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悪の魔術師になり、過去3作の主人公に復讐するTD『キングダムラッシュの復讐』レビュー。スマホ最高のタワーディフェンスシリーズは今回も面白かった

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スマホ最高のタワーディフェンスシリーズと、自信を持って言える『キングダムラッシュ』シリーズ最新作がやってきた。
『キングダムラッシュの復讐(Kingdom Rush Vengeance)』だ。
これまで人間とエルフ、ドワーフが手を組んで様々な悪と戦ってきたが、今回の主人公は過去に封印した悪の魔術師“ヴェズナン”。
オークやスケルトンの軍団を率いて、これまでプレイヤーが操作してきた正義の英雄たちを倒し、平和な国を蹂躙するのだ!
あ、もちろん、今回も最高に面白いので安心してほしい。
ヴェズナンは激怒した。封印から目覚めると、自らの居城が遊園地となり、人間たちの観光地となっているではないか。必ずやあの善人面した人間の王を懲らしめねばならぬ。
さあ、オークやスケルトンを率いて奴らの土地へ進行するのだ!
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……と言っても、ゲーム内容はこれまでの作品からほぼ変更はなく、マップにタワーを配置して、人間たちの兵士を迎撃するタワーディフェンスそのもの。
『キングダムラッシュ』のシステムは初代でほぼ完成しており、大きく変更しなくても十分面白い。だから問題ない。
むしろ、下手に変えても面白くなくなる。
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ここでタワーディフェンスについて説明しておこう。
タワーディフェンスとは、お金(コスト)を支払ってマップにタワー(砲台)を配置し、ゴールに向かって移動してくる敵を倒すリアルタイム戦術ゲームの一種だ。
ゲームが進行すると敵の攻撃が激しくなるが、敵を倒すとお金が手に入るのでプレイヤー側もさらなるタワーを建てて迎撃を行う。これを最後の敵を倒すまで繰り返す。
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地形に合わせて複数種類のタワーを使い分け、火力が高い砲台陣地を築く戦術性、広大な砲撃陣地によるダイナミックな攻防を見る楽しさがキモとなるジャンルだ。
ただ、このジャンルは待ち時間が長く、序盤はタワーが少なくて見た目にショボいという欠点があった。
そこに対して、『キングダムラッシュ』シリーズは、プレイヤーが操作して戦う要素を取り入れて「退屈な待ち時間」を消してしまった。

まず、自由に移動できて強力な”ヒーローユニット”。
マップ上のどこにでも移動でき、特殊能力を持って戦ってくれる。しかもすごく強い。ヒーローの位置が、戦局を左右する。
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次に、一定時間ごとに使用できる“魔法”。魔法を使うことで、一時的に戦局を好転させられる。
これは砲台陣地を最大限に活かす戦術として有効だったし、ゲームシステム的にも「過剰なほどの敵戦力を送り込んでピンチを演出し、魔法で切り抜けてもらう」スリルの演出もになった。
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▲画面左下の3つのボタンが魔法。ヒーローによって1種類が入れ替わる。

で、最後に『キングダムラッシュ』独自の発明である「兵舎タワー」。
兵舎は一切攻撃しないが、かわりに兵士を周囲に出撃させ、兵士は近づいてきた敵と戦って足止めしてくれる(とうぜん、足止めしている間に他のタワーから矢を射かけて攻撃できる)。
この兵士は、プレイヤーが指揮して兵舎の周囲を自由に移動させられた。つまり、プレイヤーは敵をため込む戦場をリアルタイムに変更できた。
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見ているだけのタワーディフェンスに対して、ヒーローや兵士、魔法の操作を加えることで、先祖であるリアルタイム戦術ゲームのような考えて操作する面白さを提供したわけだ。
「忙しいゲームは良いゲーム」という言葉があるが、キングダムラッシュは忙しく、かつハードなリアルタイム戦術ゲームほど無茶な操作はいらない。ちょうどいい塩梅なのが魅力だった。
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続いて、コミカルでキャラクターと世界観。戦いを描いていて、ちょっとスプラッタな演出もあるのに、まったく悲惨さがない。
ちんまりしたキャラクターが戦っている様子も見ていて楽しい。
さらに、ステージには隠し要素が入っていて、特定の場所をタッチすると反応する要素もあったりする。

で、さらに『キングダムラッシュ』を特別なものにしているのが、信じられないほどまとまったゲームバランスにある。
『キングダムラッシュ』のヒットを受けて、中国のメーカーからビジュアルもシステムもコピーした模倣作品がいくつも出た。しかし、それらはどれも面白くなりきれなかった。
なぜなら、バランスがとれていなかったからだ。
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『キングダムラッシュ』の面白さの神髄は、魔法のようなバランスにあった。
何も知らない状態でプレイしても、初心者はダメージを受けながら(敵が本拠地に20回到達すると敗北)クリアでき、上級者はぎりぎりでパーフェクトクリアに到達する手応え。

ゲーム中盤になると1~2回は敗北するけども、少し戦術を見直すと驚くほど簡単にクリアできたりする。
しかも、クリアの方法はいくつか用意されていて、プレイヤーが自分で「この戦術がいいのではないか?」と想像したものがハマる快感がある。
今作もまさにその通りのゲームで、今までと同じように面白かった。
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そこに加えて、今作は日本語の翻訳クオリティも、システム的な親切さも過去最高。
例えば、過去作ではステージをクリアするとその評価に応じて経験値が手に入り、スキルを取得できた。で、最高評価をとらずに先に進むと少し苦戦するので、前のステージをやり直すなんてこともあった。
が、今回はステージの評価に関わらずクリアすればマックスまで経験値が手に入るので、過去ステージをやり直してスキルを育てる必要はなくなった。
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日本語訳は日本のネタを取り込むほど面白くなっており、説明は分かりやすくなり、操作の導線も洗練されてよりよくなっている。
ゲーム展開としても、過去に仲間だった英雄たちが立ちはだかり、それを倒していく演出がまた良い。
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▲ヤバいと思ったら、ジャイアントロボを呼ぶんだ!って、まさかジャイアントロボネタを放り込むとは。ロードオブリングネタも日本の翻訳準拠でぶち込まれる。

さらに、これまでは4種類のタワーを固定で使用していたところ、5種類のタワーを自由に選んでステージに持ち込めるようになったため、組み合わせの自由度も上がっている。
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▲タワーの性能自体は過去作で見られたものだが、5つ持ち込めるのは面白い。

ステージは全部で17。課金要素として追加購入のヒーローやタワーがあることが、タワーは基礎タワーだけで充分多い。
追加ヒーローは少し強くて(価格が高いとすごい強い)バランスブレーカーだが、クリア後に挑む最高難易度でもなければまったく必要ない(もちろん、最高難易度でもなくてクリア可能)。
「もっといろいろ遊びたい」ときにしか買う必要はないので安心して買っていい。
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唯一難点があるとすれば、過去作を遊んでいた方が楽しいということ。
誰でもプレイできる範囲だとは思うが、シリーズ中で最高難易度なので、過去作で同じシステムに慣れておいた方がスムーズに遊べると思う。
何より、過去作で正義の味方を演じていた方が、悪の手先になって人間たちを蹂躙する楽しみが増える。
シリーズ未体験であれば、これまた同じように面白い初代作品『キングダムラッシュ』を遊んでから挑戦してほしい。過去作をプレイしていたなら、今作を遊びまくってOKだ。
(レビュー:Kingdom Rush 2011年ゲームキャストが最もはまったTD)

概要:
悪の手先になって戦うタワーディフェンス。絶妙な難易度でクリアまで手が離せない。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
コミカルで可愛い世界観
手に汗握る絶妙な難易度
プレイ中、最序盤をのぞいてずっと忙しくて楽しい

気になるポイント
タワーを売ると落ちるバグ

アプリDL:
キングダムラッシュの復讐 (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:Ironhide Game Studio(ウルグアイ)
HP:https://www.kingdomrushvengeance.com/
レビュー時バージョン:1.2
課金:
追加タワーと追加ヒーロー。なくても攻略可能。

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: