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契約(課金)するから、もっと演出を良くして! 『マギアレコード 魔法少女まどかマギカ外伝』インプレッション

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『マギアレコード 魔法少女まどかマギカ外伝』は、虚淵玄さんのシナリオと、それを盛り立てるアートや音楽で多くのファンを持つ『まどか☆マギカ』の外伝ストーリーを扱うRPGだ。
このゲームに関しては、すごい期待と不安があった。
f4samuraiという開発会社がゲームを作るという点に期待感がありつつ、もともとの原作アニメが良すぎてその印象を悪くするようなゲームが出てくるのではないか、という不安である。
結論から言うと、本作はまだ未完成の状態であり、ジャッジを下すには早すぎる状態と言えた。

f4samuraiについては、比較的皆さんの馴染みが薄いと思うのでここで紹介しておきたい。一言で言うなら、「神のソーシャルゲーム会社」である。
プレイヤー同士が戦う(PvP)基本無料ゲームを運営すれば右に出るものはなく、絶妙にプレイヤーの求めるものを提供し、戦わせ、課金させてしまう……恐ろしいバランスを実現する会社だ。
実際、私自身も彼らの作ったアンジュ・ビエルジュ』にはまった時期があったが、演出が良い程度のポチポチ系ゲームだったのに、そういった印象以上に売り上げていた。
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その後、『ボーダーブレイク mobile 疾風のガンフロント』を運営し始めたが、3D演出が重い本作はヒットするために(IP的にも)難を抱えていると思われていた。
確かに発表された3D演出は良かったが、いわゆるポチポチ系ゲームは動作が軽くないとストレスがかかる。
しかし、そのハンデをものともせずにまま売上を出してしまったのだ。
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▲iPhone 4s時代に一部この3Dを使っていた重さ…ほぼ遊ばなかったので、どうやって売ったのか本気でわからない

その後、『オルタンシア・サーガ』を制作してまた成功し、私の中では「f4samurai=成功」といえる鉄壁の会社という位置づけである。マギアレコードの開発元を聞いたとき、「f4samuraiに作ってもらえるマギアレコードは幸せかもしれない」と思ったほどだ。
誤解ないように言っておくと、売れたゲームが面白いわけではない。ただ、売れないオンラインゲームは悲惨だ。
基本無料ゲームを運営し、改善するにはお金がかかる。お金がなければ、ゲームはひどい状態で死ぬこともある。しかし、f4samuraiが作れば売り上げをもとに改善され、悲惨な死を迎える可能性は低くなるだろう。

また、今回の脚本はf4samuraiシナリオチームであり、虚淵玄さんではない。そこは不安材料だが、f4samuraiは『アンジュ・ヴィエルジュ』のころからストーリー演出に力を入れており、『オルタンシアサーガ』では自社制作のシナリオを売りにした(実際、初期は良かった)会社である。
ことによったら、すごいものが生まれるかもしれない。
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▲オルタンシア・サーガの売りはストーリー。海外展開でもストーリーが売りだった。

一方で、基本無料ゲームには原作を無視したひどい内容のゲームも多い。f4samuraiは原作を尊重するイメージがなかったので、不安もあった。
もしかしたら、プレイした瞬間に私のソウルジェムが一気に濁りって魔女(※原作では絶望するとソウルジェムという宝石が濁り、最後には人を襲う魔女となる)になってしまうかもしれない……。
そんな期待と不安で迎えたリリース日、私のソウルジェムは濁った。しかし、魔女にはならなかった。

まず、f4samuraiは表面的には素晴らしい仕事をしていた。
サービス開始初日からサーバーは快適に動き、通信はスムーズ。マミさんの首が飛んだり、事前登録特典が受け取れないバグはあったが、すぐに解消された。

ゲームを始めて見ると、まずイラストがすごく良い。
原作アニメを担当するシャフトやキャラデザの蒼樹うめさん、劇団イヌカレーさんが参加しているだけあって、魔法少女の立ち絵から背景までこだわりを感じるつくりである。
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ガチャで魔法少女が登場する際の演出も驚いた。
すべての魔法少女には変身シーンが用意されており、ガチャから出た魔法少女は変身シーンとともに登場する。
レア度が高いほどに変身シーンが長くなるが、レア度の低い魔法少女の短い演出だけを見ても「あ、これだ!」と納得できるクオリティ。
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なお、本作のガチャは魔法少女と装備にあたる“メモリア”がランダムに当たる仕組みとなっている。レアリティごとの当選率はわかるが、個別確率の表示されていないのでここは改善してほしいと思った。
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話を戻そう。そう、とにかくイラスト素材や背景はいいのだ。
魔女のデザインや演出も原作の空気そのまま。不気味な様子だけでなく、バトルシーンの動きや、アニメーションを含めた背景も見事。音楽も良い。
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▲ここまで背景に凝って、さらに背景アニメーションが入ることもある。

さらに言えば、シナリオについても物語の大筋は悪くないと感じた。
本家の『まどマギ』と比べればインパクトが薄く凡庸ではある(これは、虚淵さんが偉大なので仕方ない)が、面白そうな舞台は整いつつある。
また、同じ街の出来事を新主人公のいろは、原作キャラクターと別々の視点で追えるのも良い。
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ところが、そう言った素材は良いのに、その使い方が雑なのが本作の欠点だった。
物語が始まると急にフォントがダサくなる問題が大きく出ばなをくじく。
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また、スマホゲームではシナリオが細切れになり、「こんな話をしている間に敵がっ!」などとバトルに入る展開の不自然さをたびたび指摘される。しかし、本作はそれ以下だ。
どんなタイミングでもシナリオを切ってバトルに入る。それが平和な会話のタイミングでも、敵の存在が示唆されていないときでも問答無用。物語が終わったかと思った瞬間にバトルに入る時もある。
そこはこだわってくれ!
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▲あと、細かい突っ込みどころがあるのも…。

続いてバトル。本作のバトルは、5人の魔法少女で敵を倒すターン制バトルになっている。
毎ターンランダムに配布される5枚のカードから3枚を選択すると、そのカード内容に応じた攻撃が繰り出される。
カードは一定範囲にダメージを与えるBlast、必殺技に必要となる“マギアゲージ”をためやすくなるChargeとAcceleの3種類。そこに魔法少女が描かれており、選択したカードに描かれた魔法少女が指定された種類の攻撃を行う。
また各魔法少女にはスキルが装備でき、一定ターンごとにターンを消費せずにこのスキルで攻撃力を上げたりできる。また、バトル中に3回攻撃するとほかの魔法少女を強化できる“コネクト”なる能力も存在する。magireko-4

これだけを見ると『Fate/Grand Order』に近いものを感じるが、『オルタンシア・サーガ』の要素も踏襲している。
敵も魔法少女も3×3のマス内に配置されており、Blast攻撃によって範囲攻撃を行うのか、ゲージをためるのか、優先度を考えて効率よく倒す戦術がある。
陣形の配置によって能力にボーナスもある。『FGO』と『オルサガ』のハイブリッドバトルシステムといえるだろう。
触ってみた感覚としては、プレイヤーvsプレイヤーの仕組みとしてはよさそうだ。システムの穴をついて戦う喜びあり、かつ極まった所では極限にキャラクターを鍛え上げて★4キャラクターを揃えるようになっていそうだ。

だが、まどマギとしてみたときに話は変わる。バトルで攻撃する際の流れが圧倒的に悪いのだ。
本作では、まずは攻撃するキャラクターが拡大される。
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そして、その後に間髪おかずに敵が拡大されて攻撃に移るのだが……カメラ移動の急すぎて、敵が巨大なときは何が起きているかわかりづらくなる。
毎回カメラが切り替わるので目もちらつくし、2倍速にしてもテンポが悪い。
奇妙な魔女の世界で、キャラクターがアクションするあの魅力を再現できていない。
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▲FGOと比べるのはかわいそうだが、キャラクターを生かしたり、技の全体像を見せる工夫の差が…。

こういった感想を抱きつつ、それなりにプレイした後で感じたのは「私は、何を楽しめばいいのか?」という疑問だ。
魔法少女の立ち絵や変身シーン、敵の姿や背景のこだわりは素晴らしい。しかし、それらを生かすシナリオの演出にこだわりを感じない。
バトルはPvPゲームとしては楽しめそうだが、世界観やキャラクターの魅力を生かしていない。
「キャラクターを愛でる萌えの楽しさ」、「まどマギらしいシナリオを楽しませる」、「PvPゲームで戦う」ことについて、個別の素材は良くても別々に存在していてつながりがない。
このゲームを遊びたいと思わせる特別な要素が、「まどマギブランドだからやる」以外に感じられなかった。それが、私のソウルジェムを濁らせた理由である。

ただ、一方で魔女にならなかったのも明確に理由がある。個別の素材も良いのだが、将来性は感じるのである。
シナリオについては演出手法やフォントの問題を感じる(あと、文字送り速度変えさせてください)が、これは明確に直せる範囲だろう。そして、物語の舞台が整ったところで今後は面白いストーリー上の爆弾が投下される可能性にも期待できる。
PvPの面白さについては、まだランキングも始まっていないが、4fsamuraiだから楽しめると期待したい。まだまだアップデートでの伸びしろに期待できる状態なのだ。バトル演出は大幅に直してほしいが。
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▲今はシンプルなPvPしかない。

現段階で面白いかといわれると、惰性では遊べる程度である。
しかし、3~6カ月後には「f4samurai流のプレイヤー対戦ゲーム」になるのか、「まどか☆マギカのキャラを生かし、シナリオを見せる」のか、アップデートでウリがはっきりして本領を発揮することになるだろう。
そのときまで私は月額課金コースで契約して、魔法少女として活躍することにしようと思う。

今後、本領が発揮されなかったら……そのときは、希望を失った人間が魔女化するのみである。
本作については3~6カ月後にまた記事を書くことにする。その時をお楽しみに。

評価:5(楽しめる)

おすすめポイント
大筋は悪くないシナリオ
素晴らしい音楽
キャラクター立ち絵と魔法少女の変身シーン
魔女の世界演出

気になるポイント
バトルの演出がいまいち
ゲーム個々の要素がつながっていない

アプリDL:
マギアレコード 魔法少女まどかマギカ外伝 (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:aniplex / f4samurai(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:ガチャ、スタミナなど(確率は結構渋い)

ライター:ゲームキャスト トシ

 コメント一覧 (13)

    • 1. そでの
    • 2017年08月24日 22:27
    • 度々言及されているFGOにしても、サービスイン直後はバトルの演出がいまいちで個々の要素が繋がっていないのに、IPのパワーとシナリオでプレイさせていた様な状態だったので、マギレコについても今後に期待したいですね。
    • 2. a
    • 2017年08月25日 01:50
    • 2 「f4samurai=成功」といえる鉄壁の会社
      という位置づけというのは、凄いな
      今までゲームキャストは基本的に信用してきましたが、
      それを転換しなければ
      過去には疾風のガンフロントは売り上げ上位だった
      こともありましたが、遠い過去の話
      今は悲惨です
      3D画面?いつの話でしょうか?
      私は見たことがありませんね
    • 3.
    • 2017年08月25日 05:11
    • >>2
      過去にはこの動画の1:08ごろのような3D演出があったと思うよ。
      少なくともTGSでイベントやっていたとき試遊台で見た気がする。
      https://www.youtube.com/watch?v=IPl0Yyuj5gs
    • 4. 名無しのかかし
    • 2017年08月25日 11:57
    • こいつ「話の途中だがワイバーンだ!」を知らないだろ
      無理やり戦闘をねじ込んで 一人称視点での回想もろくにないFGOはくっそ薄っぺらいSS並みの文章になってんだろうが
    • 5. 管理人
    • 2017年08月25日 12:07
    • ▼aさん
      文中に書いたとおり、f4samuraiの成功というのは売り上げ的な成功(担当したゲームが全て現在までサービスを続けている事実がすごい)であり、面白さについて行っているわけではありません。
      疾風のガンフロントはあのシステムで4年もっているだけですごいと思いますね。
      3D演出は初期の頃に使われていたような記憶があるのですが、私自身あまりやっていないのでどこ、とは言えません。すみません。

      ▼4さん
      そもそも、これが言われ出したのはチェインクロニクルからなんですよね。
      でも、その制約の中でどれだけ面白さを出すかでチェインクロニクルもFGOも他のゲームよりかなり頑張っていると思いますよ。
      FGOのワイバーンについても物語を阻害していると思いますが、終章当たりでかなり軌道修正されて良くなったと思います。
      ただ、その昔記事で書いたとおり、ノベルで一気読みしたいと思っていますがね。
      マギレコはそれらよりはるかにしたデス。

    • 6.
    • 2017年08月25日 14:01
    • マギレコは話の途中でワイバーン以下なんだよなぁ
      それこそ文中に書いてあるがストーリー的には戦ってる描写すら無いところで戦闘挟まるからなぁ
    • 7. 末法少女
    • 2017年08月25日 15:19
    • 戦闘のタイミングは確かにfgoより下だけど、戦闘そのものはサクサク進んで楽しいから許せてる。ソシャゲだから仕方ないね…。心理描写(葛藤等)かなということで納得させることもしばしば。
      殺伐世界なら自然な流れで毎回戦闘できそうだけど、サービス開始当初からそれだとちょっと…。
    • 8. 名無し
    • 2017年08月25日 22:24
    • ソシャゲのクエスト形式のストーリーはぶつ切り・グダグダになるのが宿命だと思ってます

      無理やり戦闘入れないといけないから、どうしても不自然になる。
      昔遊んだタガタメはストーリーが売りだったけど、追手が来た!→倒す→また来た! みたいなやり取りを5セットずつ繰り返して話が進む、みたいなシナリオでした
    • 9. 魔
    • 2017年08月26日 08:49
    • 「奇妙な魔女の世界で、キャラクターがアクションするあの魅力を再現できていない。」
      「FGOと比べるのはかわいそうだが、キャラクターを生かしたり、技の全体像を見せる工夫の差が…。」
      カメラワークの問題はそもそもそれ以前の演出をストレスなく見せる部分での問題だし、FGOもテンポは決して良いとは言えないし、FGOで出来ていることとマギレコで出来ていないことの差異がよくわからない……
    • 10. 管理人
    • 2017年08月26日 23:12
    • ▼魔さん
      FGOはテンポがすごく悪い代わりに、キャラクターの描写は優れているんですよね。
      宝具演出から攻撃まで、すべてキャラクターの魅力を見せるために作られている。
      一方、まどマギはカメラワークは単にポンコツ(別に魔法少女を動かしながら暗転してもいい)、ちびキャラに魅力があるかというと微妙、FGOと比べれば良いですがほかのゲームと比べるとテンポも悪く、お世辞にも褒められません。
      つまり、元があまりよくない上に、キャラの魅力も表現できていないと思います。昔ならいざ知らず、今となっては物足りないですね……。
    • 11. 魔
    • 2017年08月27日 18:48
    • 回答ありがとうございます。
      バトルユニットの演出面での作り込みの差でマギレコはFGOに大きく魅力が劣る、さらにFGO以外のゲームと比べてもテンポが悪い、ということで理解しました。
      マギレコも個別のバトルモーションは一応各キャラ用意されているようですが、キャラ数も絞っている分、もう少し凝って欲しいと思いますね……。
    • 12. w
    • 2017年08月28日 06:09
    • 最近のFGOは割り切って戦闘無い時は戦闘無しの会話だけで進むようになってますよ
    • 13. 松
    • 2017年08月30日 15:58
    • 世界観としてはスピンオフ外伝の美国織莉子が最初から実装されていたり、アニメ本編で戦った魔女の元であると推察される魔法少女が登場しているので、原作アニメ組は「えっこの子まさか…」ってなって楽しめますよ。

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