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これぞセガなRPG『イドラ ファンタシースターサーガ』レビュー。バトルシステムが面白くて、ほかが抜けている尖り感。というかセガ感

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「うわ、セガっぽい」
セガの誇るRPG『ファンタシースター』の30周年記念作品としてリリースされた『イドラ ファンタシースターサーガ』の感想はまさにセガだった。
バトルシステムの奥深さと、そこから来る育成の面白さで言えば近年の基本無料RPGではかなりの深さをもつ良いRPG。
しかし、面白いところ以外はダサい。「ゲームのメインが面白くできたからイケる」的なノリが漂うゲームでしかない。

『イドラ』の魅力は、バトル部分の楽しさにある。
登場キャラクターは「火水風土」の強弱関係を持つ4属性と、秩序を好むロウと自由を好むカオス、どちらかの精神的な属性を持っている。
そのロウとカオスそれぞれのキャラクター4人で構成されたパーティーを2つ作り、それを切り替えながら戦う8人バトルは、育成・プレイング、両方が面白い。
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本作のバトルは、“属性値”と呼ばれるリソースを軸に戦術を展開するターン制のコマンドバトル。
属性値とはパーティー全体が共通で利用する値で、火属性キャラが攻撃すれば火の属性値が1ポイント、水属性キャラが攻撃すれば水の属性値が1ポイント、と溜まっていく。
属性値がたまると同属性キャラクターの通常攻撃が強化され、一定以上になると強力なスキルが使えるようになる。
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属性値が貯まれば、必殺技“エレメンタルバースト”を使用することも可能。
ただし、エレメンタルバーストは属性値を消費するため、使用後にパーティーの戦力は低下する。
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で、ここで活躍するのが“リバースラッシュ”。これは、ロウとカオスのパーティーの入れ替えつつ敵全体に攻撃し、溜まっているチャージの分だけ属性値も回復する大技。
チャージは1ターン戦うたびに増え、3ターンで最大となる(3ターン貯めるとすごく強い)。
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結果、カオスかロウのパーティーで3ターン戦ってチャージを貯め、エレメンタルバーストを使ってからリバースラッシュで属性値を回復するのが基本戦術が導かれる。
が、このゲームのキャラクターは結構HPが低くて、対等な能力の敵と戦っているとどこかで要のキャラクターが倒れたり、状態異常で属性値が貯まりきらなかったりで、戦術に臨機応変な変更が求められる。
どのようにして計画通りに軌道修正するのか、それとも最大ダメージを諦めて次善の策に移動するのか、悩ましいバトルの深みがここある。
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そして、その面白みが最大限に発揮されるのがレイドボス“イドラバトル”。
イドラとは他のプレイヤーが変身した巨大な怪物のことで、この怪物に大ダメージを与えてポイントをため、ランキング報酬が手に入れるのが現状のエンドコンテンツ(最後に待ち受ける遊び)。
強いイドラに挑んで大ダメージを与えるほどポイントは貯まるが、全体攻撃で即死し、スタミナを浪費する危険性もある。
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そこで、属性値を軸に綿密な計画を立て、シンボルと呼ばれる装備を厳選し、戦術に沿ったキャラクターを育成し……最後に、バトルで適切な選択を選ぶことになるのだが、このあたりを意識するとポイントの伸びが明らかに変わる。
バトルシステムの深さが“絶対に勝てないレイドボスにどれだけ深い傷を負わせられるか”のチャレンジの面白さにつながっているのだ。
★3~★5までのレアリティに別れたキャラクターたちも、★3は何かに特化した役割、★4は使いやすい能力、★5はバトルの基軸になる能力を持ち、すべてを上手く組み込んだ育成計画を立てることも楽しい。
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▲今流行のイドラに対して、どのような戦術で大ダメージを与えるか

さらに、しばらくすると悩むのがゲームジャンル“運命選択RPG”として示される“運命選択”。
各キャラクターと冒険して“絆”値が増えると、各キャラクターの物語である“列伝”に挑むことができる。
列伝の最後にはプレイヤーの意思でキャラクターにロウとカオスどちらの道を進ませるか選択でき、それによって能力と物語の結末も変化する。
単に物語としても面白いのに、ロウとカオスのパーティーバランスをとる選択肢としても意味があるため、非常に悩ましい。
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正直、「このバトルシステムとキャラクターシステムで戦術を組み立ててRPG作ったら面白いから、つくったろ」ぐらいの気持ちで作られたと言っても信じるぐらい、バトルとレイドボスに“イドラ”に挑む仕組みは面白い。
この仕組みが面白かったので、戦術の幅を広げるために課金メニューを見てみると……今度は480円で合計4,000の有償スターストーンが手に入る月額システムが目に入る。有償限定の★5確定ガチャなども引けることに驚いて、気持ちよく金を払えてしまった。
やるな、セガ。
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▲いわゆる闇鍋ガチャだが、配布石が多いため最低限のものは手に入る。4段階の限界突破はあるが、上昇幅は10%~15%なので頂点を目指さなければ誰でも普通に遊べる。

ここまでバトルの魅力を説いてきたわけだが、私の『イドラ』第一印象はかなり悪かった。『ファンタシースター』でなければ、1章最後でやめようかと思っていたぐらいだ。
まず、4章終盤までストーリーが面白くない。
世界観の説明に徹していて盛り上がりに欠けるだけでなく、登場人物の言動もいまいち煮え切らず、主人公も決断するタイプではないので、突っ込み不在の漫才が続いてしまう。
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▲キャラ設定もなんか寒い……。

ただ、列伝を始めるとメインストーリーが補完され、煮え切らない中で各キャラが考えていたことが明かされる。
最後まで列伝を読むと、モヤモヤしていた状況に対して、同じようにキャラクターも悩んでいたことが分かり、「カオス的に対処するか、ロウ的に対処するか」プレイヤーが決断する物語のカタルシスがやってくる。
列伝のドラマのためにメインストーリーで各キャラが決断しないのは理解できるが、列伝は中盤以降のお楽しみなので、プレイヤーを引き留める道具になりづらい。
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▲あとややダサ次回予告とか、セリフのセンスとか、何かが古い……。サクラ大戦だと一周回ってかっこダサさを、普通のRPGに持ち込んだ感じ。

バトル面で見ると、今度はキャラクターの動きがやエレメンタルバーストの演出などが『FGO』と比べて不自然に感じて印象が悪い。
どうしても同じサイドビューだとビジュアルは比べてしまう。
バトルのテンポや駆け引きの面白さはよくできているのに、見た目で損するのはもったいない。
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▲バトル中、主要キャラの必殺技テンションが燃え切らないのも気になる。他作品の必殺技が「ゴォオオオッドゥ、フィンガーァアアアア!」だとしたら、「ゴッドぉフィンガー!」ぐらいの気合いな声。

とどめに、プレイヤー自らが巨大な怪物イドラとして敵と戦うバトルも少しわかりづらい。
イドラになって敵プレイヤーを倒しただけ(オートで戦う放置ゲー)ポイントを稼いで報酬が入るのは良いのだが、なぜ稼げているのか、なぜ稼げていないのかわかりづらく、面白みがわかりづらい。
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ちゃんとやり込めば面白い……もちろん、今時のゲームはどれも質が上がっていて「やればそこそこ面白い」が常識。
その中で、『イドラ』は「やってわかればかなり面白い」ゲームと言える。なのに、少しだけ遊ぶと「期待を外れなソシャゲ」にしか見えない。あと少し、頑張って欲しかった。
気合を入れて遊べば応えてくれるゲームなので、手応えのあるバトルと育成が好きな方は挑戦してみて欲しい。考えて編成して、育成するほどに伸びるRPGが遊べるはずだ。

概要:
バトルシステムとレイドの面白さに気づけば続くが、導入が弱く、面白さに到着しづらいRPG。惜しい。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
戦術の組み立てが重要なバトル
バトルを支える育成・運命分岐とキャラの使い分け
やり応えのあるイドラ戦
音楽が良い

気になるポイント
通常クエストはスキップしたい
立ち上がりが遅いメインストーリー
画面遷移が微妙に遅い
必殺技のセリフなどのセンスがダサ古い

アプリDL:
イドラ ファンタシースターサーガ (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:セガ(日本)
HP:https://idola.sega-online.jp/
レビュー時バージョン:1.0
課金:

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: