ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

大自然と古代遺跡、野生動物と謎の機械の大地を巡る旅『Widower's Sky』レビュー。バグだらけだが可能性を秘めた作品

wiecr-1
開発期間、4年。
人らしきものがほぼ存在せず、大自然のなかを動物と巨大な機械だけが歩き回る古代の世界。
そこに迷い込んだ父子と愛犬を操作し、協力して脱出を試みるサバイバル・アドベンチャー『Widower's Sky』がついに登場した。
本作は『風ノ旅ビト』と『Monument Valley』に影響され、両者を足し合わせることを目標に作られた個人製作のインディゲームで、美しいアートと世界観を特徴としている。

私は2016年にこのゲームが発表されてからずっと待っていたし、読者の皆さんにも「このゲームは期待作だ!」と伝え続けてきたのだが……出てきたものはバグだらけで、普通にはとても遊べない代物であった。
しかし、それを乗り越えてクリアした今だから言える。このゲームは可能性を秘めたゲームである、と。

現在、本作の評判は散々だ。
記事を書いている時点で、Steamのレビューを見れば不評8件、好評1件。わずか1件の好評は「俺はクソゲーにふさわしいクソレビュー動画を作った」という自作動画の宣伝だ。
つまり、すべて不評なのだ。
wie-6
▲こんなに雰囲気がいいのに……。

まず、ゲーム操作などを教えるチュートリアルに進行不能バグがあり、進行不能後に再起動するとチュートリアルは終わった状態から始まる。
そのため、プレイヤーはゲームの仕組みを知ることができない。

チュートリアル後にはステージ選択エリアに移動するが、チュートリアルを飛ばすとここで困る。
このゲームは、能力が異なる父と息子を使い分けて困難を乗り越えるシステムになっている。
父は力持ちで物を持ち運ぶことができ、矢を放って動物や機械生物を狩り、ダッシュで高速移動する能力、さらにはゲームの時間をスローにして行動する“集中力”という能力まで持つ。
たいして息子は歩くことしかできず、大抵は父に背負われて守られるようにして行動する。だが、なぜか息子にしか起動できないスイッチなどが道中には存在する。
r-1
▲赤が父、黄色が息子。キャラクターは非常に小さい。

画面下の“父親・息子・両方”のボタンで動かすキャラクターを切り替えられるが、父と息子が近くにいないと“両方”を選択できない。
ステージ選択する緑のオーブには、親子が同時に触れなければならないが、チュートリアルを飛ばしていると両方を選択しても両方同時に動ける条件が不明で困るわけだ。
wie-5

“両方”を選択できた優良プレイヤーには、空腹システムが牙をむく。
育ち盛りの息子には空腹度と疲労度があり、父が狩りをして食べさせ、定期的にテントで寝かせなければ倒れてステージ攻略失敗となる(父は腹も減らなければ疲労もしない)。
rr-2
▲狩りをして焚火の位置で料理できる。

ステージ選択エリアは特別で、ゲーム終了がない。かわりに息子が空腹・疲労状態だと警告が出て、次のステージに進めない。
ところが、このゲームには生態系シミュレート機能があり、ライオンなどの肉食動物が食べられる動物をほぼ絶滅させてしまう。
こうなると、初心者には手が出ない砲台地域に行かないと食事がとれなくなり、ステージが実質選択不能に。ここで辞めたプレイヤーも多いようだ。

だが、ゲームを再起動すると空腹度が回復するので、これは乗り越えられる。
そうしてステージを選択すると……圧倒的な映像美に驚き、ワクワクできるはずだ。
大草原で生活する動物たち、朽ちた遺跡、なぞの機械たち。動物にしても、ライオンやッキリンなど現実でお馴染みの動物にまじって謎の生物も存在する。
wie-3

ビジュアルが優れているだけでなく、音楽面でも盛り上げがあり、世界観に圧倒される。
wie-8

で、その後にまた現実にひき戻される。
道行く機械や肉食動物はプレイヤーを攻撃してくるが、接触すれば即チェックポイントに戻され、弓矢で倒すことは難しい。
とくにでかい生物・機械は胴体に矢を当てないと倒せないが、矢は上方向を狙えない。よって丘に上がって高さを調節しないといけない。
rr-1
▲白い照準で矢の方向は示される。射程はほぼ無限。場合によってはすごい遠くから射撃することも必要。

敵がいない場所では、地形が牙をむく。
本作にはたびたび細い通路が登場し、気を抜くと簡単に落下してしまう。
しかも、カメラワークが悪くキャラクターが見えない状況が続くこともあり、面倒な視点調整を何度も行わないと簡単に落下してしまう。
また、単に見づらいだけの即死トラップも存在する。
wie-2
▲細い道をひたすらに上る!落ちたらやり直し。

ゲームシステムの問題だけでなく、息子が卵状の生物になってクリア不能になるとか、エレベーターが戻ってこなくなって移動できなくなってしまうとか。
とくに困るのは、プレイヤーがクリアに必要なアイテムを持ちあげた状態で倒れると、そのアイテムが二度とステージ内に登場しなくなるバグ。
これらの症状に見舞われたら、ステージの最初からやり直すしかない。
rrr-1
▲ボタンで上下するエレベーターは、頻繁にバグる。

ゲームとして厳しすぎて、私はサバイバル機能をオフ(息子が空腹・披露しない)にしてゲームをクリアしたが……最後まで遊んだ結論として「このゲームには可能性がある」とは感じた。
ゲームシステムはいまいちだし、演出も動きも安っぽい。しかし、世界観とアートだけは素晴らしいのだ。
rrr-2

ゲーム部分にしても前半は絶望的だが、後半に行くに多少遊べるようになる。
カメラワークは確かにひどいままだが、それを調節しようとすると意図しない場所に意外な物体が見えて世界観が広がったり、前半の意味不明な理不尽イベントに意味が感じられて驚くこともあった。
wiec-4
▲キューブ状の部屋を移動し続けるステージ。カメラを回すといけない場所に何かが…。

イベントアイテムが消失するバグも後半になると対処され、ステージとしても何をさせたいかわかりやすくなる。
長期間制作しているインディーゲームでは「あるある」な現象だが、開発中に作者の技量が上がり、前半より後半が良くできている……つまり、いま手直しすれば全体がよりよくなる可能性を感じた。
ゲーム内の世界観演出についても、後半ほど印象的なイベントや地形も増えて元がいいのに、さらに良くなっている。
wie-6

なんだかんだ言って、美しい自然も、遺跡も、すべてが絵になるのだ。
『風ノ旅ビト』と『Monument Valley』に影響されて考えたというアートスタイルは、言葉だけものではない。
wiec-3

今、このゲームではアドベンチャーゲームのような謎解きをしつつ、ゲキムズ系ゲームのようなトラップ記憶をときに要求され、電流イライラ棒のような精密操作も必要。
さらにバグによって理不尽なやり直しに見舞われる。
おそらく、どのストアレビューもバグ報告で荒れるだろうが、今は皆さんに「ひどいだけではないゲーム」と覚えておいてもらいたい。
wiec-2

いずれ修正されたら、改めてゲームを紹介するつもりだ。
すでに購入したか、この記事のビジュアルを見てどうしてもプレイしたくなってしまった方は……記事末尾にプレイのアドバイスをまとめておいたので、それを見て進めるといいだろう。

概要:
不思議で美しい世界を父と子で冒険するサバイバルアドベンチャー。現在はバグだらけ

評価:4(良くはない)

おすすめポイント
美しく、謎に満ちた世界とそれを彩る音楽
だんだんと判明してくる物語

気になるポイント
ゲームの説明が非常に不足している
チュートリアルが飛ばされるバグをはじめ、進行不能バグ多数
厳しいサバイバルと雰囲気を楽しむことがマッチしていない(サバイバルはオフにできる)
不必要に厳しい操作を要求される通路の数々

アプリリンク:
Widower's Sky (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / Steam)

開発:WhaleoG(カナダ)
HP:http://whaleo.com/widowerssky/
レビュー時バージョン:1.1
課金:なし

動画:


ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信
プレイのヒント:
・オプションでサバイバルモードはオフにする
・射撃時・ダッシュボタンで空を飛ぶシーンでは、スローを発動するとコントロールが効きやすいのでお勧め
・細い道を歩くときは、歩行モードに切り替えた方が良い。走ると落ちるので結果的に短く済む
・中盤から何の説明もなくハシゴやツタが出てきて昇降可能になるので注意
・特にスイッチなどがなければ父と子は一緒に移動したほうが良い
・砲台は死亡覚悟で相打ちで倒した方が良い
・卵になったら多分、ステージ最初からやるしかない
・ステージ開始時は、父しか選択していないので即座に両方選択にすべし
・白い籠に入ったクリスタルは射撃で落として、持ち上げて台座における(でもステージ7の開始時のクリスタルは落とせないので空を飛んで穴を抜けて壁を超える必要がある)