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The Shadow Sun レビュー - 制作4年に負けない作り込み。「自分で冒険をしている感覚」を強く感じるRPG。

The Shadow Sun (itunes 800円 iPhone/iPad対応)
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皮膚が黒くなり、いつしか人間を襲い始める…砂漠の都 Shar に蔓延しつつある謎の病気。
これはかつて信仰していた神 Aya の呪いなのか?
あなたはこの病気の原因を探るため、Shar に派遣された人間の1人だ。

The Shadow Sun はエキゾチックな砂漠の都で、自分の判断でクエストをこなして進む「自分で冒険をしている感覚」を強く感じるRPGだ。
ただバトルして終わりではなく、隠れて進んでもいいし、交渉で解決してもいい、プレイヤーのスタイルに合わせた進め方ができる。

RPGで有名な BioWare の元プロデューサーが4年も開発していることで話題になっていたが、砂漠の風景や音、ゲームバランスなど、開発期間に負けない丁寧な仕上がりで、2013年で最も面白いRPGの1つだ。

本作のシステムは西洋RPGではオーソドックスな内容だ。
マップの移動は左下のアナログスティックで行い、何かアクションが起こせるときは右下にアイコンが表示される。
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▲サブクエストを依頼してくる街の人は【!】マークで表示される。

敵が近くにいるとバトルモードに入り、通常攻撃とアタックスキル(1回使用すると次の使用にしばらく時間がかかる)を使用したバトルに突入する。
ボタンを押しているだけでも勝てるが、強敵との戦いの前では事前にアイテムをショートカットに登録し、準備を整える必要はある。
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こんな感じで、広いマップを歩いてクエストをこなす基本に忠実な西洋式RPGだ。
が、いざプレイしてみると基本に忠実な上で丁寧な作り込みがあり、オーソドックスだけで終わらないプレイが味わえる1級のRPGだ。

まず目を見張るのは砂漠の都市を緻密に作り込んだマップ。
街の通路、家の一軒一軒まで作り込まれており、どこに行っても流用して作られた量産感は全くない。
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▲家に入っても様々なオブジェが置かれ、様相が異なる。

街の外に出てもそれは変わらない。
砂漠のオアシス…。
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気味の悪い洞窟まで冒険の舞台はきっちり作り込まれている。
静止画で見ると最新のゲームより見た目が劣って見えるかも知れない。
が、市場のざわめきやモンスターの叫び声などがリアリティのある世界を演出し、プレイする者を引き込む。
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出てくるモンスターも雰囲気に合致したモノが用意されており、マップを歩いているだけでエキゾチックな雰囲気を堪能できる。
4年間作っていただけあってゲーム世界観は抜群だ。
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そして、その上をいく丁寧さで作られているゲームプレイ。
キャラクターを個性豊かにカスタマイズできる上、作ったキャラクターの特徴を生かした自分だけの冒険が楽しめる。
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▲外見カスタマイズは洋ゲーなので期待してはいけない。

キャラクター作成時、さまざまな能力を割り振れるだけでなく、Weapon(武器)、Attack(攻撃)、Magic(魔法)、Rogue(盗賊)、General(その他)の5ジャンルから、スキルを選んで自由にカスタマイズできる。
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戦士を作りたければ Weapon から好きな武器のスキルを覚え、Attack スキルをとりまくればいい。
盗賊系のスキルを覚えて盗みまくってもいいし、General から交渉スキルをとって争いを避けるのもいい。
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▲好きなタイプの、好きなスキルを覚えよう。ただし高レベルのスキルは能力値が一定以上必要。

好きなようにキャラクターを作ると、あとは自分だけの冒険が始まる。
戦士を作ったプレイヤーは、全てを力で解決していけばいい。
力押しではクリアできないものもあるが、おおむねそれで解決する。
初心者にお勧めのスタイルだ。
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常に仲間キャラクターが一緒なので、戦士と組んで遠距離で弓矢だけ使っているキャラクターを作ってもいいし、遠距離キャラクター2人で地道に敵を倒していくなんてこともできる。
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盗賊のプレイヤーはステルスで隠れて奇襲したり、トラップをバトル前に設置してワナにかけることができる。
ステルスしたままほとんどの敵とは戦わないでクリアするのもありだ。ただ、経験値が少なくなるのでボスとの戦いが厳しくなる。
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▲ステルススキルを使うと半透明になり、ほとんどの敵に気づかれなくなる。

盗みに関しては目の前で家のタンスを開けようが、スリを行おうがCPUは関知しないドラクエ式。
「盗みに失敗したら刑務所に入ったり、NPCと戦いたい!」という趣味の方には合わないかも知れない。
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▲正面から盗みスキルを使っても怒られない。

交渉スキルが高いキャラクターならば、いくつかのクエストでは敵と戦わずにすむ。
例えば序盤の山、牢屋の衛兵から鎧を盗み出すとき。
通常は殺して奪い取るしかないが、交渉スキルがあれば酒で酔いつぶして鎧をはぎ取ることができる。
しかも、戦うより交渉で済ませた方がもらえる経験値も多い。
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▲緑の選択肢は交渉スキルがないと表示されない。

さらに言えば、店内で戦うと後々まで「店の中で戦いやがって、出て行け!」というような対応をされるが、交渉で終わらせれば店主は怒らない。
単にクエストのクリアの方法が違うだけでなく、スキルを使ってクリアすると力押しと異なる結果があり、「俺のスキルが役に立ったぜ!」という満足感があるのだ。

ほとんどのスキルに活躍するポイントがあり、普通のゲームではイマイチ役に立たない「値引き」系のスキルですら、店に強力なアイテムがバカ高い値段で売っている(場合によってはゲーム中最強の装備まで)ので役立つ。
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▲スタート時から店にはかなり強力な魔法の品が並ぶ。

プレイヤーがキャラクターを作るときに「こんなことができるかな」と想像したところを、きっちりフォローする作り込みがすばらしい。
自分の分身が砂漠の世界で冒険をしているような気分になる。
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▲能力が高くないと見つからない隠し要素なども…。

ゲームをクリアするまでにかかる時間は6時間強だが、1周目は戦士で、2周目は「開けられなかった扉の中には何があるのかな?」と盗賊で、3周目には魔法使いで、がっつり遊んでしまった。
RPGとしては短時間で終わるので長時間遊びたい学生の方は少し不満かも知れない。
が、中身が濃密で時間当たりの満足感が高く、時間のない社会人には最高のRPGだ。

NPCとの会話の要素があるので敷居が高く見えるかも知れないが、Ravensword(→RavenSword 特集旧ゲームキャスト) やAralon を楽しめたのであれば特に気にせず遊べるはず。
そして、それらを楽しんできた方なら間違いなくこのゲームにもはまるだろう。
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▲仲間に好感度あり。ただし、ゲームの展開にはあまり影響しない。

個人的なおすすめは、1周目には戦士でプレイして概要をつかみ、2周目はその知識を生かして盗賊や魔法使いでプレイしてみること。
2周目以降はボーナスアイテムがもらえるので、多少無茶がきくようになる。

最終評価:4.0(すごく面白い)

おすすめポイント
細かく作りこまれた砂漠地域のグラフィック
豊富なキャラクターカスタマイズと、それを生かしたクエスト

気になるポイント
1プレイの時間は短い
多少は英語力が必要になる

課金について
このゲームの課金は全て「もっとゲームを楽しみたい」人向けで、ちょっとした追加クエストと追加装備のみ。この手のゲームをあまりプレイしたことがない人が初期装備を強化するか、ゲームをもっと楽しみたい人がクエストを追加するか。
100円なのでいずれも負担ではない。

1.Hint(100円) ゲーム内から公式攻略ガイド・データ集が見られる。
2.Warrior Pack(100円) 戦士向け追加装備(目玉はアイテム所持数が増えるバックパック)+サブクエスト1つ
3.Rogue Pack(100円) 盗賊向け追加装備(鍵開けスキル+1のピックがお得!)+サブクエスト1つ
4.Mage Pack(100円) 魔法使い向け追加装備(魔法使いは序盤つらいので装備があると助かる)+サブクエスト1つ

(バージョン1.0、アルベルト)

アプリリンク:
The Shadow Sun (itunes 800円 iPhone/iPad対応)

動画: