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今までのスマホゲームとは面白さの軸が違う! 中華RPGの異端児『永遠の七日』の斬新さを伝えたい【海外ゲームプレイ録】

海外ゲームが好きすぎて、海外ゲームをライセンスインする仕事についてしまった海外ゲーのプロ、きたむらさんによる中国スマホゲーム紹介第2弾。
1回目の『ライフアフター』これまたNetEase関連作。日本ではDeNAがパブリッシャーとなる『永遠の七日』(中国題:永远的7日之都)だ。
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中国では、『永遠の七日』は2017年11月下旬にリリースされていて、私も2か月間ほどプレイした。その当時の私が最初に抱いた感想は ……。
「このゲーム、イカれてやがる…」
であった。 いい意味で、イカれすぎていた。

※記述内容は中国版に準拠しているため日本版とは内容が異なる可能性があります。

①行動力(スタミナ)が課金で回復しない
なぜ『永遠の七日』が“イカれてる”と思ったのか。最初に述べてしまおう。
『永遠の七日』におけるプレイヤーの最大目的は、行動力(いわゆるスタミナ)を消費してゲームを進め、ストーリーを体験することなのだが……。
行動力は時間経過によってしか回復しないらしい。
……もう1度言おう。

行動力は時間経過によってしか回復しないらしい。

…?
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▲日本語ではないが、上記は行動力についての説明。ショップのどこを探しても行動力回復アイテムは見あたらなかった。

通常、スタミナ制を採用するゲームでは課金でスタミナを購入できるから、その気になればどんどんゲームを進行できる。
『永遠の七日』ではそれができないから、行動力が尽きたら何もできない。
というか、待つことしかできない。

スタミナが尽きたとき、回復手段がひたすら待つだけなんてスマホゲームとしては前代未聞だろう。
これを「イカれてる」と言わずしてなんと言うのか。
ちなみに、行動力を消費せずに遊べるコンテンツも用意されてはいるのだが、それらは1日または1週間単位で遊べる回数が制限されているものもある。

なぜこのような仕様になったか、さすがに開発者インタビューでもしない限りはわからない。だが、もしかしたら、という自分なりの答えが2つある。
1つはシンプルにゲームの世界観(後述)に合わせたから、もう1つはプレイヤーのコンテンツ消化速度を運営側が制限できるから、である。

配信時段階で用意されているコンテンツを、熱心なプレイヤーがあっという間に消化してやることがなくなってしまう、いわゆる「やることない問題」に多くのゲーム運営者は悩まされてきた。
しかしこのようにゲームを進捗させる行動力の量を運営側が実質的に管理することでコンテンツの消化に歯止めがかかるし、「どんなに進んでいる人でもこのくらいだ」というのが明確に分かるのでコンテンツを追加するタイミングを決めるのにも役立つだろう。
何よりマルチシナリオ制を採用し、それをウリにしている本作にとって開幕から怒涛の勢いで全シナリオを読破されてはひとたまりもない。それをこういったやり方で阻止しているとも考えられるのではないか。

②マルチシナリオ
限られた行動力を使用するメインストーリーもまた、イカれている。
先にも少し触れたが、なんと7日間を1つの単位とし、その間の過ごし方や選択によって結末が分岐するマルチシナリオ制を採用しているのだ。

『女神転生』シリーズの“ロウとカオス”のように誰に利するか、何を信じるかといった選択を迫られ、その決断によってキャラクターの生死も含めたストーリー展開が大きく変わっていく。
自身の選択によってキャラクターを死なせてしまったときは「あの時もう一方の選択をしていれば…いや、それよりも前のあの時に別の行動をとっていれば…」などと後悔することもあるだろうが、当然やり直すことなどできない。
しかし、それを経験したからこそ、悲しみを繰り返さないために「次はこうしよう、ああしよう」という意欲が湧き上がってくる。
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▲何かを選ぶということは何かを諦めることでもあると再認識させられる。

ちなみに、選択肢を突きつけられる場面では他のプレイヤーはどちらを選択したのかがパーセンテージとして可視化されて表示されるという一風変わった機能も備わっている。
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7日間を生き抜いてエンディングを迎えると2周目が始まり、再び1日目に引き戻される。本作のキャッチコピーである「終わらない終末がはじまる。」とはこういうことだ。
以降も繰り返しで、前周に獲得したゲーム内資産のうちシナリオに関わらないものは引き継げる。

③7日間の進行方法
続いて7日間の進行を説明しよう。
1日のうちプレイヤーが行動できるのは9時から21時までの12時間で、なんらかの行動をするたびに1時間が経過する。つまり、12回行動できる1日が7日間続くので、1周での行動可能回数は84回で固定されている。

行動力の上限は240で、1回の行動で20消費し、6分ごとに1回復する。つまり1回の行動に必要な20回復するのにちょうど2時間かかる。上述の通りゲーム内の1日を進めるためには12回の行動が必要であり、1回行動するのに2時間かかるのでゲーム内の1日を進めるための行動力は現実の1日が経過することでぴったり回復することになる。それが7日間続くのだから、ちょうど現実の1週間でゲームの1周が終わる計算になる。

そして上限に達した行動力は「行動力を240回復するアイテム」に変換することができ、15個までストックできる。なので毎日コツコツ遊ばずに、余裕のある時間にまとめて遊ぶこともできる。
次に行動力を消費する行動だが、大別すると“バトル”と“巡回・建設・開発”の2つに分けられる。

“バトル“は3DアクションRPGの要領で、最大3人の部隊を組んで1人を操作して戦う。
操作キャラを切り替えるとHPが少し回復したりスキルのクールタイムがなくなるなどのメリットがあり、切り替えには敵を倒すことで増える専用のゲージを消費する。
あまり難しい操作は要求されないし、オート機能もある。前周にクリア済みのステージはスキップできるので片手間でもプレイ可能だ。
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▲バトル。画面を見ると何となく動きは想像できるのでは?
 
一方、“巡回・建設・開発”はかなり複雑だ。
いずれもクリアした地域に対して行うことができ、“巡回“では特定の地域を訪れることでメインストーリーの進行に必要なイベントを発生させたり、キャラクターの好感度を上げることができる。
“建設”は様々な施設を建てることができ、“開発”は建設可能な枠を増やすことができる。
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▲救急センターのような施設もあり、これらもストーリー分岐に影響してくる

また、ゲーム内には“幻力”・“科技”・“情報”という3つの数値があり、施設の建設によりこれらの数値を管理できる。
それぞれの値をざっくり説明すると以下のようになる。

幻力:各地域には幻力障壁という値が設定されており、定められた値よりプレイヤー側の幻力が低いとバトルの際に敵が強化される。なので、幻力を上昇させる施設を建設して各地域の幻力障壁値を超える状態でバトルすることが望ましい。

科技:施設を建設するための技術力のようなもの。施設の中には科技の値が低いと建設できないものもある。

情報:ストーリーの中盤以降、対立する陣営の行動を阻害したり、プレイヤーに降りかかるデメリットを事前に解消する必要が生じる。そのために必要な値で、特定の施設の建設により上昇させることができる。
とはいえ、全てのイベントに対応するには膨大な値が必要になるので、対応の取捨選択を迫られる。

ネタバレにならない程度に述べておくと、ストーリー分岐の際にこのタイミングまでにどこに誰を連れて巡回するとか、この施設を建設しておかなければならないといったシビアな条件もある。

④キャラクター
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 本作にはキャラクター自体にレベルの概念はなく、プレイヤーレベルと同期する。なので新しいキャラクターを獲得して「また頑張って育てなきゃ」というのはない。またレアリティはあるものの全キャラクターが最高レアリティまで成長するので性能差はそこまで気にしなくてもよさそうだ。

キャラクターには戦闘におけるHPとは別に「疲労値」というパラメータが存在する。上限は100で、バトルや巡回などの行動をさせるごとに5減少し、0になると行動不能になる。毎日21時になると「深夜食堂」という機能が開放され、任意のキャラクター3人の疲労値を一定量回復できる。そのためこれらの行動をする際は特定のキャラクターに任せっきりにするのではなく、複数のキャラクターを起用して持ち回りで行うのが望ましい。

また、メインシナリオと並行して、キャラクターの好感度を上げると固有のストーリーも発生する。好感度はバトルか巡回で起用する、またはプレゼントアイテムを与えることで上昇する。

加えてキャラクターには巡回力・建設力・開発力の3つからなる「才能」というパラメータもある。これは先述した巡回・建設・開発に関係するものである。これらの行動の際はそれぞれ巡回力・建設力・開発力なるものが要求され、派遣したキャラクターの才能の値が要求を満たしてないと行動を実行できない。キャラクターによってパラメータに差があるので、各行動が得意なキャラクターを優先して起用するとよいだろう。
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▲たとえば、アントネーワというキャラクターは、巡回力は低いが建設力は高いので建設の際はとても頼りになる 

さらに特徴的な要素として、キャラクターの染色がある。
本作のキャラクターはもともと色彩豊かだが、加えて衣装を多彩なバリエーションでカラーリングすることができ、文字通り自分だけのキャラクターを作り出すことができる。
ときには染色したキャラクターを各プレイヤーがエントリーして、人気投票を行うイベントも催されている。

⑤課金要素
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本作での課金通貨の使い道はガチャのほか、キャラクターの衣装や染色のための道具、そしてキャラクターの強化アイテムなどの購入になる。
とくにガチャは異質で、日本でお馴染みの10連はない。
ガチャを始めると6つのアイテム(レア度だけがわかる)が表示され、そこから1つずつ選んで品物をを入手できる。欲しいものがなくなったときは途中で新しいラインナップにして新たに引き直せるが、6つ全てを取得したときはボーナスアイテムがもらえる。

⑥ちょっと嬉しく珍しい機能
あと、もう1つ。課金要素とは違うし、重要度も高くないが、珍しくてちょっぴり嬉しくなる機能も紹介しておく。
それは、ゲーム起動時のTOP画面の画像をプレイヤーが任意に変更できる機能だ。
ストーリー進行中に多くのイベントCGを獲得できるのだが、その中から気に入ったものをTOP画面に設定できる。プレイヤーごとに起動時の画面が違うというのは面白いし、その人の好みが垣間見れるかもしれない。
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▲中国版では現時点で200以上のイベントCGが用意されている 

終わりに
詳細を説明する中でだいぶ長くなってしまったが、私が声を大にして言いたいことは、「本作のプレイヤーは、これまでのスマホゲームとは異なる体験をするだろう」ということだ。
本作のプレイフィールは、スマホゲームというよりもゲーム機の作品をスマホでプレイするのに似ている。許された84回の行動を1つでも無駄にすれば、望むエンディングにたどり着けないこともある調整。
行動力をどのように割り振れば良いのか、どの選択がどの結末につながっているのか、失敗は許されない厳しさとも向き合い、悩みつつも手探りで進まなければならない。課金で行動を増やすこともできない。そのシビアさこそが本作の楽しみの中心である。
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▲昔のゲームを攻略するかのように、行動を表のようにメモ・管理して攻略にあたると攻略が捗る。中途半端な行動は失敗を招くので、精いっぱいやり切った方がいい。

1周目の段階では開放されていないコンテンツも多く、キャラクターの強化や建設や開発といった要素も複雑なためゲームの流れを理解するのに精一杯で満足のいくエンディングは迎えられずに絶望してしまうかもしれない。

しかし、回を重ねるごとに新たな道筋が顔をのぞかせるのも本作の魅力で、大切な人を守るために世界を捨てるか、大切な人を犠牲に世界を救うか。わずか1週間という限られた時間でもがきながらどんな結末にたどり着くかはあなた自身の「選択」にかかっている。

正直、大衆受けするタイプのゲームではないと思う。
しかし、既存の基本無料ゲームに飽きてしまった人や、有料スマホゲームやゲーム機で好んで遊ぶ人には『永遠の七日間』をぜひプレイしてみてほしい。
少なくとも最初の2~3ヶ月は新鮮さと複雑さとが相まって、面白いゲーム体験を味わえるのではないかと思う。
 
だから、アプリがリリースされてすぐ、日本版の攻略が確立される前に(行動力が制限されているため、企業の攻略サイトですら完全な攻略は不可能だろう)遊んで、このゲームのイカれっぷりを最大限に味わってほしい。

関連リンク:
【公式サイト】永遠の七日|マルチエンディングRPG

ライター:きたむら
趣味で海外ゲームを遊んでいたら、いつの間にか会社で海外ゲームのライセンスインの仕事をするようになっていたというガチの海外ゲーム好き。