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面白かったが、二度とこんな原作付きゲームは出ないで欲しい悪魔的アプリ『カイジ闇の黙示録』レビュー。課金して、ランキング上位まで駆け上がったプレイヤーが見たもの

カイジ闇の黙示録 (App Store 無料)
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「さぁ、闇のゲームの始まりだぜ」
主人公、遊戯の名台詞も懐かしい『遊戯王マスターデュエル』が突然にリリースされて世間が沸いたのが1月19日。
しかし、本当の“闇のゲーム”は遅れてやってきた。
本日1月20日、App Store 向けにリリースされた『カイジ闇の黙示録』だ。
そして、これはそのゲームに挑んだ者たちの記録である。
「カイジがやばそうという情報が流れてきた」
いつものように身内のDiscord掲示板で会話していると、突如『カイジ闇の黙示録』の話題がぶっこまれた。
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どれだけヤバいのかと試してみると、予想を超えてヤバい。
正直に書こう。
プレイしてすぐ、「無人島に連れて行かれてこのアプリを持たされても、石ころを投げていた方が楽しいから遊ばない」ぐらいの感想をTwitterに書き込むぐらいヤバいと思った。
が、まさかこの感想を書いた後にこのゲームにはまるとは、予想もしていなかったのである。


ゲームの説明に入ろう。
本作は巨大ブラック企業”帝愛グループ”の作り出した遊戯アプリで、"エーン(以下、とくに何も書いていなければ金=エーンを指すものとする)”という通貨を賭けてゲームを遊ぶことを強要される……という設定のミニゲーム集だ。
負ければ借金漬けで地下労働、成績優秀者は帝愛グループの社員として採用される可能性もあるというどっちに転んでも良いことはない、いかにもカイジなゲームではある。

が……設定を見てゲームを起動すると、タイトル画面の解像度が足りず、ガビガビ。いつの時代のゲームだ。
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メニュー画面も演出も、2012年頃のノリを感じるボロボロ加減。
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公式で「定期的なバージョンアップで昭和の時代から令和までを体感!」とあるので、これを信じるのならば今回のバージョンは昭和バージョン。
つまり、意図的に低いレベルに抑えられていると言うこと……っ!
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漫画カイジの舞台は平成のはずだが……?


この先、『カイジ闇の黙示録』のネタバレがありますが、筆者としては実際にプレイして驚いて欲しいと考えています。100%ゲームを楽しみたい方は読むのをやめてすぐにアプリをDLし、楽しんでからお読みください。
『ファイナルソード』がバグだらけで面白いと話題になる前に自力で発見して楽しめた人は、とくに楽しめると思いますので、この先を読まないことを強くおすすめします。


まあ、もうしょぼいものは仕方ない。
設定と思って飲み込み、金を稼ぐためにはミニゲームを遊び始めると、タイトル画面を超える衝撃が待っていた。
まずは『ブラックジャック』。
伝統的なトランプゲームだが、適当に画面を連打していると画面にトランプが舞って敗北。


さらには、帝愛グループ独自ルールも(Aは通常11としてカウントされ、Aと10以上を引くとブラックジャックが成立して即勝利になる)。
ブラックジャックすらまともにつくれな……いや、これが卑劣な帝愛のやり方かよ……!


続いて、目の前のカードの数より高い数が出るか、低い数が出るか賭ける『ハイ&ロー』。
『ドラクエ』などに登場する『ハイ&ロー』ゲームでは、お金をかけて勝利すると“ダブルアップ”に挑戦でき、1回勝つたびに報酬が倍になっていく。
負けると賭け金がなくなるが、倍プッシュで金が増えていくスリルがたまらないギャンブルだが、ここでも帝愛ルールの『ハイ&ロー』は一味違う。
勝つと”ダブルアップ”に挑戦できるのだが、ダブルアップに失敗すると本来ダブルアップ勝利で得るはずだった金額と同額を失ってしまうのである。

手元に1000エーンあったとして、1000エーン賭けてダブルアップして勝ったときは2000エーン手に入るが、参加費が1000エーンなので1000エーンの得。
負けたときは帝愛ルールでは「ダブルアップ勝利で得るはずだった金額を失う」ので、2,000エーンと参加費の1,000エーンが差し引かれ、一気に所持金を3,000エーン失う。
リスクをはねのけて勝利すると、勝利しただけリスクも増える。
勝って1000エーン儲け、負けて3000エーン支払い。
ゲームとして破綻していないか……やめだ、やめ!

続いて手を出したのは駐車場パズルゲーム。
これは制限時間内に車をパーキングエリアから出す駐車場パズル。
パズルならばプレイヤーの実力があれば解ける!
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と思ったが、2回目のプレイでは制限時間7秒に対して操作量が追いつかないほど車が出てくるのであった。
勝つも負けるも運営の気分次第、ステージ次第。運否天賦。
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出す……!
時間内に作業が終われば(金を)出すが……今回まだ作業量までは指定していない。
どうかそのことをプレイヤー諸君らも思い出していただきたい。
つまり……運営がその気になれば車20台を3秒で動かす作業量設定も可能だろう……ということ……!
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通るか、こんなもん!

気を取り直して『Eカード』を始める。
これはカイジ原作にも登場したゲームで、相手の伏せ札を読んで戦う読み合いのゲーム。
本作では条件が五分なので、50%の確率で勝利できる。
さらに、本作にはサポートカードというものがあり、初期に配布される黒服がまれに勝ったときの賞金を1.5倍にしてくる。
ということは、勝率50%のゲームを遊んでいれば金がたまるはずである。
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が、ダメ……!
気づけば資金は底をつき、借金を重ねて地の獄。
帝愛グループは無限に金を貸し出すが、まったくもって運気は上を向かない。
あと、このアプリの単位は"エーン”のはずだが、借金するときは円。世界観よ……!
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ここでやっと異常に気づく。
基本的に本作のゲームの多くは参加費を支払い、なおかつ負けたときには勝ったときに手に入る額と同額を支払うルールになっている。
つまり、50%で勝利するゲームをプレイすると、参加費の分だけ負ける。
基本的に、運営が用意したゲームのリスクとリターンは釣り合わない。
カジノゲームとして遊ぼうとすると、完全に破綻している。

バグだらけのゲームと笑っていたが、果たしてそんな穴だらけのゲームをリリースするだろうか。
あえてそうしていると考えたら、どうだろう。
基本的にプレイヤーが勝てない勝負は原作にもあった。
たとえばパチンコ台、沼。
帝愛グループが商売で損することはあってはならない。だから、沼は絶対攻略不能に設定されていた。
これに対して、カイジたちは事務所に侵入して設定を変更するなどの裏技で攻略するのだ。
つまり、『カイジ闇の黙示録』が正しくカイジのゲーム化であるなら、公式サイトなどからヒントを得て抜け道を見つけるとか、ゲームの穴を突くことができる仕組みになっているのでは……?

そして、そう思い至ったころに公式から通知がなされる。
「現在、ミニゲームの方であるタイミングで操作を行うと大量にエーンが取得できる現象が確認できております(以下略)」
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これは運営からのヒントだ!
通常、ゲームでバグが出ても修正のめどが立ったり、修正できる準備が整うまで公表したりしない。
このゲームはやはり、アプリの穴を突いて攻略するゲームだったのだ。
帝愛グループのカジノを再現するあまり「クソゲー」と見られた運営が焦り、ヒントを出すことにしたに違いない。

「このゲームには意図的な穴がある」
「このゲームは理不尽なのではなく、理不尽に見える中から勝利をつかみ取るゲームだ」

そう気づいたプレイヤーたちは、積極的に穴を探し始める。
そして、まず『地雷ゲーム』において、負けて金が減る寸前に「中断」を押すと金が減らないバグ……じゃなかった、意図的なバグかもしれないので今後バグは「イカサマ」と言いかえる。
負けをキャンセルするイカサマで、金がちょっとずつ増やせることが判明し、気づいた者たちが順位を上げ始める。


見えてきたぜ、勝利の芽がよ……!
このあたりでプレイが楽しくなり、Twitter上でも手のひらを返して「楽しい」と訂正。


希望を抱いたプレイヤーたちは、つぎつぎとイカサマを発見していく。
『ブラックジャック』でHITを連打するとカードが出まくるように、手札が良いときにSTANDを連打するだけで勝てる!
もしくは、同じく『ブラックジャック』で「本来は表示されないCANCELボタンとDEALボタンを表示させると、DEALボタンを押すたびにディーラーがカードを引くので勝手にバーストする」!
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さすがカイジのアプリ、ディーラーを買収してバーストさせるイカサマを実装しているなんてやられたぜ……!
しかし、それで大金を得たのもつかの間。
勝ちすぎると獲得金額が限界を突破してマイナスになり、金が得られないことも判明する。
勝ちすぎると帝愛ににらまれて、ノーカンにされてしまう。怪しまれない程度にイカサマしなければいけないのだ。
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つぎつぎと増え、一緒に帝愛グループを倒そうと盛り上がり、さまざまなイカサマを発見して盛り上がるプレイヤーたち。
その連帯感を見て、掲示板などではAndroidユーザーが「iPhoneじゃないのめちゃ悔しい」、「Androidも来て、iOSと大幅に挙動が違ったらどうしよう」などと語るシーンも。
そう、『カイジ闇の黙示録』も遊べる、iPhoneならね。
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そして、翌日。
攻略されたかと思ったアプリが牙をむき、イカサマを使ったと思われるプレイヤーは皆BANされていた。課金者でも、例外なく。


とはいえ、これはもう予想済のこと。
利用規約には「(5)本サービス又はサーバーに対する妨害と当社が判断した行為」が禁止されている。
つまり、このお知らせに踊らされて安易なイカサマをした者はBANされて当然。
アプリ起動時に規約が表示されないので見逃していた者も多かっただろうが、注意深いプレイヤーならまず規約を読む。
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もともと、このゲームの設定からして「成績上位者を帝愛グループの社員に採用するかもしれない」というもの。
つまり、このゲームの実態は『カイジ闇の黙示録』ではなく、『謎解きゲーム:帝愛グループ社員採用試験』と考えるのが妥当。
うかつな者、見え透いたイカサマをする者はすべて弾かれる。
あんなわかりやすいバグに飛びつくものは、ばれて当然。
あのお知らせ自体が運営のトラップ……罠……!
飛びつくこと自体、まるっきりノーカン、ノーセンス……っ!

ということで、イカサマに頼らずプレイしていた私は勝手にランクが上昇し、カイジの世界8位にまで浮上した。
イカサマを使わずに稼げると言うことは……このゲームには必勝法が存在する。
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▲Gamecastといれようとして、なぜか「GCあ」という名前に。

この先、『カイジ闇の黙示録』の本質にせまる重大なネタバレが含まれています。ゲームを楽しみたい方は読むのをやめてすぐにアプリをDLし、楽しんでからお読みください。

アプリリンク:カイジ闇の黙示録 (App Store 無料)

…。
……。
………。

つまり、このゲームには必勝法が存在する!
それは、最初に破綻していると言った『ハイ&ロー』を限界までプレイすること……!
『ハイ&ロー』でプレイヤーが勝利する確率は約74%なので、カジノなどでは通常掛け金が2倍にならない。
ところが、帝愛のカジノでは勝利するたびに掛け金が2倍になる。
正解するたびに負け金も倍になっていくのでリスクは高いが、限界までダブルアップを繰り返すと期待値(確率的に考えて得られるであろうお金)は掛け金より高くなるのだ。

通常、こういった戦術は潤沢な元手がないと破綻するのだが、先ほど書いたとおり本アプリでは帝愛グループが無限に金を貸してくれる。
よって、勝つまで限界のダブルアップが可能。
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さらに、本アプリでは賭に負けるとレベルが下がって、1度に賭けられる金額がさがるが、『ハイ&ロー』ではバグ……じゃなかった、ログインし直すまでレベルが下がらない特別寛大なルールが設定されている。
『ハイ&ロー』は勝つまで遊べるゲームで、ゲームもそれがサポートされるように作られていた。
むちゃくちゃに見えるなかで、仕様と数学とゲーム規約を把握し、正攻法で攻略する穴を探す謎解き、帝愛グループの採用ゲームだったわけだ。
ブラックジャックなどのベーシックなゲームもまともに作れないのではなく、そういう謎解きゲーム……というのは言い過ぎだが、そのように楽しむことが可能だ。

ともあれ、こうして私はルール違反を犯さず限界までダブルアップして金を稼ぎ、地下を脱出した。
BANもされていない。

私が帝愛グループの社員に採用される日も近いだろう。

プレイ動画:


概要:
カイジをモチーフとしたミニゲーム集。バグが多く、まともではない。しかし、カイジロールプレイをすれば遊べる。

評価:9(なんなん!?!?!?)

おすすめポイント
+ 単に理不尽ゲーだと思って遊び、SNSで競いながら自力攻略するとカイジ感を味わえる

気になるポイント
ひどいバグ
キャラ消失バグがある(課金は推奨しない)

アプリリンク:
カイジ闇の黙示録 (App Store 無料)

開発:NOA.TEC CO., LTD.(日本)
レビュー時バージョン:1.01
課金:ペリカ(ガチャなどで使用、なくても攻略できる)

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中

後書き
冗談めかして書いてきたが、私自身は本作をカイジのゲームとしてすごく楽しめた。
原作はある種のデスゲーム(デスではなく、ペナルティが借金だが)もので、大勢の債務者が無茶なゲームを押しつけられ、それを機転で突破する要素があった。
それと同じように、自分自身がカイジの境遇になりきって、借金をして雑魚部屋にいると考える。
そして、理不尽なアプリを与えられ、クリアできないでいるとなぜか周囲には稼いでいるプレイヤーがいて、つぎつぎとゲームをクリアしていく。
ヤバい、クリアしないと負けて膨大な借金を負わされる……というような状況を、ゲームとTwitterなどの会話を通じて体験できた。
何も情報がないなかで、ポジティブにゲームを遊びきると、このゲームは(恐らく開発者も意図していないが)最高にカイジで、面白くて、やりがいがあった。

同時に思う。
利用している作品がカイジだから「カイジっぽい」とか言われて笑われている面もあるし、恐らく作者の意図を越えて私は楽しめた。
が、多くのファンはがっかりしただろうし、同じコンセプトでしっかり作ることでもっと多くの人が楽しめるものもできたはずだろう、とも思う。
また、私が楽しめたと言っても、それは「正体不明のゲームを攻略する体験がカイジっぽかった」ことが楽しかったのであり、この記事を読むなどして「これはイカサマゲーム」と思って遊べばそこには出来の悪いミニゲームが並んでいるだけの代物だ。
こういった原作付きゲームはもう出ないで欲しいと願う。

2022.01.25、修正
誤字修正と、後書き部分の「また、」~「代物だ」までを追記