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FFのゲームブック3冊を1本のRPGまとめた『ファイティングファンタジー・レジェンド』レビュー。日本語訳も十分なクオリティ

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1980年代に流行し、一時代を築いた“ゲームブック”。
その人気の火付け役と言える『ファイティングファンタジー』35周年を記念して、初期の名作『火吹き山の魔法使い』、『バルサスの要塞』、『盗賊都市』の3冊をまとめてRPGにしたものが『ファイティングファンタジー・レジェンド(Fighting Fantasy Legends)』だ。
RPGとゲームブックで表現は異なるが、その内容は間違いなく懐かしのゲームブックのそれ。
凶悪なガンジーも、火吹き山の迷宮も全部この中にある。ゲームブック世代なら見逃せない1作である。

ゲームブックを知らない方のために、その説明をしておこう。
1980年代、読み手の決定で結末が変わる“ゲームブック”という小説が流行した時期がある。
1冊のゲームブックには数百もの“パラグラフ”と呼ばれる小さな物語が記されており、パラグラフの終点にはいくつかの選択肢が示されている。選択肢を選ぶと異なるパラグラフを読むように指示され、その指示に従って物語を読むと、読み手だけの物語が作られた。
原始的なアドベンチャーゲームとも考えられるが、いつでもズル(復活も巻き戻りも自由だ!)できることで生まれる味や、複数の本にまたがって同じキャラクターを冒険させられることなど、独特の面白さに根強いファンを持つ。
まったく知らない方は、GameBook投稿サイトGameBook.xyzなどで遊ぶと雰囲気はつかめると思う。

本作ではまずプレイヤーの分身となるキャラクター作成から始まる。
キャラクター能力には戦闘などの技術、運の良さ、生命力を示す体力の3つがあり、合計が36になるように割り振る必要がある。また、2つの特殊能力を選択して身につけることもできる。
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▲この前に種族選択があるが、単にイメージでゲーム進行には影響ない

技術は主に戦闘で敵に与えるダメージに影響し、運はトラップ回避や偶然に手に入る金品などの取得量などに影響する。
戦闘で攻撃するときは技術と同じ数のサイコロ(1面だけに成功マークが記されている)が転がり、成功マークが出た数と同じだけ敵にダメージを与えられる。
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運判定なら運と同じ数のサイコロが振られて、成功マークが出た数が“目標スコア”以上なら判定成功となる。
オリジナルのファイティングファンタジーとは異なる仕組みだが、これはこれでアリだと思う。
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キャラクターを作り終えると、原作ファン驚きのイベントからゲームが始まる。
なんと、国を脅かす凶悪な魔術師のザゴールとバルサスを倒して欲しいという依頼を受け、まずはニコデマスという男を探すように指示されるのだ。
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ザゴールは『火吹き山の魔法使い』のボス、バルサスは『バルサスの要塞』のボスであり、ニコデマスは『盗賊都市』のキーパーソン。
なんと、3冊に分割されていた物語が1つに統合されていることがわかるのだ。この広い世界に火吹き山も盗賊都市も、バルサスの要塞も存在していて、どこから手をつけるかは自由。大胆なオープンワールド化である。
見下ろしのマップの中で自由に、どこへでも冒険に行ける。
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重要な場所では詳細マップが表示され、街やダンジョンをゲームブック的な進行で探索できる。
ゲームブック的な進行とは、ほぼ一方通行ということ。普通のRPGでは街があれば街の中を行くのも戻るのも自由だが、ゲームブックでは本の性質上でフラグ管理が難しく、一方通行の進行が多かった。
本作でも一方通行進行を採用しており、街やダンジョンをとにかく先に進みながらイベントをこなす方式を採用している。
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たとえば「目の前にはキャンドル通りと、マーケットがある」などと表示され、プレイヤーが移動する方向を決めると次々イベントが発生する。
マーケットのイベントをこなした後にキャンドル通りに出ようとしても、戻ることはできずに次に示される選択肢を選ぶしかない。
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こう書くとイマイチなゲームと感じるかもしれないが、これはゲームブックの雰囲気を良く再現しているし、選択肢に取り返しがつかない緊張感を生んでいてゲームとしてのメリットもある。
文体の乱れや変な訳を見かけるが日本語訳はおおむね良好で、シナリオを読む楽しみもある。いい具合にゲームブックをRPG化した内容になっていると言えるだろう。
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▲アイテムがビジュアル化されているのも嬉しい。

また、ある程度新規プレイヤーにも配慮が行われており、ゲームブックのように力尽きら最初からではなく、体力1で復活できるし、重要なイベントを漏らしても何度も同じ場所にトライできる。
「そんなのは邪道!」と考えるハードプレイヤーの方には1度倒れたら終わりの“ハードコアモード”も用意されているので安心だ。
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▲レベルアップの概念もある。

モンスター図鑑の収集や、クエストの収集(選択肢によって手に入らないクエストもある)など、コンピューターRPGだからこそのやり込み要素もあり、かなり長く楽しめる作品でもある。
このゲームを遊んでいると、「ここにシナリオが追加されて『ファイティングファンタジー』の数十冊分のシナリオが追加されたら……」などと夢見てしまう。
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ただ、完璧な作品とは口が裂けても言えない状態で、単品のゲームとしてはバランスはそれなりとしか言えないし、無理矢理に3つのゲームブックを統合したため、キーアイテムが見つかりづらくなって迷ってしまうこともある。
思い出補正が必要なゲームである。ただ、それを前提に作られているのでファンの期待は外さないだろう。
海外ではアプリでのゲームブック復権が進んでいるが、そう言った流れから日本は取り残されていた。これが売れて、ゲームブックアプリを日本語化する流れが進むことを願いたい。

さて、本作は2種類のプレイヤーにお勧めできる。
1つは往年のゲームブックファン。理由は言うまでもない。
もう1つは当時の空気を知りたいゲームファン。古のゲームブックほぼそのままのイベントは懐かしいだけでなく、新規プレイヤーにとっても新鮮だろう。
店に入れば「買う」「売る」「店主を殺す」など凄まじい選択肢が常に並び、理不尽なイベントの中に説明文を読んでいると正しい行動が分かるイベントも混じっていて油断ができない。この世界観は近年の日本では貴重だ。
どちらかに当てはまるならば、チェックしてみて欲しい。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
懐かしのゲームブックのRPG化
ゲームブックの雰囲気やイベントを再現
十分なレベルの日本語

気になるポイント
新規プレイヤーが遊ぶには辛い
各シナリオのキーアイテムが離れた場所にある
原作のイラストが見られない

アプリDL:
Fighting Fantasy Legends (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam)

開発:Nomad games(イギリス)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画:


ちょっと攻略:
ほとんどのプレイヤーは盗賊都市で魔女の髪(Hag's hair)を探して回ることになると思うが、魔女の髪は黒い塔にある。そして、フラグの関係でゲームをスムーズに遊ぶなら火吹き山から攻略を進めるのが良い。