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スマホゲームの未来を作って去った『Infinity Blade』シリーズの歴史。Appleの支援と栄光、新作とソシャゲ版の挫折を振り返る

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2010年9月、Apple の発表会で『Infinity Blade』が紹介されたときの興奮は、今でもまだ覚えている。
それまで Nintendo DS クラスの映像しか出せなかったスマホに、最先端の携帯ゲーム機のようなビジュアルをぶち込んできたのだから、もう驚きしかなかった。
当時はまだ「発展途上」であったスマホだが、大手ゲーム会社の Epic Games が、すごいゲームを出すことで「これからの時代に必要なゲーム端末」となった。
少なくとも、私の中では決定打だった。
……そんなゲームも時代の流れには勝てず、2018年12月10日に配信終了となってしまった。そこで、今回はシリーズを振り返ってみようと思う。

最初の驚きは、2010年9月 Apple の iPhone 4 発売の発表会だった。
大作ゲームに使われる高級なイメージのゲーム製作ツール『Unreal Engine 3』がスマホに対応し、Appleと協力して『Project Sword』なるゲームを開発しているという。
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Epic Gamesの公式動画より

その後、間髪入れずファンタジーの市街を歩き回れるデモ『Epic Citadel』リリース。
圧倒的なグラフィックに iPhone ユーザーが熱狂し……。
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2010年12月9日、iPhone 4 の発売と同時に『Infinity Blade』が発売される。
自由に街を歩き回れない(ポイント指定方式)に賛否はあったが、そのグラフィックはプレイヤー全員を満足させた。
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そして、1対1の限定したバトルとはいえスマホで快適にアクションできること、卓越した映像で現実的にゲームが動くことを見せつけ、スマホゲームの未来を示した。
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この当時の様子は、2つのストーリーで振り返る『Infinity Blade』。時代に愛されたスマホ最高の成功者の姿の記事で語っているので、詳細はぜひそこで見て欲しい。

続いて、翌年。『Infinity Blade』はさらに驚くべき躍進を見せた。
2011年12月9日に、『Infinity Blade II』は iPhone 4 の発売と同時期にリリースされて熱狂的に迎え入れられたのだ。
この年の新端末、iPhone 4 には Retina ディスプレイ(現代に通じる高解像度のスマホディスプレイ)が搭載されており、これが目玉だった。
そして、美しいディスプレイの力を見るなら、このゲームを買うもの、という流れがあった。
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ゲームとしては巨大生物との戦い、ヒロインの登場と2種類の戦闘スタイルで順当な拡張でしかなかったが、ゲームは驚くべき成功を遂げる。
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初代作品は発売6カ月で1,000万ドル(およそ11.3億円)、『Infinity Blade II』が出て1年と2カ月後には6,000万ドル(およそ65億円)の売り上げを突破しているのだ。
この時期、『Infinity Blade』の存在はスマホの未来を示す指標であった。
この『Infinity Blade II』については、物語を知ると3倍楽しい『Infinity Blade II』。大ヒットで分断された物語を語ろうで詳しく書いているので、見て欲しい。

さらに、2012年2月20日。
初代『Infinity Blade』のバトル部分を抽出した『Infinity Blade Cross』というソーシャルゲームが Mobage(現DeNA) に登場する。
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ただ、『Infinity Blade』で魅力的だった世界観がスポイルされ、課金するとしても簡単に全アイテムが手に入るオリジナル版が安価で売られているし……ゲーマーとしては微妙。
また、『Infinity Blade』はバトルがシンプルで、新しい装備を手に入れて乗り換える成長のゲームだった。
これが「なかなか手に入らない新しい装備まできついアクションを要求され、シンプルだから飽きも早い」になって目も当てられなかった。
結局、『Infinity Blade Cross』は2013年の4月22日にサービスを終える。

とはいえ、これは日本独自の展開であり、世界的な影響はなかった。
『Infinity Blade』は相変わらず注目され続け、2012年3月7日、Apple の iPad 発表にあわせて『Infinity Blade:Dungeons』が発表される。これはハック&スラッシュの『ディアブロ』系ゲームで、従来のシリーズに飽きていたゲーマーにも歓迎を持って迎えられた。
Epic Games は、このゲームのために米国に Impossible Studio という新規開発スタジオを設立するが、ゲームは延期を重ね、2013年7月に開発中止発表と共にスタジオも解散する。
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この後、2015年に『Infinity Blade Collection』総額300万ドルを超えるゲームアセットが Unreal Engine のマーケットプレイスで開発者向けに公開され、ゲーム開発者を助けている。
また、本作の物語としては前2作から数千年前にまでさかのぼり、インフィニティブレード誕生秘話につながる物語が語られる予定だったが、それは途絶えてしまった。
そこで、『Infinity Blade III』のオープニングでは剣の誕生の様子が補完されることになる。
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▲ちょっと浮いていたオープニング。『Infinity Blade: Dungeons』発売中止がなければ、これはなかっただろう。

続く2013年9月18日、またもや Apple の発表会で紹介され、『Infinity Blade III』が iPhone 5 と共に発売。
グラフィックはさらに美しくなり、これまでの寂しげな世界から一転して人々が生活している様子も描かれる。
『Infinity Blade: Dungeons』の登場人物とみられる鍛冶屋も。
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攻撃を防御できない超巨大ドラゴンとの戦い、6種類の武器が追加されてゲームの構成もよりハードに。
ただし、難易度もハードでゲーマー向けになっていた(のちに調整されるが、それでも全作品で一番難しい)。
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物語はエンディングを迎えて収束し、原始的なオンライン共闘(レイドボス)のクラッシュモブを遊ぶこともできた。
負けると武器を取られる超凶悪ボス蒐集者との戦いなど、やりこみ要素も深く、まさに最終作。
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だが、ソシャゲブームは『Infinity Blade』を放っておかなかった。
2016年に『Infinity Blade III』を流用した『Infinity Blade Saga』が中国向けにテンセントからリリースされる。Android でも遊べる唯一の『Infinity Blade』だ。
が、これは評価は低くて日本にくる気配もない。
このシリーズはグラフィックが良くとも、ゲームシステムがソシャゲに向いていない気がする。
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そして、2018年12月10日にシリーズ配信終了。サービス終了のお知らせを見る限り、当面は続きが開発される様子はない。
ゲームシステムに寿命が来ていたので、『Infinity Blade: Dungeons』で多ジャンル展開に失敗したのが悔やまれるが、1つだけ言えることがある。
少なくとも、『Infinity Blade』は常に素晴らしいタイトルだったし、それを開発した ChAir Entertainment の新作『SPYJINX』も期待できるということだ。

一世を風靡したタイトルは、いつか蘇ることがある。そのときを待って、今は新作を頼みにしておこう。
何やら Epic の『フォートナイト』でも動きがあるようだし。 そして、今日のところは在りし日の記事を見つつ、消えたシリーズに思いをはせたい。

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