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長い夜に、『ゴーストトリック』でゆっくりミステリーをどうぞ - あの名作振り返る1

ゴースト トリック(Ver1.04.01) 体験無料 iPhone/iPadの両方に対応
課金:3章〜最終章セット2,000円(バラ売り840円×3つ)
開発:カプコン
評価:
9(とても面白い)
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軽妙なストーリーとイキイキとしたキャラクター
動いている世界に干渉するパズル
ストーリーとゲームが一体化している構造
詰まると繰り返しプレイが少し苦痛
iPhoneが発売されてから、かなり時間が経った。そこで、そろそろ過去の作品を取り上げて再評価する「名作を振り返る」を不定期でお届けする。
第1回の『ゴーストトリック』は、斬新なシステムと秀逸なストーリーを兼ね備えたパズルミステリーだ。

ある夜。街の片隅で、主人公は一発の銃弾によって命を奪われる。
タマシイとなって目ざめた彼は、命とともに、その記憶を失っていることに気づく。
自分は誰?なぜ殺された?犯人の正体は?
悩む主人公の前に現れる謎の幽霊“クネリ”。
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▲謎の電気スタンド…クネリ。

彼は主人公に死者のチカラの使ってその謎を解く方法を示すとともに、「死者のタマシイが現世に留まれるのは夜明けまで」告げた。
主人公の、たった一晩の“孤独な追跡劇”が始まる。
果たして、主人公は自分の謎を知ることができるのか…?

『ゴーストトリック』は、2010年6月19日にニンテンドーDSで発売されたミステリーアドベンチャーだ。
このゲーム最大魅力は、『逆転裁判』シリーズでお馴染みの巧舟氏のコミカルなシナリオにある。
少しずつ明かされていく謎、次々と事件が発生し、そのすべてに関係性があり、先を見ずにいられない展開。夜始めて、気づいたら朝になるってぐらい止まらない。
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そして、その上にゲームとシナリオの素晴らしい融合が見られる。本作は、パズルを解いてストーリーを進めるゲームとなっている。
ただパズルを解くとゲームが進むとか、そんなチャチものではない。完全にパズルゲームとストーリーが一体化しているのだ。
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主人公は、自らの正体を知るために様々な場所を訪れ、その先々で自分に関わる人間が殺されていることを知る。
そこで、“死者のチカラ”を使用して被害者が死ぬ4分前にタイムスリップして被害者を救い、自分自身の素性を聞かなければならない。これが、パズル部分だ。
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▲主人公の行く先には常に死者が…。

タイムスリップすると、被害者が死ぬ4分前からが動画で示され、死因が判明する。
この死因をもう1つ“死者のチカラ”で取り除き、被害者を助けるのだ。
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▲対象の死の時間まで、常にキャラクターが動いて世界の様子が動画で表現される。

そのチカラとは、物体に取り憑いて動かすチカラだ。
物体を動かすと、その動きに応じて人々の行動に影響を与え、場合によっては対象を助けられる。
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▲物体にはコアがあり、遠くにありすぎるコアには取り憑けない

例えば、目の前で女刑事が殺されかけている。
そこで、まず銃を持っている男の側にある遮断機に取り憑く。
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そして、まさに撃とうとする瞬間に遮断機を“アヤツル”と、遮断機がショットガンを巻き込んで跳ね上がる。
これで、女刑事は撃たれずにすむ。ただし、これは早すぎても遅すぎてもうまくいかない。死ぬ4分前の世界を見て、死因を取り除くタイミングと動かすモノを選ばなければいけないのだ。
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▲遮断機が上がって女刑事を救う!

作中の人物のパーソナリティも考慮に入れなければならない。性格を考えて、どのモノを動かせば世界に干渉できるのか、頭を悩ませるのだ。
そして、主人公が世界に干渉すると被害者と加害者のやりとりが変化し、動きが変わり、その中でストーリーや作中の人間関係が判明していく。
この行為により、世界観や人物の性格がプレイヤーの頭にインプットされる。そのため、普通のゲームよりも世界観がプレイヤーの頭に入ってくるのだ。これが、パズルゲームとストーリーが一体化しているという意味だ。

「死因がわかっていたら簡単に阻止できてしまうのでは?」

と思う方も居るだろう。これが実は難しい。主人公がは物体に取り憑いて動かすことしかできない。
しかも、遠くにある物体には取り憑けないので、世界を自在に動かせるわけではないのだ。

「あれを少し動かせれば、助けられるのに!」

なと、歯痒い思いをしつつ、扇風機を動かして風を当ててみたり、ギターを鳴らして人の注意を引いたりと、あの手この手で取り憑いているモノを動かし、試行錯誤しなければならない。
些細な事しかできない中で、リアルタイムで動く世界の情報を頭で組み立て、時にモノを動かし、時に移動し、先の展開がどうなるか予想しながら遊ぶのは楽しい。
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▲先に進むと電話を伝って移動するのが重要になることも。

また、キャラクターが動くことで、魅力的なキャラクターたちがよりいきいき見える付加価値もある。
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他にあまりない手法のゲームであり、謎解きが難しく感じられる人もいるかもしれない。
だが、魅力的なストーリー、そしてパズル手法を持ち込んだ謎解きのおかげで文字だけのアドベンチャーが苦手な人間(自分だ!)でも楽しめるミステリーとして、試してみる価値がある作品となっている。

実はこのゲーム、過去のレビュー(古すぎて恥ずかしい)では値段なりという評価をしていた。
今思うと当時は自分の嗜好をより強く評点に反映させていただけでなく、値段やiOSゲームに対する期待の評価も厳しかった。
また、多くのゲームをレビューする中でストーリーものを沢山体験し、「ああ、ゴーストトリックってこんな面白かったのか!」ということに気づく事ができ、再評価したいと思っていた。

今、自分が改めて評価する『ゴーストトリック』は評価9(とても面白い)。
値段は高くても、それに見合う以上の面白さがある。

ゴールデンウィーク、最後の1日は体の疲れを癒しながら頭の体操というのはいかがだろうか。

アプリリンク:

ゴースト トリックの詳細はこちら(itunes)