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PS4発表会に見るゲーム王国日本の終焉、そしてソニーのゲームハード撤退戦略:ゲーキャス トシのゲームを語るぜ!3

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昨日、PS4が発表された。
個人的に言わせてもらうと、性能が高いことには結構ワクワクしていて、今からこれでゲームが出来るのが楽しみ。
この環境にAzelが移植されたりしたらどうなるのか、そもそもTricoがPS4用に作り直しになるんじゃないか、とかもう色々考えてしまうわけで。

ただ、そのワクワクと裏腹に「ついにこの時が来てしまったか…」という寂しさがあった。
それは日本のユーザーと日本のメーカーがゲーム機にとってメインターゲットでは無くなってしまったという現実を知ってしまったことである。
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今回の発表で目を引いた点を大雑把に挙げてみると、

・ハイスペックPCのようなパワフルなハード
・メモリはなんと大容量8GBでPCゲーム的なメモリの使い方も可能です!
・開発環境はUnreal Engine 4(海外で主流の開発ツール)対応!
・Facebook連携や動画配信、代理プレイなどソーシャル要素も強化
・クラウドゲーム対応
・PS4のセカンドスクリーンとしてスマホやPS Vitaが使用できる。
・DL販売の強化
・映像デモの発表

といったところだろうか。
ここまでで今回の発表会はPS4とその開発のしやすさなどがアピールされ、明らかに海外の開発者に向けられたものだった。

「海外で主流のPCと同じハード構成で、メモリも増やして、主流であるところのアンリアルエンジンも対応しました。だから、対応ゲームを出してください。」

という熱烈なラブコールであり、同時に

「家庭用中心の日本メーカーさん、PCっぽい開発に移しちゃうから対応していってね。」

という日本のメーカーを軽視した動きでもある。
PS4を発表するなら、E3でもTGSでも大きなイベントはたくさんある。
そのなかでわざわざニューヨークで専用のイベントを作って行なったのも「PS4は海外市場を重視したハードなんです」という強烈な海外へのラブコール以外のなにものでもないと思われる。

この背景としては2つのことが考えられる。

1つには(世界的な現象ではあるが)日本市場がしぼんでいっている点。
2007年度に約3605億4000万円(エンターブレイン調べ)あったという市場は2012年度まで毎年順調に減り続け、2712億円程度(同じくエンターブレイン調べ)まで減少している。

国別で見れば世界2位のゲーム消費大国だが、文化圏・言語圏でみると日本は大きいとは言えず、対応が難しい特殊な国だ。
だから、海外…特に英語圏が優先される。

もう1つは次世代機で必要とされる豪華なゲームを作るノウハウも、やはり実際にそういった開発を行なっている海外メーカーが有利だし、その協力なくしては数を出すことが難しい。
また、英語圏で売るには海外メーカーの方が長けている。
日本のメーカーは、なんだかんだ言っても日本向けゲームのほうが得意で、海外で受けるタイトルは少ない。
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▲KILLZONEなど、海外で重要なFPSはやはり海外製。

日本のゲームは海外で尊敬を持って扱われているし、コアなファンもたくさんいる。
予算に応じてしっかりゲームを作っているメーカーもあるし、得意ジャンルもあれば、面白さで負けているわけでもないと思う。
が、経済的な冷徹な目で見た場合「日本が家庭用ゲーム王国だった時代は終わった」という強烈なメッセージがこの発表会の裏から見て取れる。
依然、ゲーム大国とはいえ盟主の座からは明確に降ろされたと言えるだろう。

EuroGamerのXBOX関連の記事(リンク先は翻訳されたchoke pointの記事)でも、XBOX次世代機では日本市場に対して積極ではない、というニュアンスが見て取れ、PS/XBOX双方から相手にされていないことになる(Wii Uは任天堂のゲーム販売機なのでちょっと事情が異なる)。
だから新ハード発表と同時に、ファミコン時代から日本ゲームの隆盛を体験してきた自分としては寂しい思いもよぎったわけだ。

そして、さらにもう1つ。
「恐らく、これがソニー最後の家庭用ゲーム機になるに違いない」
という思いを強くした。

ゲーム専用ハードは年々、汎用ハードに押されつつある。
iPhone5は、電話機能やOSなどにパワーが割かれなければPS Vitaに近い性能がある。
PS4は恐らく、PS3よりも早く価格性能比でPCに追い抜かれるだろう。
身近なスマホやタブレット、エントリークラスのPCの性能が飛躍的に伸びている中でゲーム専用機を出す意味自体が薄れつつあり、重要なのは身近なハードに乗っているプラットフォームを制する事になっている。

それを考えるとDL販売、クラウドゲームを押し出した戦略は、将来iPhoneやAndroidなどのスマホでゲームプラットフォームを展開する布石に思える。
これはPS Vitaにも言えることで、PS Vitaは従来の独自ハード路線を捨てスマホと似た構成になっている。
自分はPlayStation MobileへPS Vitaのゲーム資産を速やかに移動させるための布石で、PS Vitaは移行期のハードと睨んでいる。
PS VitaのDL販売でソフトウェアを買ったら、PS4でゲームを購入したら、そのアカウントをそのまま持ってスマホやタブレットでゲームができる。

▲PlayStation Mobileのイメージ動画

PS4用のゲームを、クラウドで動かして性能の低いスマホで動かすことだってできる。
無線式のデュアルショックコントローラーにスマホを対応させてもいい。
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恐らく、ソニーはPSのユーザーや資産をそのままもって汎用ハードへ移行し、その上に“プレイステーション”というハードに囚われない新しいプラットフォームとして築くつもりなのだろうと予想する。
5年後か、もっと後か分からないが間違いなくPSとはiPhoneやAndroidで遊ぶものになっているだろう(やっとiPhoneとつながった!)。

とはいえまだまだ、そこまでの時間は長い。
今はPS4で新しいゲームが出てくるのをわくわくしながら待ちたい。

そして、次回は家庭用ハードで「特別扱い」されなくなった日本メーカーが注目されているジャンル“基本無料”について書く予定なのでお楽しみに。

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