなり惜しい気持ちになる。

しかし、現実として4時間のプレイのうち、1時間30分は見落としたものを探す時間だった。
ゲームには見るべきところもあるし、日本語訳もばっちりだ。だが、遊ぶとしたら迷ったときは素直に攻略動画などを参考にすることをお勧めする。

概要:
巨大企業の持つ博物館に閉じ込められ、脱出する過程で企業にまつわる秘密を知っていくパズルアドベンチャー。

評価:5(楽しめる)

おすすめポイント
スマートグラスでのコミュニケーションシステム
博物館の環境は印象的
先は気になる

気になるポイント
行き先が分からなくなる

アプリリンク:
The Bradwell Conspiracy (itunes Apple Arcade / Steam)

開発:A Brave Plan
販売:Bossa Studios(イギリス)

HP:https://www.thebradwellconspiracy.com/
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

動画:

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中