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取り返しのつかない死が生む面白さとドラマ『XCOM:Enemy Unknown』

XCOMR: Enemy Unknown 2000円 iPhone/iPadの両方に対応
開発:2K GAMES
評価:3.5(かなり面白い)
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エイリアンの謎が解明されていくストーリー
即死もありえる緊張感あふれる戦闘パート
豊富な動きと豪華な演出
iPhone4SやiPad2では落ちるし重くなる
立体的なマップの情報を把握しづらいことがある
難易度が高いので、合わない人もいそう
人類の科学力をはるかに超える謎のエイリアンから地球を守るため、科学軍事機関“XCOM”の司令官として、あるときは民間人を守るために戦い、ある時は戦いで捕獲したエイリアンを尋問して情報を入手し、兵器を分析して自分たちを強化する…。
硬派なSFシミュレーションゲーム、それが『XCOM:Enemyu Unknown』だ。
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最初に言っておくと、このゲームは2012年10月にPC / PS3 / XBOX360でリリースされたばかりの新作で、一部では「このジャンルで最高の作品の1つ」とまで言われたもの。
難易度は高くゲーマー向けだが、ストーリー・ゲームともに高いレベルの作品である。

特徴的なのはまず、そのバトルパート。
プレイヤーとエイリアン側が交互に動く伝統的なターン制のタクティカルシミュレーションだが、良い感じの攻撃を1発もらうとプレイヤー側の兵士は即死。
初期から育てていようが、最強装備を整えようが、油断したら死ぬし復活もしない。
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▲油断するとすぐこんな状態に…。

なので、マップにある様々な障害物に身を隠しながら進軍しなければならない。
複数の敵が出てきたときなどは「この位置に兵士を移動させるとAからは隠れるけども、Bからは丸見えで、安全にするためにはBを先に倒す必要があって…」などと、かなり試行錯誤する悩ましい要素だ。
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敵が見えていなくとも、「いつ、エイリアンが出てくるのか?」と恐る恐る障害物から障害物へ、影に隠れて先に進んでいく緊張感は格別。
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▲行動時はエイリアンを発見したら即座に対処できるよう固まって移動するのが基本

そしてこのゲームではプレイヤー側、エイリアン側の攻撃時は常に演出が入るが、常に死と隣り合わせのために「ああ、当たった!」という喜び、「敵の攻撃が外れた!」という安堵感が強烈に記憶に残る。
これはリスクがあまり存在しない戦術SLGでは味わえない面白さだ。
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▲射撃時などは視点が切り替わって演出が入る。

しかし、バトルはそれだけではない。
冒頭に書いた通り、このゲームでは人類の科学力はエイリアンに完全に負けているし、エイリアンが何者であるかも不明。
バトルパートではエイリアンの勝利するだけでなく、その武器や死体を手に入れて基地に持ち帰ることも大事なミッションとなる。
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▲エイリアンの死体が戦利品…ハードな世界。

戦利品は基地の“研究所”で詳しく調べることが可能で、死体の調査や捕虜の尋問からエイリアンの生態が判明する。
そして、兵器の欠片からテクノロジーが解明され、だんだんとエイリアンの持つ科学力の秘密が解明されていく。
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バトルを通じて新しい謎が出現し、基地に戻るとその研究で謎が明かされる…USの連続ドラマ的な「謎を追っている」という雰囲気で、ストーリーが気になってゲームをついつい続けてしまう魅力がある。
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また、研究の他にも基地でのプレイヤーはXCOMの司令官として、予算を割り振って基地の施設を増強したり、新しい装備を開発・購入するなどのマネジメントを行う。
研究の成果で新しい装備を購入できたり基地により良い設備の増設が可能になるなど、研究は単純にストーリーを追うだけでなく、ゲームの数値にもきっちり結びついている。
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▲昔の秘密基地っぽい。

最後にもう1つ。
プレイヤーは世界各国がどの程度エイリアンの被害を受けているかを示す“パニック度”のマネジメントをすることにもなる。
月に1度、XCOMを支援する国からなる世界評議会に査定されるのだが、その時にパニック度が高い国は、XCOMへの支援を撃ち切ってしまうのだ。
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そうならないように、各国が依頼してくるミッションをこなして行ったり、危険な国は人工衛星を配置して監視するなどしていく必要がある。
バトルに続いてこちらもかなりハードで、世界3カ国で同時にイベントが発生してそのうち1つしかこなせないなどの状況が発生する(当然、こなせない国はパニック度が上昇)。
適当に管理していると一瞬で支援が打ち切られてしまう。
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▲悩んだ末にインドを助けたら、アフリカと北米は大混乱。

バトルのために装備に予算を使うのか、各国の要請に応じて人工衛星などを打ち上げてパニック度を抑えるのか、それとも技術研究に力を注ぐのか?
基地では悩ましいけども楽しい予算配分を要求されるようになっている。
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▲新兵器開発も重要。

これらが合わさった結果、ゲームの持つハードなSFの雰囲気に引きこまれ、死と隣り合わせのバトルの緊張感にのめり込み、エイリアンの謎が気になって、気づくとかなりプレイさせられてしまう。
特に序盤のもつ勢いは凄まじく、強烈にハマる。

で、そのままの勢いでバトルして、研究し、またバトルする。
ひたすらその繰り返しの作業ゲーでなのだが、大事に育てていた兵士が1人、また1人と死んでいくなかで新人が成長していく様子、そしてラストには初期のメンバーが誰ひとりいない(もちろん、プレイ次第で全員生きていることもありえるし、セーブ・ロードの繰り返しでも進むことはできる)少しの虚しさ…。
ストーリーでは語られない、プレイヤーの中だけのドラマが気づくと生まれている。
この感覚は“復活する”・“クリアは楽”という最近のゲームではなかなか味わえないものだ。
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▲ミッションに向かうメンバー。中盤ぐらいで初期メンバーは死んでしまった…。

序盤の強烈な引きに比べて後半やや展開が中だるみするのが残念だが、バトル・ストーリー・基地でのマネジメントの3要素がうまく絡み合い、非常に熱中度の高いゲームに仕上がっている。
これはハマる、面白い。

しかし、完璧なゲームかというと意外にそうでもない。

面白い影に大小さまざまな難点もあり、大きな所ではバトルマップが複雑で、高低差がついた場所で移動する時に慣れないと(慣れても少し)ミスしやすいというものがある。
また、本体の性能が足りていない場合はタッチ反応も少し悪くなることがある。
バトルの難易度が高く、操作ミスが致命的な結果を招くこともあるだけにこれはちょっと痛い。
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▲屋根に上るか、室内に入るか?同じ座標でも高さを指定すれば移動位置は変わる。

また、敵に狙われる位置にいる・いないが重要なのに、兵士の視界がわかりづらく(感覚的なものである程度は何とかなるが)、「ここなら敵が見えて撃てるはず!」と思って移動した時に、実はそうではなかった、という事件も発生する。
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▲敵が見えるはずの位置に行ったけど、実は敵が見えてなかった…。

さらにiOSならではの欠点として、旧機種で動作が重いというのがある。
最新機種以外では動作がややもっさりし、状況によってはタッチの応答が少し鈍くなってしまうこともある。
iPhone4Sではかなり落ち(場所によってはタスクをすべて切った上で再起動しないと進めなかった)、iPad mini / iPad 2でもそこそこ落ちた。
オートセーブで直前からやり直せるが、(特に古い機種で)タイトルのロード時間が長く、ストレス。
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▲旧機種ではロードのためOPムービーの飛ばせない時間が長くなる。

対応機種は iPhone4S / iPad2以降だが、ぎりぎりの機種でプレイしようと思ったらある程度の覚悟が必要だろう。

しかし、それを考えてもやはりこのゲームの面白さは格別で、自分はiPad miniでアプリが落ちても最後までプレイしてしまった。
難易度は高いが、だからこそ得られる面白さが確かにあり、世界中で高い評価を得たのも納得の内容だった。
本当に家庭用ゲームの最新の面白さを持ってきたゲームということで、ゲーム好きの皆さんにはぜひ試して貰いたいと思う。
高いが、ゲーム好きならば値段以上の価値は確実にある1作だ。

最後に、ここまで難点を挙げつつも褒めてきたXCOMだが、そんなに面白いならば家庭用でプレイしたほうがいいのではないか、と思う方もいるかもしれない。
結論から言うと、ほぼ同じゲームとはいえ追加要素を購入して拡張できるし、グラフィックもロードの快適さもPCやゲーム機版が良い。
グラフィックに関しては比較動画があるが、見れば一目瞭然。


だが、iOSは寝転がりながらiPadで気楽にプレイしたり、クラウドセーブを使って家ではiPad、外ではiPhone、というような遊び方もできるのでこれはこれで素晴らしい。
要は一長一短というところで、自分のスタイルに合わせて選べばいいだろう。
(バージョン1.0.0 ゲームキャストトシ)

アプリンク:
XCOMR: Enemy Unknown 2000円 iPhone/iPadの両方に対応

関連リンク:
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