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『アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実』レビュー。『幻想水滸伝』スタッフが集い、キャラクターの関係性描写に重点を置いたRPG

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ゲーム機のRPGなのに100人を超える仲間(ほぼ全員使用可能)がそれぞれの物語、目的をもってアジトに集い、やがて世界を動かすRPG『幻想水滸伝』シリーズ。
そのシリーズのキャラクターデザイン、ゲームデザインなどを務めたスタッフをメインに据えたRPGがFuji Gamesから登場した。
音楽に関しても山根ミチルさん、古代祐三さん、柳川剛さんと有名どころを集めて“ザ・懐かしのRPG"を押し出した本作は……思ったより尖っていて魅力があり、同時に欠陥を抱えたRPGであった。

本作は、『プリンセスコネクト:ReDive!』(以下、プリコネ)系のシステムを採用している。ゲームキャストでは中国で流行り、近年『プリコネ』で採用されて日本でも有名になったRPGシステムを指して『プリコネ』系と呼んでいる。
いくつか特徴を挙げると、キャラクターがオートで動き、プレイヤーの操作は基本的にスキル使用タイミングを指示するバトルシステムが1つ。
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ガチャからキャラクター排出されるが、各キャラクターが最大レア度まで育ち、使いどころがあるようにデザインされ、通常ステージのドロップ装備アイテムを集めることでキャラクターがランクアップする。
また、プレイヤーレベルがキャラクターの最大レベルとなっており、プレイ期間が強さに直結する。そういった仕組みのゲームだ。
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▲装備はRPGでいうところの装備ではなく、進化アイテムと言うニュアンスに近い。

ただ、本作は基幹に『プリコネ』系のシステムを使用してはいるが、プレイ感は結構違う。
リアルタイムのマルチプレイはなく、マルチ要素はAIが操作する他のプレイヤーと競う“闘技場”のみ。ギルドなどは存在せず、競うゲームとしてデザインされている本家中国のゲーム、『プリコネ』系ゲームと比べ、より1人用ストーリーRPGとしてデザイン再構築されている。

メインとなるストーリーは章立てで、各章において異なる主人公が異なる世界に召喚され、世界を破壊する存在・その世界の社会問題と対峙する。
各章に異なるドラマがあり、結末もあり、ラストには戦記物ゲームのようなエンドロールがあり、ソシャゲとしてはかなりの分量。
さらに、独立した物語を貫く“何か大きな物語”も提示されそうな気配も見せており、厚みもある。
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▲内容は楽しめるが、分量が多くて気合は必要。ストーリーに必ずバトルが入るのだが、バトルの意味を感じない展開もあり、そこは気になった。文字表示速度のオプションも欲しい

ここまでは「ガチャがあって、キャラが多く登場するRPGなんですね」という感じだが、『アルカ・ラスト』はそのキャラクターたちの関係性を描くことでほかのRPGにない魅力を持つに至っている。

ゲーム内で前異世界をつなぐ拠点“方船”をキャラクターが生活する3D空間として描き、キャラクターの存在に説得力を持たせているのだ。
方船の景色は現実時間と共に変化していき、キャラクターのいる位置も変化する。
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方船には図書館、食堂、作戦室など様々な部屋があり、ゲームが進むほどに隠された部屋が開いていく。成長感も含めて良い。

また、方船の同じ部屋に因縁を持つキャラクターが同時に登場すると特別な会話が発生し、そこからキャラクター同士の関係性や、意外な一面を垣間見れる。
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食堂においては一緒に食事することも可能で、ここでも専用の会話がられる。
パーティー編成画面ですら、特定の因縁をもつキャラクターがパーティーから離脱したりすると、キャラクター同士が専用の会話で別れを告げる。
『アルカ・ラスト』は、キャラクターの関係性を楽しむRPGなのだ。

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▲編成シーンでの会話は、短いがフルボイス。この作り、イラストも含めて『幻想水滸伝』ファンに向けて作られているのが感じられた。

とくに私が良いと感じたのは、物語を一章分終えるたび、その物語に登場したキャラクターたちとの関係性が変わること。
物語で活躍したキャラクターたちが方船に登場すると、物語中・物語後に抱いた思いを語るようになるのだ。
そこで初めて、「このキャラクターはガチャで出てはきた(※主要キャラは自動加入)が、物語を追えることで一緒に冒険した仲間になったのだ」と思える。
キャラを“ガチャの産物”ではなく、“人”として感じさせようとする工夫を強く感じた。
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また、こういった関係性は物語面だけでなく、バトルシステムにも影響を及ぼしている。
仲の良いキャラクター、因縁を持つキャラクターを同じパーティーに配置すると超強力な“絆スキル”が利用でき、バトル中に仲の良いキャラクターが倒れると遺されたキャラクターが怒りでパワーアップし……。
パーティー編成のとき、単にレア度の高い強いキャラクターを採用するよりも、ある程度絆を考慮して編成した方が強くなるほどの重要度がある。
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▲複数キャラが同時に攻撃する“絆スキル”は超強力。だが、1人でも参加キャラが倒れると使用不可になるため、パーティー編成に悩む。

バトルバランスを見ていくと、適当な編成を許さない、極端なキャラクターの能力付けも目立つ。
前衛は非常に体力があり、中衛は牽制攻撃には耐える体力と大きな攻撃力、後衛は回復能力や絶大な攻撃力を持つが通常攻撃を受けるだけでさっくりと倒れてしまう。
極端すぎる能力をカバーするため、多くの仲間の特徴を把握し、適正なパーティーを組む必要がある。
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ゲーム中の調整もそれを意識していて、ストーリーモードなら回復が重要になる雑魚、範囲攻撃で攻撃力が高い敵を倒さないといけない雑魚など構成に合わせた対応が重要となる。また、ボスともなると特別攻撃力が高い後衛を守ったり、強い攻撃がくるタイミングでバフ・デバフを適時かけるなどパターンの見切りが必要。
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他のプレイヤーのパーティーと競う闘技場でも、正攻法の火力押しあり、耐久力をあげて状態異常で勝つパーティーあり、全体攻撃で光栄を潰して数で勝つパーティーありで、こちらも戦術は多様。
レア度の低いキャラが★3になったときは、使い勝手などの面で元から★3だったキャラをしのぐ強さを見せることもあり、能力面でもキャラクターの差別化が光る。
キャラを使い分ける楽しさを意識してデザインされている。
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▲レア度が上がると、レア度に応じた納得の能力に補正される。

『アルカ・ラスト』はこだわりポイントが多く、褒めようと思えばかなり褒められる。単純に『プリコネ』系のコピーを作ったのではなく、異なる面白さを出そうと細部でかなり変更を加えているのだ。
が、残念なことに褒められるだけのゲームではない。どちらかと言うと、キツイゲームである。
先ほど「キャラクターを使い分けると楽しいはず」と書いたが、その育成が厳しすぎて使い分けるどころではない。
とにかく経験値アイテムが足りず、通常プレイではメインで使用する6人を最大レベルに保つことすら難しい。
メインとなる6人のキャラを育てるだけでもお金も足りない、ランクアップアイテムもそろわない。
とうぜん、サブで使うキャラクターや、後から加入した仲間を育てる余裕などあるわけもなく、たくさんのキャラを使用するコンセプトのゲームシステムを楽しめない。

ところが、ゲームは複数キャラを育てることを要求する。
3パーティーで戦うレジェンド闘技場、1度戦闘で敗北・勝利した仲間が使えなくなる試練の塔では多くの仲間を投入する必要がある。
兵士を率いて戦う“合戦”というバトルがまれに入るが、通常バトルと合戦での強さが異なるため、バトルと合戦、両方で強いキャラクターを育てていないと別キャラを育てる必要がある。
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もう1つの問題は、キャラクターの3Dモデルと演出。
クオリティに大きなばらつきがあり、OKなモデルもあるが、全体的に見ると魅力的とはいいがたい。とくに、各章に登場する主人公の3Dモデルがことごとく微妙。
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▲君、写真と違わないかな?

バトル中の演出でもいまいち迫力、カタルシスに欠けるものがあり、悩ましい。
3Dで描かれる方船の魅力、ボスキャラクターの迫力などはいいのだが……デコボコで粗い魅力のゲームともいえる。
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▲敵ボスは良い。

まとめよう。『アルカ・ラスト』は、単なる中華系RPGのコピーにとどまらないキャラクター描写の魅力、キャラクターの関係性を取り入れたパーティー編成の戦術性など、ポテンシャルは感じるゲームだ。
しかし、キャラの魅力を殺す3Dモデルや演出、バトルの設計を殺す育成難易度がそれを削いでいるゲームでもある。

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▲クオリティの高い3Dモデルもあるんだけど、なんなの、このばらつき。

とはいえ、私は『幻想水滸伝』の残り香を感じ、懐かしさにひかれて遊び続けている。
色々な傷はあるが、プロデューサーレターで「育成・バランスに改善を考えている」とマメに連絡がくるし、何よりクリア済ステージがほぼすべてスキップできるため1日のプレイが15分で終わる(誇張ではない)し、スキップに必要なチケットがプレイするほどに増える(そろそろ999枚になってカンストしそう)という快適さがあり、「改良されるまで待つかな」と思えているからだ。

誰でも、とはいわないが「キャラクターの関係性を考えたり、見たりするのが好き」と言う方なら試してみるのはいいと思う。

概要:
キャラクターの関係性描写を重視したストーリー重視の1人用プリコネ系RPG。育成バランスや3Dに難がある。

評価:5(楽しめる)

おすすめ
キャラクターの関係性描写を重視した演出
幻想水滸伝っぽさを感じる
ザ・ゲーム音楽という感じでBGMが良い
序盤が終わると超短時間で1日のノルマが完了する

気になるポイント
3Dモデル・演出クオリティのばらつき
育成が辛すぎる
バトルの因果関係を理解しづらい

アプリリンク:
アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実 (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
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開発:Fuji Games(日本)
HP:https://arca-last.com/
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:育成ブースト(しても足りない)、ガチャ向けの意志、特別なキャラパックなど

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも色々情報発信中
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