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レビュー: マジック&カノン - モバゲー、ついに王道RPGを作る。

マジック&カノン (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 基本無料)
課金:スタミナ、レアガチャ、コンテニュー
開発:DeNA
評価:3.0(面白い)

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童話のような世界とキャラクター
RPG的なバトル
縦持ちでも楽しめる操作
アクセサリの合成システムがわかりづらい
基本無料がゲームに馴染んでいない

あの『ケイオスリングス』シリーズの制作を担当したメディアビジョンと、DeNAがタッグを組んでつくった「王道RPG」。
正直、「モバゲーの王道RPG」という時点で期待仕切れていなかったのだが…。
はずれのポチポチゲーしか想像できなかったのだが…。

結論から言うと、結構これは気に入っている。
ドラクエを思い出すような王道的家庭用RPGに、スマホでプレイするためのアレンジを加え、さらに基本無料にしてみる…そんな無茶な取り組みに真っ向から挑戦した意欲的なゲームだ。

まずその見た目。
童話のような柔らかいイラストと、3Dで作られた主人公や動物のキャラクターたちはありがちなお色気ゲームから脱しており、本気で一般向けRPGを目指したことが分かる。
ダンジョンやバトルのグラフィックも美しく、童話の中のような世界だ。
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▲カードバトルってこういうイラストに全然ならない。

RPGだから街の人と話したり、フィールドを歩いて敵と戦うことだって可能。
状況によって街の人との会話の内容も変わるし、ときには街の人から話を聞いたり正しい受け答えをしなければ進まないストーリーもある。
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BGMも場面にあったものが流れ、物を売り買いして装備を整え、冒険に出かける…その雰囲気はまさに「王道RPG」と言って差し支えない。
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ターン制のコマンドシステムを採用したバトルもそうだ。
装備している帽子に合わせた【特技】、さらにバトルを通じて貯まる奥義ポイントを消費しての【奥義】で戦うドラクエ式のオーソドックスなシステム。
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攻撃のエフェクトも綺麗で、奥義は派手。
コマンドに対する反応がいちいち気持いい。
敵が攻撃してくる時には動いてくるような演出もあり、ドラクエの戦闘をしているかのような安心感がある。
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ただ、スマホ向けにテンポの良さを重視しすぎたせいか「攻撃する敵が選択できない」という難点もあり、この点だけは気になるところ。
それでもファミコンのドラクエIIを超えるぐらいのの戦術性は備えており、ちゃんとRPGの戦闘になっている。

メインはキャラクターのレベルアップで、モンスターを倒して経験値を貯める昔ながらの様式。
ここでもRPGらしさを出そうとしているのがわかる。
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また、装備に関しても武器・防具はお店で購入し、バトルで十分効果を発揮する。
普通にプレイして、普通に誰でも購入できるアイテムが十分役立ち、段階的に強くなる感覚は「レアガチャで最強装備を手に入れた!」と、いつでも突然強くなれる系のゲームにはないものだ。
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武器と防具以外に、装備には帽子とアクセサリというものがある。
主人公たち3人の役どころは特に決まっておらず、動物をかたどった帽子を付け替えるとそれぞれの動物にあった特技を使えるようになる。
RPGでいう【職業】が帽子になっていると思えばいいか。
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▲「かみ砕き!」は戦士(犬)の帽子。うさぎなら魔法というように動物によって職業がわかれる。

最後にアクセサリ。
アクセサリは2つまで装備することができ、バトル中に使う奥義が習得できるものから、敵から狙われやすくなるもの、攻撃の属性を変更するものなどさまざま。
この組み合わせ次第でクエストの難易度が変わるほど効果が大きく、シンプルなゲームに工夫のしどころを与えてくれている。

システムとしてもドラクエ2〜ドラクエ3ぐらいの感覚でプレイでき、RPGらしい雰囲気を演出している。

そして、スマホ対応…つまり縦持ちへの対応も見事。
基本的な操作がやりやすいようにできており、中でも移動操作は挑戦的だ。
画面をタッチするだけで街ならプレイヤーが選んだ目的地まで、ダンジョンならボスまで一直線にオートで走るようになっており、行き先が決まっていれば長い間画面をタッチしている必要がない。
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かと言って完全自動というわけではなく、オート移動中に分かれ道や宝箱を見つけた場合、バーチャルスティックを使用してプレイヤーの意志でも移動できる。
見つけた宝箱を取りに行くこともできるし、街はずれを歩くこともできる。
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結局、縦持ちでずっと細かく操作するのはつかれる。
シンプルRPGでは最終的には目的地に向けて歩くしかないし、その部分を自動化するというのはいいと思った。
最初は戸惑うものの、慣れると「おお、快適」という移動操作だ。
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と、ここまで褒めてきたのだが基本無料ならではの残念な点もいくつかある。
まず、先ほど説明した装備。
それぞれ装備に使い分けがあり、その部分の仕組みはいいのだが…アクセサリだけがなにか浮いている感じがある。

普通のRPGのようにLVアップし、装備を切り替え、帽子(職業)をパワーアップしていくのだが、アクセサリだけ何故かガチャと合成のポチポチゲーシステム。
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システム的に統一感がないだけでなく、せっかくレベルアップ、お買い物という懐かしのRPG的な空気を作っているのに、アクセサリだけ突然のガチャと合成が「当然」という雰囲気で入っており、雰囲気台なし。
せめてRPG的な理由のこじつけが欲しかったところだ。

また、クエストをこなすにはスタミナが必要で、ストーリーも数クエストこなさないと進まない。
こういった部分にはソーシャル的な引き伸ばしをどうしても感じてしまう。
もう少しクエスト1つにストーリーを付属させる形にして欲しかった。
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クエストの途中で倒れた時は課金でコンテニューという要素や、クエスト中に帰ることができない(だから実力が足りなければコンテニューするしかない)点など、RPGなら普通にある機能に課金がついたり、不自然な制約がついていたりするのも気になる。
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また、フレンドを1人連れて冒険に出かけ、必殺技を使ってもらえる要素があるものの、「これって入れる意味あるのかな?」というぐらいゲームに馴染んでいない。
そもそも3人の勇者が戦うお話なのになぜ、フレンドが4人目としてついてきているのだろうか。
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▲助っ人がなぜいるのか?世界観がしっかりしているとそれ自体が疑問。

縦持ちでRPGを楽しませることに真っ向から挑戦し、なおかつ王道RPG感も出ている。
しかし、それだけにプレイすると「普通のRPGが窮屈になった」という印象が拭えない。
完全に売切り形態になるか、「もっとこのゲームの世界を楽しみたい!」という人が気持よく課金できる形式を採用していたらより楽しかったのに、と思うと残念。
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▲この世界を邪魔なく楽しみたかった。

ただ、先に書いたような不満があっても楽しめているし、なによりこのRPGをDeNAが出してきたことを評価し、合わせて評価は3.0としたい。
家庭用RPGをあまり捻じ曲げずに基本無料にするとこうなる、という例としても興味深いゲームに仕上がっている。

それにしても、数年前、「スクウェア・エニックスの本格RPGができる」と聞いてGREEに登録したとき、想像していたものはこんなゲームだった。
過去に口先だけ「本格RPG!」などと連呼してきたソーシャルゲームプラットフォームの中からようやくマシな物ができたことに、時代の変化を感じて感慨深い。

(Ver.1.2 GCドラゴン)

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マジック&カノン (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 基本無料)

動画: