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物語を知ると3倍楽しい『Infinity Blade II』。大ヒットで分断された物語を語ろう - 32bit遺産第7回

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iOS11で遊べなくなるゲームを紹介する32bit遺産第7回は第5回に続いて『Infinity Blade II』だ。
2つのストーリーで振り返る『Infinity Blade』。時代に愛されたスマホ最高の成功者の姿
『Infinity Blade 2』は、大反響を呼んだ1作目の影響を受け、そのままその人気を引き継いだ。
個人的には、2作目が一番お気に入りの『Infinity Blade』だ。システムも、難易度も、ボリュームも、すべてちょうどよかったように思う。
物語的にも最も興味深いのだが……前作の大ヒットは派生作品を生み、シリーズを単体でストーリーがわからない怪物に育て上げた。今回もまたネタバレ上等でストーリーを解説し、本作をより楽しめるように案内したい。

※記事を執筆した後に64bit対応したので、本作は32bit遺産ではなくなった。万歳!

初代『Infinity Blade』をヒットさせたChAIRは、初代のアップデートと並行して2作品目を作っていた。
そして、2作目をヒットさせるために一風変わったプロモーションを行うことにした。
それは2作目の発売前に広告費をつぎ込んで小説『Infinity Blade: Awakening』をリリースし、前作と『Infinity Blade II』の間のストーリーを補完しつつ期待度を上げることにしたのだ。
この大胆な選択の背景には、Appleの発表会での紹介が約束されたであろうChAIRの余裕があったように思える。ほかのメーカーには真似しづらい作戦である。
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とはいえ、iOSゲームの宣伝においてAppleの発表会以上に有効な場所はないから、それでも問題はなかった。
iPhone 4sは飛躍的な性能アップを果たし、その発表会でお披露目された『Infinity Blade 2』は、昨年に続いて新しいiPhoneを買ったら一緒に買うべきものとして認知された。
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▲クリックで拡大してみると、iPhone 4Sでプレイしたときに立体感が全然違うことがわかる。

そしてリリースされた『Infinity Blade II』は、いま見るとシリーズの中でも特に遊びやすく、バランスが取れている優秀なタイトルだったと思う。
リリース時は最終ステージとニューゲーム+(クリアして2週目以降)にまつわるバランスやiCloudセーブの問題を抱えていたものの、現在はこれも修正されていて改めて遊ぶと「ああ、よくできているなぁ」と思わされる。
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グラフィック面は言うまでもないが、ゲームシステムの基本は変わらずとも武器が3つに増えたのがまず大きかった。
剣と盾で戦う前作のスタイルに加え、軽快に避けまくれる二刀流、重厚な一撃を加えて遊べる両手持ち武器でプレイの幅は大きく広がった。
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また、巨大生物の追加も『Infinity Blade II』から。
半分の敵は前作からの流用ではあったが、武器スタイルによって防御方法が異なること、パリィタイミングが良いほど敵が硬直するシステム、パーフェクトパリィ時の特殊技の追加によって新鮮さはあった。
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ジェムを装備に埋め込んで強化する要素も加わり、マニアックなところではジェム合成で凶悪なジェムを作る楽しみも増えた。クラッシュモブというオンライン要素も加わり、世界中のプレイヤーがミッションをこなして報酬を手に入れる一種のレイドも可能となった。
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探索面では宝の地図を購入してヒントをもとにアイテムを探したり、鍵付きの宝箱を開けるタイミングを考える要素も2作目から。宝箱の鍵やルーレット(ガチャ)が課金要素とも一部で言われていたが、普通にクリアする分には何も問題のないバランスであった。
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マップの広さはおよそ3倍。単に探索できる場所が3倍になっただけでなく、できるだけ驚きを提供するように配慮されていた。マップの終端には4種類のボスキャラクターが待ち受けており、それぞれに個性的な登場シーンが用意されており、特にストーンデーモンの登場シーンは誰もが驚いたことだろう。
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初登場時の「iPhoneでこれが動くのか!」という未来感は薄れても、武器が3種、マップが3倍で前作を超える堅実な面白さを提供していた。
3作目の『Infinity Blade III』はマニアックになりすぎた感があるが、2はシステムも理解しやすい範囲だし、プレイヤーがうまければほぼストレートにラストまで行けることも含めてお気に入りの1作である。

おっと、長くなってしまったが、結果としてプロモーション用の小説は話題になり、Appleの発表で大いに沸き、内容にも手ごたえがあり、『Infinity Blade 2』もやっぱり売れた。
リリース翌年にはシリーズ累計で「小説の売り上げも含めて」6,000万ドル以上を売り上げ、『Infinity Blade』は親会社のEPIC GAMESにとって最も利益率の高いタイトルになったことが発表された。
これはこれでめでたいのだが、困ったことも起きた。
英語圏は小説でストーリーが補完されたが、それ以外の国では初代と2作目の間のストーリーに空白が生まれてしまったのだ。今回はそれを補完したい。

初代作品の解説では、本作の主人公サイラスが記憶を失った不死者の王オウサーであること、彼がゴッドキング(レイドリーアー)を倒してインフィニティブレードを覚醒させるまでの物語であることを解説した。
その後、小説『Infinity Blade Aweakening』にてサイラスは不死者最大の敵である“神秘の探究者”がどこかに捕らわれていることを知る。敵の敵は味方のはず。不死者たちと戦うために、サイラスは神秘の探究者の情報を集める。
その過程でインフィニティブレードを狙う盗賊イーサを捉え、最終的には不死者と戦う仲間としてタッグを組むことになる。
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で、その居場所を知るために情報屋セイディのもとを訪問するが、レイドリーアーたちの罠によってインフィニティブレードを奪われてしまう。
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覚醒したインフィニティブレードは不死者であるサイラスも殺せる。しかし、インフィニティブレードが刺さる直前にイーサが矢を放ち、サイラスにとどめを刺し、転生させる。
そして、サイラスはチェンバーで目覚め、インフィニティブレードを奪ったレイドリーアーに対抗すべく神秘の探究者を開放する決意を固める。ここまでが2作目のオープニングだ。
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さて、ここで疑問として浮かび上がってくるのは、神秘の探究者ガラスの動きである。
初代『Infinity Blade』の直前でオウサーは記憶を失ったことを書いたが、その間になぜガラスは動かなかったのか。その答えは、公式ページのインタビューにあった。
Official Infinity Blade Websiteインタビュー
記憶を失う前にオウサーがガラスをとらえ、落涙の牢獄に幽閉していたらしい。そして、インフィニティブレードをもって長い期間の圧政を敷いた後にガラスが仕込んでいた罠が発動して記憶を失ったのだ。
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結果として、奇妙な状況が発生する。
人間として育ったサイラスは、レイドリーアー率いる不死者の王国と渡り合うため、神秘の探究者を開放しようとする。しかし、実際のところ神秘の探究者は不死者の中で最も邪悪な存在であり、もともとはサイラス自身が封印した敵であることを忘れているのだ。
また、落涙の牢獄を守る不死者たちはサイラスを単なる人間だと思っており、そのように対処する。
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▲不死者たちはサイラスを人間として扱い、警告する。

この状況を事前に理解して本作をプレイすると、噛み合わないセリフの面白さを存分に楽しめるはずだ。
個人的には、この情報を踏まえたうえで見る『Infinity Blade II』の会話はシリーズで一番面白いと思う。
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▲追加アップデートでやってきたヴェイルシリーズの装備を身に着けるとオウサーの過去の恋人も見られる

そして、神秘の探究者を開放すると同時にサイラスは不意打ちにあい、落涙の牢獄に閉じ込められて小説『Infinity Blade Redemption』と『Infinity Blade III』に続く。
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評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
美しいグラフィック
背景を理解するとより興味深いストーリーライン
3種類のスタイルを使いこなすバトル

気になるポイント
長時間プレイすると単調になる。エンディングを見たらIIIをどうぞ
単体ではストーリー全体像がつかめない

アプリDL:
Infinity Blade II (itunes 840円 iPhone/iPad対応)

開発:Chair Entertainment(US)
レビュー時バージョン:1.3.5
課金:ゴールド(ゲーム内通貨。買わないでも問題なし)

ライター:ゲームキャスト トシ

最後になるが、本記事はiPadGamer氏に多大な影響を受けている。彼のブログを読み、ストーリーに興味を持ち、小説版を読むに至り、本記事の執筆につながったことに感謝したい。
ストーリー部分に関しては彼(?)の解説の半分もかけていないので、興味のある方はぜひ上記のリンクから読んで欲しい。
また、Infinity Blade Aweakeningもあわせてどうぞ(Amazon Kindle