ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

ウィズローグ、「ウィズらしさ」に苦しむハック&スラッシュゲーム。

wizrogue__2
3DダンジョンRPG『ウィザードリィ』に『ローグ』の要素を合体させた期待作、『ウィズローグ』がついにiOSに登場した。
先行配信のAndroid版の評価は最悪だったので期待していなかったが……iOS版配信とともに大幅にアップデートされ、十分遊べるハック&スラッシュゲームに仕上がっていた。

現在のバージョンは悪評だらけの先行版とはまったく違うゲームなので、食わず嫌いせずにぜひ遊んで欲しい。

では、実際にゲームの説明に入ろう。
ゲームを起動してまず驚くのはそのグラフィック。
ジオラマ風ダンジョン、フィギュア風のキャラクターは掛け値なしに素晴らしい。
wizrogue04

そこに「物」があるかのような質感は、『ウィザードリィ』リアルタイム世代に流行った「ウォーゲーム」とか「TRPG」を連想させ、懐かしさを誘う。
wizrogue05
▲正直、このグラフィックで買い切りゲームを遊びたい。

『ウィザードリィ』と言えば一貫して音楽を手がけてきた故・羽田健太郎さんのイメージが強い。
今作ではタイトーの土屋昇平さんが音楽を担当し、いい感じにクラシック調で、ウィズらしさを演出している。
とくに、ピアニストの羽田さんをリスペクトした渋い「ピアノ+歌もの」タイトル曲は必聴だ。
wizrogue01

ウィザードリィと言えばキャラクターメイクだが、このゲームのキャラクターメイクはガチャである。
サイコロを振り、出目に応じたレアリティのキャラがランダムに排出される。
wizrogue02
▲この画面の革の質感やサイコロの質感も完璧で、『ウィズローグ』をやめてTRPGしたくなる。

ガチャから出てくるキャラクターはレア度が高いほど最大レベルが高く、初期装備も強くなっている。
性格・種族・職業はランダムで、レア度が高くても「ボーグルの魔法使い」など種族と職業がマッチしていないキャラクターは弱い。
ただし、適正な職業に転職すれば問題なく使えるので、レアリティが高いキャラは転職させればOKだ。
wizrogue06
▲中立キャラはどうしても浮くのが納得いかないが…。

さて、前衛3人、後衛3人の6人でパーティーを組んだら、いよいよダンジョン突入だ。
ウィズローグではランダム生成の短いダンジョン(序盤はずっとB3まで)を攻略するステージクリア型になっており、1プレイは5分程度で終わる。

ダンジョンではプレイヤーが1回行動するたびに敵も1回行動するターン制が採用されている。
オリジナルのウィズと異なり、敵と隣り合っているときに敵をタップすると前衛のみが攻撃し、後衛は何もできない。
「魔法」や「アイテム」は1つの行動と見なされ、使うときは他に何も行動できずに1ターンが終わる。
「満腹度」の代わりに「聖水」が用意されており、行動するたびに聖水が減って、聖水がなくなるとパーティーの体力が減っていく。
wizrogue07
▲聖水が0になるとまず全滅。

と、システムは「ローグ」の基本を踏襲しているが、システムがシンプルすぎて「ローグライク」感は低い。
反面、『ウィザードリィ』感はとても高い。
まず、「ミルワ(明かり)」の魔法で遠くを見渡したり、「デュマピック(地図)」の魔法で地図を見たりと原作の魔法も上手く取り込んでいる。
wizrogue03

敵を倒すと宝箱が出てきて、トラップを解除(引っかかってもいいが……)すればアイテムが手に入る。
まれに良い武器や盾、課金アイテムも手に入るので宝漁りの楽しさはある。
さらに、「棺桶」を見つけて地上に持って帰ると、復活したキャラクターを仲間に加えることも可能だ。
wizrogue08

とくに「ウィズらしい」と感じたのは、一瞬の油断がすぐに死につながる厳しさ。
序盤は魔法を喰らえば即死ダメージを受けるし、後半に入れば忍者に首を切られて即死したり、眠らされて即死したりと、油断しているとすぐ倒れてしまう。
ここに「扉を開けた瞬間、ブレスで即死」的なウィズの展開を感じる。
wizrogue09

極限までリスクを低減する行動をとれば即死は減るが、それでも新しい部屋に入るとき、次の階に進むときのドキドキ感は『ウィザードリィ』でドアを開けるときのものに近い。
これはローグではなく、ハック&スラッシュRPGの面白さだ。

即死の状況が多いため、実際のプレイでは安全な場所でレベル上げして少しずつ先に進むこととなる。
これもまた「マーフィーでレベル上げして進む」ウィザードリィ感を感じる。
wizrogue_2

「鎧がない」とか「店に物を売っても品揃えが増えない」とかまだまだ改良の余地はあるが、現段階でも3.0(面白い)に近い2.5(価格通りに楽しめる)の評価としておきたい。
今後予定されている協力プレイが実装されれば、大いに化ける可能性もある。

ただ、ゲーキャスの評価に比べると世間的な評価はとても低い。
その理由は2つあると思う。
1つはとても課金圧が高く見えること。
油断するとすぐ死ぬゲームなのに、蘇生のたびに「年齢が上がる」か、「WJ(課金通貨)で若いまま生き返る」のオプションを見せられる。
wizrogue__1
▲ロストするか、30WJで復活するか選べる。

ロストを免れても、無課金では年齢が上がることを避けられない。
年齢が60になると、キャラクターは弱くなる。
手に入れたキャラは永久に使えるのが現在の主流なので、キャラがすり減る演出は悪夢だろう。

また、死のリスクを課金で抑えるシステムやキャラクターの種族や職業を自由に選べない仕組みはコアなウィザードリィファンからも不評だ。
「好きなパーティーが組めるまでガチャを回させる課金ゲー」「ロストを課金で回避するなんて許せない!」などと批判されてしまう。

しかし、死亡時にお金を払えば100%復活できるので、ロストで課金を迫られる状況はまずない。
若返りアイテムもそれなりに出るので、無茶しなければ若返り課金もいらない。
だが、何かするあるたびに課金オプションを見せられては苦痛だ。
wizrogue_4
▲必要な課金は荷物アイテム拡張だけ。3つぐらい買うと圧倒的に楽になる。

また、このゲームは基本無料であっても実質的に「定額制」ゲームとして遊べるので無茶な課金ゲーではない。
30日150WJ(WJまとめ買いで1000円相当)の「追加効果セット」を買うと、宝箱の出現率からコイン、経験値の獲得量まですべてが大幅に上がり、ガチャなどいらなくなるのだ。
レアガチャを利用しなくてもダンジョンでキャラクターを集められる(アンコモンを集めれば十分戦える)し、若返りアイテムも多めに出るから多少の死は気にならない。
wizrogue___1
▲課金メニューが意味不明に多いので、統廃合してもいいと思う。

2つめの理由は「序盤が一番つまらないゲーム」ということ。
序盤にはろくな武器や防具が出ないので、敵を倒してもハック&スラッシュ特有の「アイテム集め感」がない。
さらに、ゲームのシステムを理解するまでは理不尽な死が多いので、ゲームに慣れる過程がそのまま「課金圧」に見えてしまう。
不必要に多い課金オプションと、序盤に厳しい仕組みと合わせて第一印象は最悪だ。
予備知識がなければ、序盤を遊んで「課金ゲーです★1」などとレビューして終わる事だろう。

正直、このゲームは「ウィザードリィである」ことに縛られて損しているように感じる。
魔法をウィズらしくしたので中盤まで魔法使いは役立たずだったり、「歳を取る」システムがとても恐ろしいシステムに見えたり、いろいろなところにそれを感じる。
また、レアアイテムのドロップを強調して月額課金のお得さをもっと押し出してもいいと思えた。
ss5
▲ついでに、課金ウィズの象徴キャラ「アラハゥイ」さんは、印象悪いので引退した方がいい。

課金圧が高く見えるが、実際はそうでもない。
金を出す気があるなら、定額制のゲームとして楽しめる。
『ウィザードリィ』らしきハック&スラッシュゲームと思えば楽しめる方は多いと思うので、食わず嫌いせずに1度遊んで欲しい。
そして、「こんなのはウィズではない!」と思う方は、『Wizardry外伝〜戦闘の監獄〜』がしっかりウィズしているので、そちらを遊べばOKだ。

評価:2.5(価格通りに楽しめる)

おすすめポイント
ジオラマ風のビジュアル
クラシック調の音楽
ウィズ感のあるゲーム展開
緊張感のあるバトル

気になるポイント
課金圧が高く感じる(でも実質定額制)
キャラクターメイクができない
タブレット向けなのでiPhoneでは文字が小さい
バランスが悪い。アイテム枠拡張でゴリ押しもできすぎる。

(バージョン1.0、GCドラゴン)

アプリリンク:
Wizrogue(ウィズローグ) (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応)
Wizardry外伝〜戦闘の監獄〜 (itunes 3,200円 iPhone/iPad対応)